第7話 【過去の仕事.6】
───大した子だよ。あの子はまだ15だってのに立派な医者だ
イズミは元からこのジャンク屋に居る訳じゃない。カイルの知り合いの医者の娘でホーン地方の北、つまりシャッダ地方とハムザ地方の境界付近に診療所を構えて両親と共に生活していた
しかし三大ジャンクシティは治安の悪い地であるのに変わりはなく薬品類含む物資も不足していたが来る患者を全て受け入れていた。医者自体が少ないため荒くれの中でも標的にしないことが暗黙のルールであった。
母親がソイルの民であった為、娘のイズミは幼いながらもエニグマを扱う素質があり、既に水、金のエニグマの2つが使えた。ハムザの古書店で買ってもらった薬草辞典をくる日もくる日も読んでいた時、それは起こった。
【シャッダ、ハムザ、ホーンの三大派閥による抗争】
5年前のキューブラッシュと呼ばれるカオスホールから大小関係なく大量に降り注ぐ現象が起きた。どんな運命かそれは診療所近くが最も降下量が多く、我先にと各地から回収の為に集い、やがてキューブの奪い合いの末に抗争が起きる。
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まぁ長い話を省けばイズミは抗争に巻き込まれて両親を失った孤児だ。ホーンのマスター・ライの仲介によってカイルに引き取られてからは10歳にして診療所を単独で立ち上げてひっそりと暮らしていた。現在は15歳だけど特に変わらずいつものように本を読み耽り、薬草の栽培をしながら診療所もやってる。…しっかりした子だよまったく。
イズミの趣味は言わずもがな読書だ。カオスホール付近に本があればいくつか持ち帰るし街の露店で叩き売りされていれば買ってここへ持っていく。【買取】という名のプレゼント。 買取した本が商品として並ぶことはない。本棚に入りきらずに棚の横にどっさり積まれている。
─そんな昔の事を思い出している時にガチャリとドアが開いて軽く息をついてイズミが手を布で拭きつつ部屋に入ってきた。
「どうだった?」
「とりあえず処置を終えて今眠ってるわ。でもまた半日後にまた水槽に浸からせないと駄目ね。」
「やはり重症か…感染症とかなけりゃいいがな…」
「シリンダー2本使ってコレよ?飲食どころか睡眠すらまともにとらせてなかったでしょうね」
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