第6話人間への印象(2)

 「ねぇ…。さっきの何なの?」


 凪は先ほどの少女たちの態度に関して少し疑問に思ったことを隣を歩いていたセレーネに尋ねる。


 「さっきのって?」

 「俺初対面の子にあんなに睨まれたの初めてなんだけど…」


 凪は別に睨まれていることに慣れていないわけではない。むしろ、クラスメイトにはよく睨まれていたほうだ。そんな凪でも、さっきの少女の目は印象に残っていた。


 「ああ、あれは仕方ないのよ」

 「仕方ない?」


 そう言ったセレーネは空を見るように上を向き、自分の記憶を遡るかのように話し始める。


 「昔、ある女神が人間は野蛮で危険だという噂を広めたの。もちろん、ただの噂だったんだけど…妙に信憑性が高くて、今でもその噂を信じてる者がいっぱいいるわ」

 「その女神はどうしたの?」

 「今は軽率に噂を広めてしまったことを反省して、村とは少し離れたところで過ごしているわ」

 「ふ~ん…」

 「これが、この世界の今の人間への印象よ。正直、私もくだらない噂に関してはどうにかしたいと思っているわ」


 セレーネは意気込むようにそう言うと、止めていた足を進め始めた。一方、この世界の住人の人間への認識が分かったのはよかった凪だったが、住民と出くわすたび、さっきの少女のように面倒なことになると考えるだけで憂鬱な気分になった。


 「ほら、なに止まってるの?村はもうすぐよ」

 「……」


 凪は少し重く感じる足を上げ進みだす。

 振り返って凪を待っているセレーネの後ろには村の影が薄く見えていた。

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