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「森に近づくなとは、どういうことですか」


 アセリアは少し冷や汗をかいた。


 今朝のことをノアは気づいているのだろうか。


「最近、モンスターの動きが活発になってるって、村の大人たちが言ってたんだ」


「モンスター……」


「人の骨が集まったモンスターらしい。名前はわからないけど」


それは間違いなくスケルトンだろう。


一般的には人骨で出来た人型のモンスターではあるが、動物の骨などから形成される事もある。白骨化したものが瘴気に触れる事で成り立つ。


アセリアが見たあの人型のモンスターはスケルトンで間違いないだろう。


場合によっては得物を持ち、それを巧みに使いこなす個体もいるという。


アンデット系統のモンスターとしてよく知られており、その中でも弱い分類に入る。


しかしそれは冒険者の場合であって、素人が相手にすれば死を覚悟する必要がある。


 主任司祭のアセリアとて戦闘はからっきしなため、一方的に殺されてしまうだろう。

 

あの時気づかれなくて本当に良かったと胸をなでおろした。


「なんだその仕草。何か知ってるのか?」


「いえ、そんなモンスターと遭遇しなくてよかったと思いまして」


これ以上はぼろが出てしまいそうなので平然を装うことで一段落ついた。


 しかし罠を設置したあの場所はかなり危険な場所だったのだと改めて理解できた。


 いつか回収をしなければならないが、その時は冒険者か村の大人たちと行かねばならないだろう。




 フィフィとアンネが戻ってきた。手には大きめの麻袋を4つ分けて持っており、おかげで全ての果実を収穫することができた。


 大きさは不揃いで傷んだりまだ熟した色をしていないものもあり、そういうものは直接食べずに調理して活かすという。

 

 ノアは無言のまま一番多く詰め込んだ麻袋を右肩に担ぎ、余った左手で少なめの麻袋も持ってくれた。


 そのまま教会へ戻り、そのまま食料庫へ持っていく。


 食料は確実に少なくなってきている。

 4斤ほどあったパンは5分の1程の厚さになり、炒って食料庫に袋ごとまるごと置き、その場で一つだけ拝借する。


 想像していたよりかはそこまで甘くはないが僅かな酸味によって甘さが引き立つ、そのような果実であった。


「山りんごっていうんだよ」


フィフィがそう教えてくれた。図鑑で見たことがあるが、その時は別の名前で書かれていたのを思い出す。


 ここではそう呼ぶのだろう。 


 小腹が空いていていたので、食べ切れるであろうと想定したが、意外にも食べごたえがあり、半分をフィフィに渡した。


 フィフィは小さな口を目一杯空けて齧りつき、口を膨らませながら頬張り続ける。


 それがとても可笑しくてアセリアは笑いを堪えることはできなかった。


 最後の一口を食べ終えた。口の中に残るような甘みではなく、後味は良い。


 「はじめてたべました」


 「おいしかった?」


 「ええ、とても」








 

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