第2話 『アバターと職業選択』
ひたすら真っ白なだだっ広い空間。
ログインしたはずの私が目を開けると、そんな景色が映っていた。
私が不思議に思っていると、目の前に突然音もなく、ドイツの民族衣装に似たような服を着た茶髪の女性が現れた。
「ようこそ……【
……グイデ?
もしかして案内って英語で
私がそう考えていると、目の前にポップが表示された。
———————————————————————
【名前を入力してください】
▷______________________
———————————————————————
名前ね、名前っと……。
私は目の前のポップに並べられたキーボードで、名前を打ち込んでいく。
———————————————————————
【名前を入力してください】
▶︎ホシヨ ルミナ_________________
※文字数オーバーです。———————————————————————
あれ。まさかの文字数オーバー。
そう言えば、フルネームって書かれてないし、下の名前だけでいいのかな。
———————————————————————
【名前を入力してください】
▶︎ルミナ_________________
———————————————————————
よし。これでいいかな。
そう言えば……お兄ちゃんが『ナイトロード』でしてるみたいに、本名じゃなくてもいいんだっけ?
むしろ、これって本名の方がマズいのかな……?
そんな事を考えている内に、気付けばグイデさんの案内は次の場面に進んでしまっていた。
「ルミナさんですね。はじめまして、私はグイデと申します」
「あっ……名前。もう仕方ないかぁ。それより、グイデさんの名前はさっきも聞いたから知ってるよッ!」
私は、グイデさんに向けて思わずツッコミを入れてしまった。
プレイヤーを和ませるための演出の一つだったらしいが、初心者の私に演出が分かるはずもない。
「あら、それは失礼いたしました。それでは早速ですけど、アバターの設定になります。こちらで自身の姿を変更してみてください」
グイデさんからそう告げられると、目の前に私と全く同じ姿が映し出される。
もしかして、自由に作り替えれるのかな?
だったら、まずは胸を小さめにしよう。
そう考えて設定しようとするも、胸の大きさを変える項目はなかった。
「なっ……胸の大きさ変えれないの……?!」
「変更不可です。可能なのは、目の大きさや色、そして髪色と髪型に肌の色。あとは装飾品の追加のみになります」
「全然変えれないじゃん!」
せめてゲーム内だけでも、重たくて視線に晒される胸は小さくしたかったのに……。
私の思いは裏切られることとなり、とりあえず髪色は白銀に、眼の色は透き通るように淡いピンクトルマリンにした。髪型はリアルとあまり変えず、胸の辺りまでのセミロングにしておく。
「アバターの設定はこれでよろしかったでしょうか?」
「……えっと。はい!」
「猫耳とか狐耳とか付けれますけど? 本当にアバターの設定はこれでよろしかったでしょうか?」
猫耳に狐耳ッ!!
確かに可愛いのかもしれないけど、容姿がリアルとほぼ変えれない状態でのケモミミ装着は、ただの羞恥プレイにしか思えなかった。
「い、いりませんッ! 大丈夫です!!」
私が返事をすると、目の前に映っていたアバターが近づいてきて自分と重なった。
「同期が完了致しました。鏡でご確認ください」
グイデさんの案内で鏡が出現すると、そこには先ほどまで目の前にあったアバターが、私自身として映し出されていた。
「うんうん、結構いい感じね! 雰囲気もいつもより大人っぽくなったみたいに感じるし」
イメチェンしたような気持ちになり、心地よさを感じた。
「では、最後に職業を選んでください。職業は基本となるものが18種。今回は選択できませんが、他にも隠された職業が存在します」
「そ、そんなにあるの?! 選び方なんて分からないんだけど……」
「基本的に一度選択した職業は変更できません。基本職からシークレット職業への変更のみ一度だけ可能ですので、慎重にお選びください」
グイデさんが話し終えると、またまた目の前にポップが映し出される。
———————————————————————
【基本職一覧】
[前衛盾職]
▶︎【
⇒巨大な盾を両手で装備する圧倒的パーティーの防御の要。高い体力と耐久力を兼ね備える。攻撃は自発的には盾でのみ。反射攻撃も可能。
装備:両手盾
攻撃:★☆☆☆☆☆☆
防御:★★★★★★★
▷【
⇒防御をこなしつつ、それなりの攻撃が可能。聖属性スキルの入手が可能。
装備:片手盾・片手剣
攻撃:★★☆☆☆☆☆
防御:★★★★★★☆
▷【
⇒両手剣を装備。高HPであり、HP消費をすることで、スキルの威力が上がるものも存在する。
装備:両手剣
攻撃:★★★★☆☆☆
防御:★★★★★☆☆
[前衛攻撃職]
▷【
⇒圧倒的な回避力に加え、クリティカルで一撃のダメージ量が多い。敵の背後から攻撃するとダメージが上昇する。
装備:短剣or手裏剣
攻撃:★★★★★★★
防御:★★☆☆☆☆☆
▷【
⇒槍を用いる攻撃職。武器の長さのアドバンテージを活かして、中距離戦も得意。
装備:槍
攻撃:★★★★★★☆
防御:★★★☆☆☆☆
▷【
⇒鍛え抜かれた拳で攻撃を繰り出す。耐久力もそれなりに兼ね備えており、安定的な火力を出すことができる。ただし、常に近接戦闘であるため立ち回りが重要。
