第9話【-接触- ep.1】

無事ハムザ地方に着いて依頼が完了した後は、ホーンに戻っていつもの【ちまちました依頼】をこなして日銭を稼ぎつつシャッダ地方でカイルのとこにお邪魔する日々をすごしていた。あの件から2週間の事だった


「━━で。その子を無事に届けてその後は?」


グラスに入った氷水をテーブルに置いた。


「知っての通り、ハムザ地方へ送って依頼完了さ。」


「ハムザへは仕事で向かう事があるんだろ?会ったりはしないのか?」

「会ってどうするんだ?依頼でもないのに」


「お前の事さ、その後は何もありませんでしたーってオチじゃないだろ?何かなかったのか?」


グラスの水を一気に飲んだ後に答える。

「たまたま見かけたのが2日前、コレをもらった。」


「随分と最近だな。コレって一杯の水か?」

「そうだ。」


「金品みたいに残る物かと思ったが意外な結末だったな」

「別に…結末も何も普通だろ。面白いエピソードを期待してたなら残念だったな」


「で、今日は何も買わないのか?」

「売るもんあんのかよ?」


顎の無精髭をなぞりつつ答える

「そうだな、冷えた水ならいくらでも。後はモクの手巻き、情報、そして━━砂だ。」


「砂ぁ?お前以前にはウチには不足してるとかぬかしたろ?隠してたのか」


「違うよ。最近水や食料、雑貨やらを砂と交換しにくる客がいてな、それで多少の在庫に余裕があるわけで決して渋ってた訳じゃ━」


「へぇ、どんなヤツよ?見るからに商売人ってカッコしてそうなイメージだが」


「これは【情報】だから売り物だな。知りたければ出せよ、こっちも商売なんでね」


「いくら?あまり持ち合わせてないぞ」

「そうだな、200BCで打とうか」


ジャックはしぶしぶポケットから2枚の札を出してテーブルに置いた。


「ほら払ったぞ。聞かせてもらおうか」

「それが聞いて驚くなよ。そいつは今話した客で━━━30000BCと握り拳大のエレメントブロックの報酬がついた賞金首…それがその女の子なんだよ。見た目普通の」


「何だってこんな地方に?単独でか?仲間は?」

「仲間はいなかった。もちろん単独だ。容姿は黒のショートヘアーにマント羽織ってどこか寂しげな、そんな感じの子だ。」


「カイル、お前の知っての通り【砂】は一般人からしたら砂製品使わないならレートの良い換金素材くらいの考えだ。そいつは本当に普通の女の子だと思うか?この地方にいきなり現れた賞金首でダブルグレイヴを壊滅させた奴だ。単独でだぞ?」


「あの岩使いの兄弟の組織だろ?それを単独で壊滅させたとなれば…バケモンかあるいは普通じゃない何かを持ってるか、だ。俺みたいな何かを」


カイルは刻んだモクの葉を鉄パイプに詰めて火を付けて吸い込む。そして軽くむせた後に言った

「お前の言う通り、この地方にわざわざ逃げてきたのか知らないが単独で生き残ってるなら少なくとも普通ではないな。だが少なくとも敵対する感じというか空気はしなかった。何というかお前に似たニオイを感じたというか」


ドッカと椅子に座って腕組みしてカイルと目を合わせる。

「つまりエニグマ使い、か?それにしても何故敵対しないと言い切れる?お前直接会ったんだろ」


「それについてはいくつか言いたい事がある。

まず俺はエニグマを使えないから戦うってわけにもいかない、あとは悪人でも善人でも客は客だ。金さえ払えばな。対策って訳じゃないがグラスホッパーから事前にこの情報を買っていたのもデカい。後は…

そして強いて言えば商売人の''カン"ってヤツかな」


ニヤリと笑って天井にケムリを吹いた。


「ちっ、言ってろよ。俺はライの店に戻るぜ。まーた一日半くらいこの地方から出るのにかかる…」


「帰ったら聞いてみたらどうだ?ホーンでもライの店は情報がよく集まる場所なんだろ?」


「どうせグラスホッパーが横流しした情報なら店でその話題が出てるはずだ…言われなくともそうするさ、しかしその子は何者なんだか…。賞金首って事は大都市でやらかしたのか?」

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DESIRE of DIMENTION-mod.x- 漲木つかさ @minaki_REVisioN

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