第41話 目覚め

第41話


懐かしい物を見た。


確か、あれは遥と初めて出会った時か?


(なら、これは夢か…)


そんな事を考えていると、次々と場面が変わっていく。


今でこそ理由が解ったが、当時は謎だった昼休みの修羅場の時…


莉菜に遥の存在を言い当てられた時…


変装して映画デートを楽しんだ時…


カラオケデートから帰ってくると、何故か鉋が待ち構えていた時…


そして、遥の事を打ち明けたら、凄い修羅場になった時…


その後、色々あって完全復活した鉋達に宣戦布告してきた時…


次の日、遥と鉋に挟まれながら、柊に忠告した時…


初めて遥の家に行き、お義母さんや義弟くんと出会った時…


そして、柊に刺された時…


(成る程、これが走馬灯という奴か…)


…少しだけ、悲しくなった。


まだ、遥と一緒に居たかった…


実はアレな幼馴染だったが、鉋とまだ楽しんで居たかった…


こんな事で死んだら、親友である莉菜合わせる顔がない…


瑠璃とか、落ち込み過ぎて引きこもりそうだ…


(ふざけるな…)


そんな結末、認めてたまるものか!


俺は諦めが悪いんだよ!


絶対に生きてやる!


(あれは…)


目の前に光が見える。


何故か、その先に手を伸ばす。


そして…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うっ…」


急に、目の前が明るくなる。


すると、其処には…


「知らない天井だ…」


真っ白な天井が広がっていた。


えっ、マジで此処はどこ?


もしかして、天国ってこんな感じなの!?


「うぅ、刃…」

「この声、遥!」


横を向こうとすると、腹が滅茶苦茶痛くなる。


それでも、横を向くと…


「遥…」


椅子に座り、寝ている遥が居た。


目を見ると、少し腫れていて涙の跡があった。


はぁ、どうやらかなり心配を掛けていたみたいだ。


早く安心させないとな…


「おい、遥。起きるんだ、遥。」

「えっ、何、刃?…刃!?」


最初は寝ぼけていたが、直ぐに目を見開いて此方を見てくる。


そして、涙を溢れさせながら…


「刃ぁぁ!良かったぁ!」

「おいおい、泣くなって…って、首!首が…」


首に向かって抱きついてきた。


頭に柔らかい物が当たって幸せだが、どんどん抱きつく力が強くなってくる。


ヤバい、首が!首が締められて、息が出来な…


「あっ、ごめん!」

「ゲホッゲホッ、だ、大丈夫。おはよう、遥…」

「もう夕方だよ、刃…」


少しずつ、少しずつお互いの顔が近付いていく。


そして、零距離になりそうになった瞬間…


「刃君、大丈夫?」

「先輩、見舞いに来ましたよ!」

「お兄ちゃん、起きてる?」


鉋達が入ってきて、俺達勢いよく離れる。


タイミング悪過ぎるだろ…


「あっ、刃君起きてるじゃん!良かったぁ!」

「あれ?何でお兄ちゃんと遥さんは顔を真っ赤にしてるの?」

「ははぁ、成程ね…」


相変わらず、莉奈は勘が良い。


黙っててくれよ、頼むから…


続く

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