五章 過去の因縁に決着を

第30話 公開

第30話


「ふぅ、此処で良いかな?」


今日、俺は普段より早く家を出ていた。


その事に鉋は少し不満そうだったが、許してくれた。


まぁ、その後の笑みが少し怖かったが…


「お待たせ、刃!」

「いや、今来た所だから。」


と、カップルに有りがちなやり取りをしてみる。


普段ならやらないやり取りに、思わずお互いを見詰め合って笑ってしまった。


「しかし、普段からこうやれるとはな。」

「確かに。まぁ、私はもう逃げるつもりはないのよ。」


「あの娘達やあのクズも牽制できるしね。」と、遥は微笑む。


うーん、牽制できるかな?


幼馴染と妹と親友の事は一部を除けばよく知っている。


アイツ等の執念は凄まじい。


…腹にジャンプでも仕込んどこうかな?


「それに、意外と楽しいね。」

「…だな。」

「あっ、照れたw」

「照れてないし、草を生やすな。」


今までは隠れてか、土日しかできなかったもんな、こういうやり取りは…


そんな事を思いながら、俺達は手を繋いで歩く。


これから起こるであろう面倒事への覚悟を決めながら…


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俺達がべったりとくっついて教室に入ると、周りは少しザワザワしていた。


まぁ、これは想定内。


見た目だけは良い柊にアプローチされながら、冷たく返していた遥が他の男子と仲良くしているからだ。


柊は…まだ居ないな。


「あっ、刃君!おはよう!抱き着いてもいい?」

「いや、ダメだよ!?」

「駄目に決まってるじゃない!」

「ケチ!もう勝手に抱きつく!」


柊を警戒していると、鉋が変な事を言いながら近付いていくる。


コイツ、隠さなくなりやがった!


抱きつこうとする鉋と、それを阻止しようとする遥を見て、そう思った。


「あ、あの…」

「ん?何だ?」


確か、この子は…


思い出した、確か前に柊の野郎に告白してたクラスメイトだ。


名前?そんな物、知らない。


「もしかして、高橋くんと南原さんって付き合ってるんですか?」

「えっ、そうだが?」

「え…………」


と、一瞬だけ周りが沈黙に支配される。


そして、次々と…


「えっ、何!?いつの間に!?」

「でも、確か南原さんは柊くんに…」

「というか、高橋の奴は神崎と付き合ってたんじゃ…」


あれ?俺、そんなの、知らない。


まさか…


「鉋?」

「そう言えば、そんな噂あったね。全く違うのに、何でそんな噂が立ってたんだろう?」

「そのムカつくドや顔をやめなさい!どうせ、その態度でわざと勘違いさせてたんでしょ?」

「鉋、意味、よく解りません。」

「ウソつけ!」


と、謎の喧嘩をしていた。


まぁ、俺からもフォローしておくか。


「アイツとは唯の幼馴染だ。色々とあったけどな。」


続く

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