その5 幼き記憶と約束

その5


これは刃と鉋が幼稚園児だった頃のお話…


「かんなちゃん!おたんじょうび、おめでとう!」

「わぁ、ありがとうね、やいばくん♪」


今日は神崎 鉋の誕生日。


幼馴染である刃は彼女に招待され、一緒にお祝いしていた。


この時からなのだろう、彼女が愛に病んでいったのは…


…まぁ、この歳の刃に解かれというのも酷な話なのだろうが。


「ねぇねぇ、かんなちゃん。これ、ぼくからのぷれぜんとだよ!」

「わぁ、ねこちゃん!ねこちゃんだ!」


この時、刃があげたのは猫の人形。


勿論、当時の刃が選んだ訳ではない。


彼の母親が選んだ物だ。


だが、それを彼女は知る由もない。


「ありがとう!ずっとだいじにするね!」

「うん!」


微笑ましい光景だった。


それがあの未来に繋がると思うと、急におぞましい物へと変わる。


それはまだ少し先の話だが、片鱗は此処からだった。


「ね、ねぇ、やいばくん?」

「なぁに、かんなちゃん?」

「きょうね、わたしのおたんじょうびでしょ?」

「うん、そうだけど?」

「だからね、おねがいがあるの?」


彼女は少し、オドオドとしながら尋ねてくる。


この内容が全ての始まりだった。


「おとなになったらね、わたしをね、やいばくんのおよめさんにしてくれる?」

「およめさん?いいよ!」

「やったぁ♪やくそくだよ♪」

「うん、やくそく!」

「やぶったら、はりせんぼんだからね!」

「わかってるよ!」


_____________________________________


それから数年後…


「懐かしいなぁ…」


ボロボロになった猫を抱きしめながら、少女は呟く。


その目に光は無く、只々病んでいた。


「約束してから、もう10年も経った。後2年で結婚できる…」


彼女は笑う。


幸せな未来は既に決まっていると確信して…


それが覆される事は無いと微塵も疑わず…


「約束破ったら、針千本だからね…」


少女、鉋は告げる。


「ねぇ、刃君?」


終わり

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