第14話 家族の視点②

第14話


澪side


あの家は狂っている。


いや、正確には私の兄が狂っているのだろう。


お義姉さんは昔から天然で悪気無く人の傷付く事を言うタイプなのでどうしようもないし、それに似た甥っ子君もお義姉さんに似て鈍感な天然君に育ってしまっただけだ。


全ての元凶は兄、あのクソ野郎だ。


「何時まで幻想に囚われる気なんだろうか?」


お義姉さんと結婚した癖に、未だにあの人へ執着している。


あの妄執は最早、狂気としか言い様がない。


「ごめんね、…」


とある彼を見た時、直ぐに解った。


彼は彼女の子供だと…


「ウダウダ、考えてもしょうがない!今は私に出来る事をやるだけじゃない!」


このまま、遥ちゃんと刃くんの関係は隠し続けなければならない。


あのクソ野郎にバレれば、どんな手を使っても壊しにかかる筈だから。


あの過去に囚われた怪物は、最早止められない。


「よし!澪ちゃんは今日も頑張るぞ!えい、えい、むん!」


私が守ってあげるからね、遥ちゃんに刃くん…


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南原父side


私の娘は可愛い子だ。


しかも、恵まれている。


同じ時を過ごし、同じ時を生きるが隣に居るからだ。


「それなのに、何でアイツは俺を裏切ったのかな、…」


私の初恋は幼馴染の女の子だった。


だが、彼女は私の想いには答えてくれなかった。


何処の馬の骨かもしれない奴の手に渡り、私の所から離れていった。


「それに比べ、当麻君は良い子だ!遥を裏切る様子すら見せない!」


初恋は呪いだ。


結婚した今でさえ私を捕え、その心を蝕んでいる。


だが、遥はそれに苦しむ事はない。


彼が居る限り、その苦しみを味わう事は決してない!


「ああ、何て遥は幸せ者なんだ…」


…だからこそ、私は気が付かなった。


思い知らされる事になる事を…


遥が既に何処の馬の骨かも知らない奴の物になっていたという事を…


娘が心の内に抱えた本心を…


そして…


「初めまして、お義父さん。俺の名は、高橋 刃。彼女とお付き合いしている男であり、アンタから彼女を解放しに来た者だ。」


その馬の骨が、堂々と私の前に現れる事を…


私から…幼馴染から……奪おうとする不届き者を目にしなければいけない事を…


そして…


「君は、まさか…」


私を裏切った幼馴染の息子と、出会わなければならない因縁を…


続く


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