第54話 仲直り

第54話


またもや、沈黙がこの場を支配する。


まぁ、この二人も色々あった。


おそらく、今のお義父さんは問題を自覚しているのだろう。


だからこそ、どう言っていいのか解らないのだろう。


数分間その状態を続けている中、遥の方から話し始める。


「お父さん…」

「…何だい、遥?」

「…私、知らなかった。お父さんにそんな過去があったなんて…」

「…まぁ、言ってなかったからね。むしろ、ペラペラと話していい物でもないし…」


そう告げると、また沈黙がその場を支配する。


だが、遥は複雑そうな顔をして、何かを考えている様だった。


そして…


「正直、不快だった…」

「遥…」

「お父さんがあのクソ野郎を押し付けてくるから、本当に不快だった。お父さんの事も嫌いになっていった。」

「そう…だったんだね……」


かなり、申し訳なさそうな顔をするお義父さん。


まぁ、当然だろう。


自らの行いで、ずっと遥の事を傷付けてきたのだから。


「でも、今日初めてお父さんの気持ちを知った。今まで知ろうともしなかった物を初めて…」


お義父さんは遥を見ていなかった。


だが、それは遥も同じだったのだろう。


押し付ける事自体はお義父さんの罪だが、それを知ろうともしなかったのは彼女の選択なのだ。


『知らないという罪と、知り過ぎる罠』、本当にままならない物だ。


「私は…まだお父さんを許せないし、許したくない。でも、気持ちを知ってしまったから、もうどうしようもない。」

「遥…俺は……俺は………」


そして、お義父さんは勢いよく…


「すまなかった、遥!」

「お父さん…」

「お前の為だと思って、お前に嫌な事を、俺の後悔を押し付けてしまった!本当にすまない!」


土下座をし、誠心誠意謝った。


起きた事は消せないし、やってしまった事は無かった事に出来やしない。


それでも、お義父さんは謝る道を選んだ。


遥の親として在る為に、遥の家族で在り続ける為に。


「さっきも言ったけど私はまだお父さんの事を許せない。でも…」

「遥…」

「これからは私の事、ちゃんと見てくれる、お父さん?」

「…ああ、勿論だ。」


…これなら、もうこの親子は大丈夫だろう。


後は、俺が頑張る番だな…


「あっ、お父さん!序に私と刃の事も認めてくれる?ねっ、お願い♪」

「それはダメだ。」

「ええっ、やっぱり、お父さんなんて嫌い!」

「ちょ、ま、待ってくれよ、遥…」


うーん、やっぱりまだ難しいかも…


まぁ、大丈夫そうで何よりだ。


続く

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