第27話 勝者の宣言

第27話


「いやだ、いやだよ、やいばくん!なんで、そんなひどいことをいうの!」


泣き叫び、俺の言葉を拒絶する鉋。


その姿は痛々しく、見ていられる物じゃなかった。


違う、そうじゃないだろ!


俺が、俺が恋い焦がれて、好きになったお前はそんなんじゃ…


「刃!」

「遥!?」


そんな事を思っていると、無理に遥が俺を引き寄せて抱きしめてくる。


まるで、鉋に見せつけるかの様に…


「残念だったわね、幼馴染ちゃん。もう、コイツは私の物よ。」

「は、遥!?」

「刃は少し黙ってて。」

「…はい。」


俺は黙らされた。いや、黙るしかなかった。


遥は何か覚悟を決めた様な顔をしていたのだから。


「うそ!そんなことないもん!やいばくんはわたしのものだもん!」

「いいえ、違うわ。だって、私はもう…」


ん?何か嫌な予感がするんだが…


大丈夫か、遥?


一体、何を…


「もう、刃に初めてを捧げたわ!」

「ぴゃっ!?」

「えっ、ちょ、まっ、遥!?」

「刃は黙ってて!」

「はい!」


って、じゃない!


何を暴露しちゃってくれてるの、遥さん!?


「因みに、刃もよ!」

「うぅ…(必死に恥ずかしさに耐える音)」

「ふ、ふん!きすなら、わたしのほうがさいしょだもん!べろもおかあさんたちみたいにからめたもん!」

「…刃?後でオハナシね。」


昔の話!昔の話です!


そういえば、そんな事ありましたね!


今思えば、凄い恥ずかしい事してるな俺達…


「はっ、お子ちゃまね!私が捧げたのは、処女よ!男のアレを女のアソコに入れ「止めて!もう止めてくれ!」…まぁ、良いわ。」


何処が良いなんだ!?


全然、良くないだろ遥!?


お前、俺が止めてなかったら全部生々しく所まで話すつもりだっただろ!


「そ、それがなに!あんたなんかにわたしのやいばくんはわたさないもん!」

「はっ、それは此方の台詞よ!そうやって逃げてるアンタなんかにはね!」

「に、にげてる?」


遥、お前…


「そうやって変な感じで逃げて、誤魔化して、有耶無耶にしてる奴になんか刃は相応しくないのよ!残念でしたね!負け犬は負け犬らしく、大人しく一人で震えてなさい!」

「そ、それは…」


完全に鉋が黙り込んでしまう。


今なら、ちゃんと話せる。


そう思っていると…


「ふふ、ふふふ…」

「か、鉋!?」


突然、鉋が笑い出す。


それに連れられてか、遥までニヤリとし始める。


えっ、何これ?


俺、置いてけぼり…


「人が混乱してたら、好き放題言ってくれるじゃない…」

「あら、目は覚めた?」

「目の前の悪夢はまだ覚めてないけどね。」


あれ、普通だ。


もしかして、元に…


「良いわ、買ってあげるわよその喧嘩!」


続く

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