第32話 敗北者は認めない

第32話 


柊side


不快だ、本当に不快だ。


先程から同じ言葉が木霊する…


「俺の彼女に手を出すな!」


ーーーーーーふざけるな!


ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!


何でお前なんかがそんな言葉を使ってるんだよ!


遥は、遥は俺の幼馴染で、俺の彼女なんだぞ!


「間違ってる!あんな奴よりも俺の方が!」


そうだ、これは何かの間違いだ!


神様が俺達に課した試練なんだ!


そうでなければ、遥があんなゴミになびく訳がないんだ!


「そうか、全部…」


…全部、あの高橋が悪いんだ。


癌はアイツ自身だったんだ。


なら、排除しなきゃな…


「少し、ほんの少しだけ待っててくれよ、遥…」


俺が、俺だけがあの異物を退治できる。


そして、全ては元通り。


俺が遥の救世主になるんだ…


そして、俺達は…


「愛してるぜ、遥…」


…二人で幸せになるんだ。


そして、全てを俺の元へ取り戻して奴にこう告げてやるんだ!


「俺の女に手を出すな!」


ってね…


これ程、傑作な事はない!


高橋め、いい気になってられるのも今の内だぞ!


俺から遥を寝取ったつもりだろうが、そんな幻想は直ぐにぶち壊される!


精々、今を楽しむんだな!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


刃side


「何だ、アイツ…」


先程から柊が俺達を見てニヤニヤしている。


直前まで、俯いてブツブツ何かを呟いていたのに…


「気味が悪いな…」

「本当ね、蕁麻疹が出そう…」


しかし、嫌な予感がする…


少し警戒レベルを上げた方が良いのかもしれない。


「大丈夫、刃?」

「ああ、大丈夫。まぁ、アイツが遥に危害を加えるようなら…」


俺も容赦はしない。


…徹底的に潰してやる。


「ありがとうね。でも、無茶はしないでね。」

「…解ってる。気を付けるよ。」

「何よ、その間は…」

「気にするなって…」


アイツが何を考えているのかはよく解らない。


まぁ、解りたくもないが…


「まぁ、俺も覚悟は決めてあるから…」


遥も覚悟を決めたのだ。


なら、俺も覚悟を決めなきゃいけないだろう?


「それに…」


アイツが懲りずに何かを決めなきゃしてくる様なら…


俺は何度も、何度でも俺は言ってやる。


「俺の彼女に手を出すな!」


ってね…


まぁ、そんな機会がない事を祈ってるがな…


でも、上手くいかないのが世の常だ。


さて、どうなる事やら…


続く

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