第6話 【過去の仕事.5】
後の処置をイズミに任せて俺は2階の窓の近くへ座ってテーブルに頬杖をついて外を見ていた。
しばらくするとドアが開いてカイルが入ってきた。静かに近くへ来て横の丸椅子に座り、テーブルに温かいコーヒーの入ったカップを置く
「今回は生きててよかったな」
「命あるだけそうかも知れねぇけど良くはねぇよ。」
窓を見たまま答える。
「ああ、だが成れ果てに食われずにすんだじゃないか。前は内臓やら飛び散って原型留めてなかったと聞いたが」
ハァーっとため息をつく
「アイツらにとっちゃさ、気持ちよくなる穴が付いた食料くらいにしか思ってねぇのかなって」
カイルも窓の外の景色を見ながら答える
「どうだろうな、荒くれ側はそうじゃないかもしれないがゼロの成れ果てはもう言葉すら通じなくて理性で動いてるから結局の所、そうかも知れない」
頬を指差した。「これ」
「なんだ、縫い物が趣味か?」
「アイツらの1人から頂いちまったせいでまたキズが増えちまったよ。しかも顔だぜ?」
「女の子だったら可哀想だが男だろ、キズついてナンボだし何より勲章だろっ」
コーヒーを一口してから
「勲章ね…それ、金になんのか?」
「ならんよ。ただ自身が行った功績というか
そんなもんだ」
「功績か。たくさんあったって俺は誰からも何にもされないけどな」
「そんなこたぁないぞ、現にあの子を助けたり何よりこのジャンク屋のガードマンだろ?」
「ガードマンねぇ、ただ俺は不利益な邪魔者を排除して日銭稼ぐだけのチン切り野郎だ。そんなティトロやニクダー地方みたいなカッコいい呼び名は俺には合わんよ」
「まぁ向こうはガードマン自体【ダイヤクリティカル】って組織が仕切ってるから治安はこっちよりいいからな。けどお前がしてるのは間違ってない事なんだぞ。この土地を良くする為に貢献してる立派なやつさ、だからそう卑下するな」
「なんか恥ずかしいな、まぁその…ありがとな。カイル」
顔を見た後、また窓に視線を移す。
「けどな、あの子が受けた被害は一生忘れる事ない出来事なのは変わりないんだ。死んだ方がマシと言われるかもしれない。」
「それもあるが敢えて開き直るとちょっと見方が変わるさ。結局他人視点な言い方で失礼かもしれないがさ、アイツらから受ける最後の被害者が自分の代で止まってよかったって思うかが…って話しよ」
「本当に失礼だな。ならカイル、お前ケツ掘られても同じこと言えるのかよ?」
「毎朝クソする度に痛むのは勘弁だな。…それに話を戻すと万が一があった場合、イズミにはアレがある事くらい…ジャック。お前だって知ってるだろ」
「エニグマ、か。──それにしても凄い子だよ…まだ15歳だってのに立派な医者としてやってるし」
──あの子は別にカイルの娘では無いしそもそもこのジャンク屋の近隣で育った訳じゃ無いんだ。あの子はカイルの知り合いの医者の娘でシャッダとハムザの境界線付近で暮してた。まぁ、訳あってここに移ったわけだが。
「またハムザに寄ることあったらイズミに本をいくつか買ってくるよ」
「はは、そりゃあいい。読書が趣味だからな。きっと喜ぶぞ」
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