第28話 復活の鉋
第28話
堂々と宣言する鉋。
良かった、元に戻った。
でも、雰囲気が何処が可笑しい様な…
「まず、刃君!」
「は、はい!」
「よく聞いてね!」
「はい、よく聞きます!」
そう答えると、鉋は俺の手を握ってくる。
そして、真剣な目で俺を真っ直ぐ見据える。
ああ、何だ。そういう事か…
なら、俺も覚悟を決めなきゃな。
「高橋 刃君。私と結婚して下さい。」
「…ごめんなさい。昔の俺なら兎も角として、今の俺には遥が居るから。」
「うん、解ってる…」
彼女は泣いていた。
ああ、キツイな…
覚悟をしていても、本当にダメだ…
後は…
「なぁ、鉋?」
「…何かな、刃君?」
「昔、聞いちまったんだ…」
少しだけ昔話をする。
あの決定的な瞬間…
今の俺達に辿り着いたあの言葉の真意を確かめる為に。
今更だ、本当に今更な話だ。
でも、心の何処かで納得したかった。
俺はちゃんとケリを着けたかったのだ。
「そうだったんだね。本当にバカみたい、私…」
「鉋…」
「私、ずっと刃君が約束を守ってくれると思ってた。」
そして、彼女は少しずつ話し始めた。
あの時の真相を…
「ずっと、ずっと心待ちにしてた。幼馴染だからこそ、生まれたこの関係を大事にしたかった。」
懐かしむ様に、それでいて少し悲しそうに彼女は話す。
それ程までに…
「だから、私は刃君と付き合うつもりは全くなかったの。そうしたら、幼馴染という関係が崩れる気がして。」
「だから、あの時…」
「うん、あの時に話を振られた私はそう答えたの。」
ああ、こんなにも単純な話だ。
唯のすれ違いでこんなにも拗れ、もう二度と戻る事のない場所へと来てしまうのか。
だが、過去は覆らない。
それに俺も戻るつもりは全く無い。
今の俺には、遥が居てくれるのだから。
「納得したよ、ありがとう鉋。」
「ううん、此方も変な事しちゃってごめんね。」
少し気不味いが、これで俺達は元の幼馴染に戻るだろう。
多分、これで良いのだ。
「遥ちゃん…」
「何?」
「刃君の事、宜しく頼むね。」
「言われなくても…」
そして、どうやら鉋と遥は仲良くなれそうだ。
本当に良かった。めでたし、めでたし。
「なんてね♪はい、刃君♪」
と、上手く行かないのが人生である。
不意に鉋が俺に近付き、俺の唇を奪ってくる。
勿論、遥の目の前でだ。
「はぁ!?」
「
「そう簡単に譲る訳がないじゃない!私は諦めないわよ、遥ちゃん!これは宣戦布告よ!だって、私は貴方の喧嘩を買ったのだもの!じゃあね、バイバイ♪」
そう言い残し、嵐の様に去っていく鉋。
最後に見せた笑顔は、かつて俺が惚れた笑顔そのものだった。
でもね…
「何で、一人だけ逃げるんだよ!この後の俺の事も考えてくれよ!」
非常に怖いです。
誰か、助けて…
続く
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