第4話謎の少女

 「あの!もしかしてセレーネ様ですか?」


 白をメインとした制服のようなものを着た少女3人組が声を掛ける。


 「はい、私に何か?」


 呼ばれたセレーネはもちろん、一応凪も振り返る。別に興味があったわけではなく、声がした方をなんとなく向いてしまう。ただの人間としての条件反射だ。

 振り返ったセレーネを見て本人だということが分かった3人は心を打たれたかのように胸に手を当て沈みこむ。まるで、どこかのアイドルのファンみたいだ。それを見たセレーネは心配するどころかため息をついた。

 凪は今まで握られていた手を放し、自分の口をセレーネの耳元まで近づけ、できるだけ3人に聞こえないくらいの音量で話す。


 「なんか倒れてるけど大丈夫なの…?」

 「はぁ~…。いつものことだから大丈夫よ」

 「ふ~ん…そうなんだ」


 2人の会話が終わると、2度目のため息をつきながら倒れて呼吸が荒くなっている3人の方へと近づいていく。


 「私に何か用かしら?」


 セレーネがそう言うと、3人は意識が戻ったのか、飛んで起き上がり、急いで身だしなみを整える。自分たちで汚した制服をきれいにし、いざ、セレーネに真剣な眼差しを向ける。表情には少し緊張があり、まるで卒業証書授与される生徒みたいだった。

 

 「あの…私達はセレーネ様のファンです!」

 「ふ、ファン…ですか?」

 「はい!14歳ながら中等部を飛び級され高等部でも首席でご活躍されてる姿を見ていつも応援しています!」

 「あ、ありがとう…」


 褒めに褒めまくられたセレーネの顔は少し赤く恥ずかしがっているように見える。一方、少し離れたところからそんなセレーネを見ている凪は「セレーネって、そんなにすごかったのか」なんて、微塵も思うはずもなく、頭の中は「風が気持ちいいな」や「暖かいな」といったピクニックに来てる人の感想のようなことしか思っていなかった。しかし、またセレーネと3人の会話が聞こえ、一応意識だけはそちらに集中させる。


 「あの…セレーネ様!もしよければ握手してもらってもよろしいですか?」

 「ええ。かまいませんよ」


 セレーネは慣れてるかのように3人に握手をしていく。握手されている少女達の目は輝いていた。

握手を済ませ凪の方に帰ってくるセレーネはどこか浮かない顔をしていた。これが、セレーネにとっては日常茶飯事に起こることなのだろう。

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