第53話 刃の宣言

第53話


お義父さんの話を聞いた時、少しだけ聞くんじゃなかったと後悔した。


想像以上に重く、嫌な話だった。


拗らせるの納得だし、ぶっちゃっけ俺の父さんが嫌いになりそうだった。


「そう言えば、雄介の奴は今どうしてるんだ?幸せに暮らしているのか?」

「どうしてそれを?」

「少し気になっただけだ。」

「…死んでますよ。俺が3歳の頃に病気で。」

「そうか…」


沈黙がこの場を支配する。


自分から啖呵を切っておいて、何だこのザマは…


でも…


「アンタは俺が父さんの息子だから、遥と結ばれるのが許せないのか?」

「正直に言うと…そうだね。鞘ちゃんの子供だと考えるなら、トラウマが蘇るだけだから別に良い。所詮は過去の傷だからね。」

「思いっきり不満そうな顔してますけど…」

「トラウマはトラウマだからね。未だにシコリが消えてないとは言えないよ。それでも今の俺には結や遥達が居るからね…」


確かに今でもこの人は過去に囚われているのだろう。


でも、必死に乗り越えようとしている。


「解りました、お義父さん…」

「そうかい…」

「でも、諦めません。」

「…だろうね。」

「はい。絶対に認めさせてみせる。貴方の怒りも、過去の痛みも、遥への想いも全て受け止めて、俺は貴方に俺を遥のパートナーだと認めさせてみせます!」


俺はそう告げる。


絶対に諦めないし、それだけは譲れない。


お義父さんにそんな過去があったとしても…


「ふっ…」

「どうかしました?」

「いや、似てるね…」

「えっ?」

「君のそういう所、鞘ちゃんの良い所と雄介の奴の悪い所そっくりだ。」


と、初めて笑みを浮かべる。


何か、笑う所があったのだろうか?


それとも…


「良いよ、。認めさせれるのなら、俺を認めさせてみろ。精々、その無様に足掻く様を見せて貰うよ。」

「…はい!」


これはかなり手強そうだ。


いや、実際に手強いだろう。


だが、絶対に乗り越えてみせるさ。


「剣くん…」

「鞘ちゃん…」


再び、母さんと向き合うお義父さん。


「えっと、あの、何だ…」

「うん…」

「今日は来てくれてありがとう。」

「えっ?」

「俺は君を恨んじゃいない。悪いのは雄介だけだし、君が来なきゃ吐き出す事すらしなかったから。」

「うぅ…ごめんなさい!本当にごめんなさい!」

「えっ、ちょ、な、泣かないで!結、ちょっと助けて、結!」


はは、泣かせてやんの。


まぁ、後は…


「取り込み中、申し訳ないんですが…」

「ん?何だい、刃くん?」

「まず、ちゃんと話し合ってくださいね?」


と、俺はとある方を指差す。


お義父さんはその方を向き…


「…うん、解ってるよ。」


其処には、ジッとお義父さんを見つめる遥が居た。


続く

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