第40話 動揺と叱責

第40話


その後、私は急いで、言われた場所へと向かった。


すると、そこには…


「刃!?」


本当に刃が刺されていた。


刺された部分から少しずつ血を流し、顔を青くして倒れていた。


「早く抜かなきゃ!」

「ダメよ、遥ちゃん!」

「そうです、抜いたら余計に酷くなりますよ、遥さん!」


慌て刃物を抜こうとすると、それを鉋ちゃんと謎女に止められる。


ダメだ、私…


冷静じゃなくなってる…


「はぁはぁ、ありがとう…」

「別に気にしなくても良いわよ。刃君を守っただけだし…」

「以下同文です…」


彼女達が抑えてくれたお陰で、何とか頭を冷やせた。


まだ冷静になれた訳じゃないけど、少しはちゃんと考えられる筈だ。


「ふぅ、刃は?」

「病院と警察は呼んだわ。今は露払い兼それらを待ってるって感じね。」


…そうなのね、良かった。


それによく見たら、人が集まりつつあるから、それも助かるわ…


後は刃が無事に生き残るだけ…


「あれ?義妹ちゃんは?貴方達が居るなら、あの娘も…」

「ああ、それなら…」


指を刺された方を見ると、体育座りでうずくまっている。


あの娘には刺激が強すぎたみたい…


…まぁ、私も人の事は言えないか。


私だって、涙を堪えて立っているのがやっとだし…


それに…


「柊…」


私はこの惨状の元凶を睨む。


本当に、本当に私を傷付け、邪魔をしてくる事しか出来ない男。


…ああ、ダメだ。


コイツを見ていると…


「止めなさい。」

「止めないでよ、コイツは此処で…」

「それをしたら、刃君にも迷惑がかかるわよ。」


そうだった…


それなのに、私はコイツにトドメを刺そうとしてた…


もう、ダメだ…


「気持ちは解るけどね。此所に居る全員が膓煮えくりかえってるし…」

「ありがとう、また止めてくれて…」

「さっきも言ったでしょ。刃君の為よ…」


止められてばかりだなぁ、私…


本当にダメだ、私…


今一番助けを必要としているのは刃なのに、助けを求めてしまう。


助けて、刃…


「遥ちゃん!」

「きゃっ!」


いきなり、鉋ちゃんにを肩掴まれる。


い、一体、何?


「しゃんとしなさい!」

「遥ちゃん…」

「今の刃君を支えるのは、彼女である貴方でしょ!それなのに、貴方が折れかけてどうするのよ!」

「…鉋ちゃん!」


そう言われて、私ははっとする。


そうだった、そうじゃなきゃダメなんだ。


「ありがとう、もう大丈夫。」

「ふっ、そうじゃなきゃ、刃君を預けたりなんてしないもの。」

「返さないからね?」

「なら、最後まで抗うわ。」


鉋ちゃんのお陰で、少し場が和んだ気がする。


ごめんね、刃。


私がちゃんと支えるから…


続く

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