装備:バックラー
攻撃:★★★★★★☆
防御:★★★★☆☆☆
[後方攻撃職]
▷【
⇒弓矢を使用し遠距離から安定的に火力を叩き出す。スキルの中には複数の敵や範囲攻撃ができるものもある。
装備:弓矢
攻撃:★★★★★☆☆
防御:★★★☆☆☆☆
▷【
⇒四属性(火・氷・雷・地)のスキルに特化され、属性ダメージを追加で与えることができる点が強み。範囲攻撃にも優れているが、スキル発動までの詠唱時間が唯一存在する。防御力が低いのが難点。片手杖・両手杖・魔導書を装備可能。
装備:片手杖or両手杖or魔導書
攻撃:★★★★★★☆
防御:★★☆☆☆☆☆
▷【
⇒闇属性魔法に特化。一時的にHP全損を回避するスキルを覚えるとされている。トリッキーな魔法が多く、単体攻撃が得意。詠唱を必要としないが、範囲攻撃は覚えない。
装備:大鎌
攻撃:★★★★★☆☆
防御:★★★★☆☆☆
[サポート職業]
▷【
⇒全職唯一の回復スキル特化。パーティーに必ず1人は必要とされるほど重宝される職業。攻撃はあまり得意ではないが、聖属性の攻撃スキルは覚える。
装備:両手杖
攻撃:★★★☆☆☆☆
防御:★★★★☆☆☆
▷【
⇒落とし穴等の罠を大量に使用して、相手を翻弄する。複雑なダンジョンほど強みを発揮する。
装備:曲刀
攻撃:★★★☆☆☆☆
防御:★★★☆☆☆☆
▷【
⇒バフ・デバフに特化した職業。毒や麻痺、火傷や凍結等の状態異常も付与できる。付与効果時間を伸ばしたり、パーティーの補助役として耐久性も確保する必要があり、器用貧乏になりやすい。
装備:魔法剣
攻撃:★★☆☆☆☆☆
防御:★★☆☆☆☆☆
[特殊職業]
▷【
⇒生産及び鍛治系のスキルの取得が可能であり、武器創り出すことが可能。また精錬(装備の強化)も行うことができる。戦闘では主に片手斧を使用する。
装備:両手斧
攻撃:★★★☆☆☆☆
防御:★★★☆☆☆☆
▷【
⇒薬やアイテムの調合を得意とする生産職業。戦闘時には薬品を投げつけて爆発を起こすという奇抜な戦闘スタイル。
装備:フラスコ・試験管
攻撃:★★★☆☆☆☆
防御:★★★☆☆☆☆
▷【
⇒非常に強力な一撃を繰り出す。一撃の火力高さは暗殺者と並ぶものの、スキルの再使用時間が長いのが難点。
装備:刀
攻撃:★★★★★★★
防御:★★★★☆☆☆
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……ど、どうしよう。
全くどれにしたいか決まりそうにないよ?
とりあえず消去法で選んでみるしか無さそうなので、考えてみることにした。
まずは[前衛盾職]の項目。
……怖い。敵の攻撃をひたすら受け続ける役割なんて、怖くてとてもじゃないけど無理そうだよね。
次に[前衛攻撃職]の項目。
……攻撃ってことは戦闘の要だよね? 無理無理、迷惑かけちゃうから絶対無理。
同じ理由から[後方攻撃職]も自動的に却下。
次に[サポート職]の項目。
……サポートなら私でも出来るかも。でも唯一の回復スキルを保有している【
……【
……【
最後に[特殊職]の項目。
……単純に難しそう。うん却下。
以上から、消去法で私は【
私は頭の中でカーソルを【
———————————————————————
【あなたは『
【▶︎YES / NO】
———————————————————————
「——YESで!」
「ルミナさんの職業は【
「あ、ありがとうございます!」
グイデさんの言葉は形式的なものであったが、私は一生懸命考えて選択したことを誉められたと感じ、思わず返事してしまった。
「さてさて、続いてはチュートリアルです。チュートリアルに参加しますか?」
ちゅーとりある?
……そう言えば、お兄ちゃんがチュートリアルはスキップできるからってしてきなよって言ってたよね。
「えっと、チュートリアルはスキップします!」
「え? 本当にスキップされるんですか?」
「はい。後でお兄ちゃんが色々と教えてくれるので」
「そ、そんなこと言わずに……ね? ねえ? チュートリアル参加してくださいよ」
えっと……チュートリアルの勧誘って、こんなにグイグイされるものなの?
グイデさんの表情はそれほどにまで、真剣そのもので急に頭を下げ始める。
「お願いします! もう1時間以上、誰もチュートリアルに参加してくれないんです。かなりの数のプレイヤーの皆さんがログインされてるのに……」
どうやら、全員ゲームを早く始めたくてチュートリアルをスキップしてしまっているみたいだ。
「何だか……可哀想ねグイデさん……」
「で、でしょう? お願いしますルミナさん。どうかチュートリアルに参加してください。特別ボーナスもお付けしますから……この通り!」
いよいよ土下座までしてくるグイデさんの一生懸命さに、私も逆らうことができなかった。それに特別ボーナスなんて言われてしまったら、気になって仕方ない。
「……もう、分かりました。チュートリアルに参加します……」
「わ、わあ! ありがとうございます! ルミさん……いえ、ルミナ様!」
お兄ちゃんとの約束を気にしながら、なんだかんだで特別ボーナスに釣られた私は、グイデさんの勧めるチュートリアルに参加するのであった。
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