こんにちは僕、さようなら私

桜咲 人生

第1話終わらない物語

 彼女は夏が好きだった。

 夏の匂いや蒸し暑さが好きなのだそうだ。

 僕とはまるっきり違う彼女は、ただ1人の友達であり親友でもあった。

 自分のベットの上には彼女からの手紙がまだ閉じていた。

 それは彼女からの最後の一通の手紙。

 僕にはまだ開く勇気が無く放置している。

 開いた窓から生暖かい風が入り込んでくる。

 彼女の好きな夏は僕に寂しさを伝える。

 寒い体は少しずつ暖められている。

 暖まった体を動かし、外に食べに行く。

 外に出ると、夏の暑さが襲ってくる。

 僕は暑さを振り切り、いつものカレーを食べに行く。

 その途中のお寺からは線香の匂いが漂ってきた。

 そうかお盆か。

 僕はすっかり忘れていた日付を思い出し、足を進める。

 彼女に線香をあげるか、いや辞めておこう。

 あの手作りの小さなお墓に線香とは、逆に失礼だ。

 そんな時ふとこんな言葉を思い出した。

 会者定離、会った人とは必ず別れるという言葉だ。

 その言葉通りだったが、別れたからと言ってその気持ちが失われるという訳ではない。

 だが、心に空いた穴はその気持ちでは塞がらない。

 空を見上げる、彼女は空の上に居るだろうか。

 どうだろう、彼女は魂と言えるものがあったとは考えられないが、彼女が天国に行けることを願うのみだった。











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