第9話ロティ
「はぁはぁ…ここまで来るのにいったいどれだけ時間がかかっているのよ」
息を切らしながらそう言うセレーネが凪の服をつかみ立ち上げる。一方、無理やり引きずり込まれた凪、セレーネの協力者にずっと背を向けていた。それに気づいた謎の協力者は何とか凪の視界に入ろうと動く。しかし意地でも顔を合わせたくない凪、ついには下を向くどころか、床に顔をつけ、視界いっぱいを床にする。その光景を静かに見ていたセレーネ、いつも通りすぎる凪に若干呆れながらもこのままでは話が進まないこともあり、凪の方へと近づく。
「いい加減諦めなさい。あなたにはどのみちここに住んでもらうんだから、今のうちにあいさつしなさい」
そう言ったセレーネが凪の頭をつかみ、強引に前を向かせる。まだ出会って数時間しかたっていないが、セレーネはもう完全に凪の扱いに慣れていた。
無理やり前を向かせられた凪の視界にさっきまで声しか聞こえてなかった人物が映る。
「彼女はこの家のメイドのロティよ」
「ロティと申します。凪様が安心する暮らしをサポートできるよう頑張らせていただきますのでよろしくお願いいたします」
そう言ったロティは凪に頭を下げて礼をする。礼をすると際立って目を引かれるきれいな銀髪が見える。
凪は思っていた性格と全然違っていて戸惑う。あんなメルヘンワールドを趣味とする人物だから、凪はてっきり頭の悪そうなフワフワしてそうな奴かと思っていた。しかし、凪の今のロティへの第一印象はめちゃくちゃ仕事できそうなクールな性格だった。
「ねぇ…ほかにもこの家に住んでる人っているの?」
ロティのイメージが違いすぎて他にこの家に住んでいる人がいるのではないかと疑う凪。
「いいえ。彼女だけよ」
「……」
セレーネが言うのだから本当なのだろう。しかし、どうしても信じれない凪は自分の目で見るまでは納得しないことにした。
「あっ!もうこんな時間。ロティ、あとは予定通り頼むわ」
「かしこまりました」
「あなたも、あまりロティを困らせないように!」
そう言ったセレーネは足早に家を飛び出し、家には凪とロティの二人きりになった。
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