第4話 【過去の仕事.3】
「で、でも…」
少女の目が不安げに泳ぐ。
ジャックは落ち着いた声で少女に話しかける。
「状況が状況だから突然助けが来てもそれがすぐに信用出来ないのはわかる、でもこれだけは聞いてくれ。俺は間違いなく君のお父さんからの依頼を受けてここに来た。そしてもう一つ。こんな場所に居たら別のやつらが嗅ぎ付けて来るかもしれない。だから出よう」
「疑ってはないんです、でも…」
「その……お股が痛くて、歩けないんです」
「だったら俺が背負って連れて行く。とにかくここから出て君を安全な場所へ移す。さ、背中へ。」 屈んで背に乗るように促す
少しの間が開いたが背中に温かみを感じたと同時に太もも付近を持ち上げて担いだ。
少しドアを開けて辺りを見渡した後、ナイフの柄から筒を取り出して残量を見る。半分より少し上くらいあった砂が10分の1程まで減って残り僅かだった。
「エニグマで随分食っちまったな…砂。」
「あの…」
「どうした?まだ酷く痛むようなら少し休んでから行こうか?俺が見張って───」
「あそこの棚の箱を。アイツらが何かを仕舞っていたのを私は覚えてます。」
少女をゆっくりと床に座らせて棚の箱を取り、中身を見る。
思わず少女の頭を撫でてしまった。
「上出来だ。覚えててくれてありがとう、助かるよ」
箱に入っていたのは小瓶2つにたっぷり入った星の砂、そして小さな布で包まれた1センチ大に砕かれたキューブである【月の石】5個。
それを確認すると死体が握ったままだった銃を取り上げた。本体のカートリッジを取り出すとまだ砂が3分の1程入っている
フウッと息を吐くと左頬がズキッと傷んだ。
さっき掠めたキズだが結構深い、掠めたというか抉れてる。後数ミリ深ければ頬に風穴が出来ていただろう。
「そこで少し待っててくれ。すぐに済む」
手早くナイフの柄から筒を取り出して瓶から砂を満タンになるまで筒に注ぐ。残りの瓶に栓をして布で包んだ月の石と一緒に雑嚢に突っ込む。そして奪った銃も入れる。
「行けるか?」
問いに少女が頷くのを確認して、再び背中に担いで外に出る─────夜明けだ。
薄暗い空の中に一閃の眩しい日の光が差していた。
しばらくして俺はようやくカイルの店に着いた。
「カイル!!イズミ!!起きてすぐ来てくれ!緊急だ!」
2階のドアが開く音がしてカイルが目を擦りながらノソノソと階段を降りてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます