第5話 実戦③

・《武器拾得》

スキル所有者が手に触れた物を武器と認識した瞬間、それを拾得、異空間に保管することが可能。一般的に"武器"と称される物に限らず、汎ゆる物質を武器として扱うことが可能になる。

・《武器召喚》

『武器拾得』にて異空間に保管した"武器"を手元に即座に召喚する。

・《射出投擲》

異空間又は、現在手に所持している物体を500〜600m/sの速度で射出する。この時発射する物体の重さは影響しない。


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 王様が護衛についた実戦訓練。遂に待ちに待った戦闘に心躍らせながらも、命を落とす可能性があるという緊張の中、俺らは魔物との戦闘を繰り返していた。

 そんな緊張の中、俺はふとした時にみんなの目の前で《万物の管理者》のスキルを発動して仕舞い、しっかりと本当の称号をバラしてしまった。

 だがしかし、まだ称号の名前まではバラしていない。これから別の称号として隠そう。


「俺、実は《武器商人》っていう称号なんだ。あまりにも使い勝手がいいから。黙っててごめん」


 無技と天野は信じてくれた。だが玲は納得いかないようだった。


「ちょっと待ちなさい。貴方また隠そうとしてる? 武器商人なら、無技の大剣を直前に弾いたアレはどう説明付けるのよ」


「説明付けるってそんな言い方やめてくれよ。アレは咄嗟で無意識に射出投擲したんだ。何を飛ばしたかは覚えてないけど、大剣を弾くほどの力はあったんだろう」


「ふーん……まぁ、一先ずは信じてあげる」


 特に玲の警戒度は半端ない。これからはもっと注意して力を使おう。

 そうなんとか誤魔化すと王様は俺について何も言わずに先導してくれた。


「さぁ行こう。こんな所で駄弁っていては日が暮れる。日が暮れると帰るのも一苦労になる。これより奥は本来新兵がいくべき地区ではないのだが、魔王率いる魔物はこれとは比べものにならない。

 次は我も多少は参戦しよう。強き者とは如何なるものなのかを見極めよ」


 峡谷底まで下ってから戦った魔物はスライムから狼だった。この先に何がいるのかと考えるなら恐らく強さ的にゴブリンとかいるのかな? さすがに巨体レベルは来ないと思うけど……。


 王様が言うこの先は危険という発言に対して、無技はテンションを上げ、天野は更に身体を震わせていた。


「どんな野郎でもぶっ飛ばしてやるぜ!」


「ううぅ……すーっはぁー。駄目だ。危険ってどれくらいなのか全く想像が付かない……」


 バレないように……バレないように。えーとこの辺りのスキルなら……。

 そうどのスキルを使おうか迷っていた所、俺の予想の内の嫌な方が当たってしまった。


「グオオオォ!!」


 その姿は大型の猪。幅6mの高さ8mもあるだろう化け物だった。正に肉達磨と言っても過言ではないそれが、俺の目と鼻の先。森林の木々を踏み倒しながら俺らの方に迫ってきていた。


「いやデカすぎッ!?」


「あー、これはちょっと予想外だわー」


「うわあああぁ!!」


 迫ってくる化け物の大きさに一瞬にしてパニック状態になる。俺も無技も天野も、流石の玲も少しずつ後退り退路を確認していた。

 たがその中で唯一冷静だったのが王様一人だけだった。


「落ち着け……戦闘に集中せよ」


 まただった。王様の声を聞けば全員が一斉に逃げる足を止める。一体この王様の声には何が秘められているのか。頭が空っぽになるどころか、体は勝手に動き武器を迫ってくる猪に向ける。

 ただならぬ恐怖を感じているはずなのに、手の震えは完全に無くなり、全く抗おうという気持ちすら湧かない。


「我が動きを止めよう。戦場から何もせずに逃げることは許さん。逃げるなら何かしら功績を残せ。ただ恐怖して逃げる者は我が軍には要らぬ。

 だが、それでも立ち上がれる者は我について来い」


 すると遂に猪は王様の眼前まで迫る。


「グオオオォ!」


「さえずるな。肉塊が……」


 王様は猪の突進を目の前ギリギリまで待つと、その突進をなんと片手で受け止めた。そして間髪入れずにそれを握れば、猪は奇声を上げて全身から血を一気に噴き出した。


「ブギイイイィィイッ!!?」


「全員、攻撃にかかれ」


 俺らはあまりの無残な光景に一瞬攻撃を躊躇うが、無技も天野も玲も一斉に攻撃を仕掛ける。


「うおおおぉ!」


「てやぁああぁ!」


 俺は勢いよく弱った猪の巨体に剣をまっすぐ突き刺し、深々と肉を抉る。

 猪の身体はとても肉が分厚く、俺の剣でさえも刺さるまでにしっかり押し込む必要があった。最早ほぼ筋肉で身体を構成しているんじゃないかと思うほどに剣は深く突き刺さる。

 そう、内臓にさえ届いていない。然程のダメージを與えられていないのではないかと心配するほどだ。


「ブギッブギイイイイ!」


 当然か、態勢を立て直した猪は四方八方から叩き込まれる攻撃を身体を振るうことで振り払う。


「チッ傷が浅すぎる!」


「巨体の魔物は急所を狙え。例え一級品の武器でも必ずしも大きなダメージを与えられる訳では無い。この猪の場合は、目、脳部、肛門を狙え。もう一度動きを止める……次は確実に仕留めろ」


「分かった!」


 もう一度、王様は暴れまわる猪に近づくと、横から胴体に剣を突き刺すと次の瞬間、猪の身体全体に強力な電流が走り、バチバチと音をならしながらまた倒れる。


「フギャァアアアァァッ!?」


「次こそ、うおおおお!」


 俺は勢いよく猪の右目を貫き、同時に天野は左目を切り裂く。玲は脳天に向かって渾身のスタッフを振り下ろし、最後にドスっと音がなる方を見れは、無技が大剣を猪の肛門に突き刺していた。


「どぉりゃあぁぁぁ!!」


「ブギッ!?」


 無技は肛門に突き刺した大剣を縦に捻り、背負い投げの要領で、肛門をばっくりと切り裂いた。

 それから猪は声にならない耳を劈く奇声を上げると、遂に絶命する。


「終わった……のか?」


「やったぜクロガネ! 俺たちこんな化物ぶっ倒しちまったぞ!」


「はぁ〜死ぬかと思ったよぉ」


「流石に苦戦したわね……」


 ずしんと目の前に横たわる猪の巨体。王様がいなかったら今や俺らは死んでいただろう。

 さて、これから更に進むのだろうか? もう疲れたけど……。


「よし。今日はここで実戦訓練を終えよう。この猪を今日の晩飯とする。お前らも招待しよう。

 それと明日は実技試験とする。今回の戦いを頭に叩き込み学習しろ。

 明日こそ本当に死ぬかもしれないからな」


 実技試験。恐らく俺らを軍としての活動を認めるか決める試験だろう。

 ただどんな試験が待っているかは分からない。しかし王様の言うとおり"死ぬかもしれない"というからに実戦訓練を応用だと思う。

 ならしっかり準備しないとな。


 こうして俺らは実戦訓練にて巨体の猪を何とか撃破し、実戦訓練を無事終えた。

 その日の夕食は王宮の腕もあってか、めちゃくちゃ美味かった。

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クラス転移したら俺だけ【万物の管理者】称号・スキル持っていたので隠そうとしたけど隠しきれませんでした Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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