第8話嫌な予感
「ねぇ…もう諦めたから、そろそろ引きずるのやめてくれない?」
「本当に諦めたのよね?」
「本当だって…」
店の前からしばらく引きずられていた凪はセレーネの手が離れたことを確認し立ち上がる。
「それで…目的の場所はまだなの?」
「うるさいわね…ここよ」
そう言ったセレーネは指をさした。さした指の先にはものすごく大きい建物が1件あった。周りのも建物はあるが、群を抜いてこの建物だけが大きかった。外装は海外の建築物にそっくりで建物の周りにはガーデニングでもしてるんじゃないかと思うほどの花が咲いている。
「なんだ…ここは?」
目の前のメルヘン空間にさすがの凪も戸惑いをあらわにする。
「ある人の趣味なのよ。我慢して頂戴」
「趣味ね…。それはいいけど、なんで俺をこんなところに連れてきたの?」
凪は自分がどうしてこんなところに連れてこられているか理解ができてなかった。
「なんでって…。ここがあなたの住む家だからよ」
「は…?嫌なんだけど…こんなとこ」
「ちょっと!どこいこうとしてるのよ。外装はこんな感じだけど、中は普通だから…」
セレーネは後ずさりして家から遠ざかろうとしている凪の腕を引っ張り、強引に家の中へと入れようとする。一方、何か嫌な予感がする凪は全力で抗う。
「ち、ちょっと!さっきより力強いじゃない!」
「あんなメルヘンワールドを作るような奴にできれば会いたくない!」
凪が嫌がることは1つだけ。この家の中にいるであろうあからさまやばそうな人物に会いたくないだけだった。そのためだけにセレーネに全力で抵抗する凪。しかし、さっき本気を出していなかったのは凪だけではなく、セレーネの力もさっきより強くなり、凪はどんどん家の方へと引きずり込まれる。それでも今回ばかりはなんとしても諦めたくない凪、家の扉の前の段差に指をかけ必死に抵抗する。
どちらも譲らない戦いを繰り広げている中、家の扉が開く音がした。
凪は後ろを向いていて見えないが、生き物の気配が増えた気がしていた。
「セレーネ様、どうかなされましたか?」
「あ!いいタイミングで…ちょっと、これを中に入れるの手伝って」
「かしこまりました」
セレーネの謎の協力者によって引っ張る力が強くなり、セレーネの力に抗うだけで精一杯だった凪はあえなく敗北し家の中へと引きずり込まれた。
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