第2話普通の毎日

 普通とはなんだろう。

 普通に高校に行って、普通に友達を作って、遊んで笑って楽しんで過ごす。

 これが普通これが日常。

 なら、学校で1人なのは普通なのだろうか。

 一人でずっと本を読んで楽しむ事は普通なのだろうか。

 一般常識とやらはそれを異常というが、僕には分からない。

 それが僕にとっての普通で、僕にとっての日常なのだから。

 でも、分からない。

 普通の楽しいが、普通の幸せが分からない。

 僕にとっての普通はこれなのに、何故皆は変な目で見てくるのか、分からない。

 分からないは怖い、知らないは恐ろしい。

 でも、聞けない。

 聞くことはもっと怖い。

 一人で閉じこもって、1人で趣味を広げ、社会に溶けこめず、いつもの日常を過ごす毎日には刺激が強すぎる。

 やっと戻れた普通の日常を壊したくない。

 もう嫌だ。

 あんな事に会うのは、もう嫌なのだ。

 懲り懲りだ。

 普通になりたい、普通でいたい。

 社会で弾かれず、淘汰させず、静かに過ごしたい。

 そんな普通の毎日の、たった一つの変化が僕を変えてくれるのなら、願いたい。

 どうか、僕を助けてくださいと。


 僕は目を覚ます。

 これからの日常に向き合う為に目を覚ます。

 こんな憂鬱の日でも、太陽は登り、僕達を照らす。

 この季節の外からの日差しと暑さにはやはりかなわなと思いながらも、カーテンを開ける。

 蝉の声は活発に響いている。

 ここら辺ではアブラゼミしか居ないようなのか、同じ音を鳴らしながら毎日鳴いている。

 誰かに来てもらうように。

 どの世界でも変わらず、毎日は来るようだ。

 僕は机に置かれた朝飯を食べようと、1階に向かった。

 ただそこで、ひとつ異彩の色を放つ一通の手紙が置いてあった。

 さし宛は書いておらず、なんの変哲の無い一通の手紙。

 恐ろしいぐらい普通だった。

 僕はその封を開ける。

 そこには文字の拙いたった一言だけ添えられていた。

 初めまして私、そしてよろしく僕。

 その文は異常と言ってもいいぐらいに短く、そして不気味だった。

 畏敬の念さえ抱いてしまいそうなその文は、僕を恐怖の底にたたき落とすには十分だった。

 背中に冷たい汗が流れる。

 自分の心臓の音が高まっていくのを感じる。

 自分が狂ってしまったのかと思った。

 だってそうだろう。

 誰宛てか分からない手紙の最後に、自分の名字と同じで、さらに知らない名前がそこには書いてあったのだから。

 菅野咲 美咲より


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