第1話

──三大ジャンクシティと呼ばれた土地の北西部に位置する場所、シャッダの廃品集積地では今も昔も治安など無い─


少年は大ぶりのナイフを突きつけて薄汚い男を組み伏せていた。

「くそっ、お前も持ってないのか!言葉すら通じねぇんじゃこれ以上は無駄だな、これに懲りたらもう大人しくしてろ」


股を押さえてガクガク震えてる男を見下ろしてその場を去り、いつものジャンク屋へ向かう。


荒れた店の外にある錆びた「この先カオスホールあり」「落下物に注意!」と書かれていた標識があるが経年劣化によって塗装が剥がれてほとんど読めなくなっている。


ソレに対して挨拶代わりと蹴りを入れてその先のジャンク屋のドアを乱暴に開ける。


「おい!お前なぁ…店のドアの開け閉めは丁寧にって読めねぇのか?」


「悪いな読めねぇわ!それにサビまくってて文字の原型ほとんど無いじゃねーか!塗り直すなりしとけよ、カイル」 ドッカと椅子に腰掛ける。


「何だよ久しぶりだってのに今日はやけに機嫌悪いな」コップに水を入れて差し出す


「【砂】を持ってるガラの悪い奴がいるって情報拾って狩りに行ったとこだ、ハゲたジジイみてぇなのが1人いただけで話と全く違うぜ」


「で、砂は?」

「なかったよ。とんだガセ掴んじまったよ…掴んだのはそいつのしょぼいナニだけだ。」

雑嚢からケースに入れていたタバコを取り出し、火をつけて紫煙を飛ばした


「そうか、災難だったな。で、他には?」


「…これかな。」

黙って薄汚れた包みに入った【半ナマの燻製に似た物】をテーブルに置いた


「あのなぁ…。たしかにウチはコレも買取対象だ。物好きなやつが欲しがるからな。けどシャクルさんとこの方がうちより高く買い取ってくれるはずだぜ?なぜコレを?」


「まぁ顔見せに来たついでさ。で、イズミちゃんは?」


「あぁ、多分奥で何かゴソゴソやってる。呼ぶかい?」

「いや。いいよ、あの子によろしくな」

後ろ向きで手を振りながらドアを開けて出ようとした時─


「マスター・ライによろしく言っとけ、ウチは2人とも元気だと。あと…」


「…?」


「【星の砂】、見つかるといいな、俺ンところはもう在庫が切れそうだ」


「まぁあれは地上にも地下にも産出されないからカオスホールの周辺漁るかゼロを狩るかしないとどうしようもないぜ」


「最近はあの黒雲もロクなの落とさないからな。【天のゴミ捨て場】とはよく言ったもんだ」


ジャンク屋の店主に別れを告げて荒廃した街を後にする


「さて、酒場に帰るか…。とはいえこっから酒場のあるホーンまで2日はかかるな」


雑嚢を背負い直して自身が帰る土地へと歩みを進めた。

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