第50話 因縁の再会
第50話
「……………」
「……………」
沈黙が、沈黙がキツい。
いや、こうなる事は少し予測していたよ。
でも、想像以上に重いんだよ!
はぁ、早く解放されたい。
でも、それはダメなのも解ってる。
「久しぶりね…」
「ああ、そうだね…」
「まさか、貴方の娘さんが私の刃の彼女とは…」
「俺も驚いたよ…、君とアイツの息子を一目見る事になるとはね…」
お互いに目を逸らしながら、会話を続け始める。
だが、その度に空気が重くなる。
キツいなぁ、これ…
「…アナタと雄介に起きた事は知ってる。」
「なっ…」
「聞いたのよ、私…」
起きた事?
それは一体…
「まず、先に言いたい事があるわ…」
「ああ…」
「あの時は、ごめんなさい…」
あの時…
まさか、母さんが謝るとは…
「もう良い…もう良いんだよ……」
「なら、何でそんな苦しそうな顔をしてるの?何でそんな態度を、怒りを私の刃に向けるの?」
「やめろ…」
母さんはそうまくし立て続ける。
そして…
「それは、ずっと貴方があの時に囚われ続けてるからじゃないの?」
「やめてくれ!」
バンッと机を叩き、立ち上がるお義父さん。
その剣幕は怒りに満ちていた。
「もう終わった事だ。もう無かった事は出来ない事なんだよ!それなのに、何でお前らは、俺にあの時の思いを思い出させようとするんだ!また、俺を苦しませようとするつもりなのか!それだけ、俺を苦しませたいのか!」
と、お義父さんは叫ぶ。
その叫びは、泣いている様にも聞こえた。
信じていた物が崩れ去り、絶望している時の嘆き。
「知っていたから何だと言うんだ!もう遅いんだよ!俺は君にフラレた。それだけが真実だろ!今更蒸し返してなんになるんだ!」
そして、少しだけ哀れに映った。
この人はまだ、過去に囚われている。
そして、今も苦しみ続けている。
「だったら…」
「ああ?」
「だったら、何でアンタはあの柊に拘ったんだ?」
「それは…」
「何で俺に怒りを、憎しみをぶつけてくるんだ!」
「……………」
その言葉に、お義父さんは黙り込んでしまう。
でも、俺は止めない。
「俺にはアンタの気持ちは解らない。」
「だろうね…」
「でも、似た様な経験はある…」
「くっ…」
「それをアンタの娘が、俺を救ってくれたんだ!」
遥が居なければ、俺はアンタみたいになってたかもしれない。
だからこそ、俺は…
「さぁ、話してください。全てをぶちまけてください。そうしなきゃ、過去は乗り越えられない。」
今度は俺の番なのだ。
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