第7話村

 「あれが…村?」


 凪はセレーネから村と聞いていたため、てっきりゲームとかでよく出てくるものだと思っていたが、凪の視界に映っている光景は到底村とは思えないほどに規模が大きく、まるで一つの都市のようだった。


 「一応村よ。まぁあなたの世界だったら1つの都市ぐらいはあると思うけど」


 セレーネは歩みを進めていく。村に近づいていくにつれてこの世界の住民が多くなっていく。そんな住民達の横を通ると、凪の予想通り、ガン見もガン見。さっきの少女とは少し違うようにも思えるが、めんどくさいことに変わりはない凪はため息をつく。

 多方面からの視線を無視し続け、凪とセレーネは村の中を進んでいく。

 村の中には店が並んでいて、見たことのない食べ物や道具があった。


 「もう少しで目的地よ。…あれ?」


 セレーネが振り返ると、さっきまでいたはずの凪の姿がそこにはなかった。辺りを見渡してみてもやはり姿はない。セレーネは仕方なく来た道を少し戻る。

 セレーネはなんとなく凪がどこにいるか見当がついていて、そこに向かって歩き出す。


 「はぁ~…。やっぱりここにいたのね」


 そう言ったセレーネの前には、こちらの世界でしか存在しないものがたくさん置いてある店の前で凪が立っていた。


 「そんなもの後で見れるんだから、今は早く来てくれない?」

 「……もうちょっと待って」

 「……」


 こういう時の凪の「ちょっと待って」はあてにならないことを知っているセレーネ、強引に凪の腕を引っ張る。

 「ちょ、ちょっと…」と言いながら引っ張られている腕にあらがう凪。その姿はまるでおもちゃを買ってもらえない子供のようだった。そんな全体重をかけて抵抗している凪をセレーネは軽く目的地まで引っ張っていく。

 セレーネの力にかなわないと思った凪、抵抗することを諦め、目的地に着くまでセレーネに引っ張られるがままになった。

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