三十路のババア
翌日。やる事は既に決まっていた。
「古川さんの家ってどこですか」
きれいな水。きれいな空気。森林浴。あるいはこの地域特有の人柄。それとも持って生まれた才能。
とにかく、三十七歳の私と間違われるような古川さんとは一体どういう人間なのか。
宿主のおばさんの三男の男性は、おばさんに孫ができたのは四十路ギリギリだと言っていた、おそらくは四十九歳だろう。そしてその古川さんって言う人も、多分同じぐらいの年齢だろう。
干支が一回りする位年齢差があるその女性がどのようにして若さを保っているのか、女性として単純に知りたかった。
「古川さんならばここと小学校の中間ぐらいにある蕎麦屋で旦那さんと一緒に働いてますよ、それで娘さんは旦那さんの実家でそっちの親と一緒に蕎麦を育ててますよ」
「いい親子ですね」
「お店では出してませんけどね。よそ様に売るんです。それであそこで一番おいしいのって天丼ですから、まあ千円するから滅多な事じゃ食べられないんですけどね」
案外そんな物かもしれない。親子で手に手を取り合って一つの生業を盛り立てていると言えば体はいいが、その場合片方に何かがあるといっぺんに危なくなる。ましてや娘の方に何かがあった場合、新たな蕎麦の供給場所を探さねばならない親の側の苦労は一方ならぬ物があるだろう。
老少不定と言う言葉があるように、年が上の人間から先に死ぬとは限らない。あらゆる場合を予測しておかねばならない物だ。その点、自分の様な一人きりの人間よりずっとしっかりしていると思う。
朝食の山菜ごはんと煮物を平らげた私が早速古川さんと言う人のお店に向かってみると、午前八時だと言うのにもう扉が開いていた。さすがに客は一人もいなかったが、それでも頭に三角巾を巻いた女性が妙に真新しい木製のテーブルを拭いていた。
「あの、お店は午前十時からですけど」
店の中を覗き見ていた私は、テーブルを拭く過程でたまたまその女性と目が合ってしまった。そして、驚いた。
―――――――その女性の顔は私とそっくりだった。だが肌の色つや、皺の量や目の輝き。全て負けている気がする。
「あれお客さん……私に似てますね。もしかして、昨日近くの民宿にお泊りになった……」
私がまさかと言う予感に取りつかれて口を固く閉じ目を背けようとする間もなく、三角巾の女性はそんな決定的な言葉を投げ付けて来た。
「古川さん……ですか?」
「確かに私古川と言いますけど、何か?」
「この村に他に古川って家は……」
「ありませんけど、どうしたんですか?」
私の心の中の梁が、この時音を立てて崩れた。
出産の苦労すら知らない小娘の私と、母親どころか祖母だと言うこの女性は同等かそれ以上の顔をしているではないか。世間は広い物だとは言え、こんな女性がいる事は知りたくなかった。
「大丈夫ですか」
「いえ大丈夫です、単に近くで見たいなと思っただけでしてー、ずいぶんきれいな肌ですけれど、何か秘訣でもあるんですか?」
「お客さん、東京から来たんですよね。東京ならもっといい化粧品とかエステとかそんなのがあるんでしょう」
「いえいえ、ここで手に入るであろう物には到底敵いませんよ。ここで手に入るきれいな水や空気、あるいは人情がその様に綺麗なお肌やお顔を作ってるのかと思うと羨ましくて仕方がないですよ」
心の梁がへし折れた私は、代わりにその身を委ねるかのように門の柱にもたれかかりながら、目の前の女性を全力で褒めてよりかかった。
(あるいはからかっているだけだったのかもしれない、でもだとしてもそれにしては余りにも、それにあの物言いは嘘を言っているそれじゃなかった……)
冗談半分で言うには余りにも似すぎている。そして一応年齢相応の顔はしているつもりだった。
おばさんならばまだともかく、お婆さんと言って来るような人間はこれまでいなかった。ましてや相手はこんな片田舎の小学生、時代相応にすれているかもしれないにせよ、いきなり初対面の人間を根拠なくババア呼ばわりする程性根は曲がっていないはずだ。
あの子どもを悪者にするか私が怠け者と言う事にするか、私はその答えを必死に探す事に力を注ぎ込んで肉体の方は柱に委ねていた。
「ちょっとお前、テーブルあと二つ残ってるんだぞ」
「ごめんなさいね、でも何か具合の悪そうな方がいるものでつい……」
「いえ、何もっ……!」
私の不毛な堂々巡りを叩き壊したのは、おそらく女性の夫であり店主と思われる、鉢巻を頭に巻いた気風の良さそうな真っ黒な肌で筋肉質な男性の一声だった。
私がホッとしながら体に力を込め、とにかく立ち上がろうと足をぐっと延ばすと、急に体勢を変えたせいかお店の中へ倒れ込んでしまった。
「お客さん大丈夫かい!」
「大丈夫、大丈夫ですってば……!」
「相当に痛いんですね……そんな顔をして」
「痛くありませんってば!」
「いや痛いんでしょう相当に、そんなに泣いちゃって……」
実際、痛くはなかった。全身で倒れ込んだせいか一ヶ所一ヶ所の痛みは弱く、全然痛さは感じなかった。
だがそれ以上に女性としての敗北感が私の心を苛み瞼をこじ開け、涙を吹き出させていた。
「ちょっとあなた診療所まで」
「おうわかったお前は準備を」
「痛くありませんってば、痛くありませんってば……離してくださーい!」
その姿を見て慌てふためいた男性は私の手を引きずりながら走り出した。私の痛くないんです、大した事ないんですと言う言葉などただの雑音だと言わんばかりに。
「どこも悪くないみたいですね。まあ一応鎮痛剤は出しときますけど」
「大体あの蕎麦屋の人がいけないんですよ!人の言う事なんか全く聞かないで!ただ目の前で転んだだけの人間をまるで癌患者みたいに!」
私は診療所で精密検査を受けさせられた。全く、どうしてこうなるのか。親切を通り越して大きなお世話、いやそれすら通り越して支配だ。
私は懇切丁寧な診療の中で溜め込んでいた苛立ちを一挙に爆発させた。
「あの人は昔っからああでね、でも最近はなんていうか度が進んじゃったと言うか……」
「本当、どうにかならないんですか!」
「まあ無理でしょうねえ、この前お爺さんになったからなあ」
お爺さん。
その言葉が、私の煮え繰り返っていた腸に氷の如く叩き込まれて溶け、そして一瞬にして冷気が私の全身に回った。
「…………あんなに若いのにですか?」
「確か来月四十一歳になるはずです。それで奥さんは三つ年下で」
「あの顔で………………」
「そう、あの顔でお婆さんでありお爺さんなんですよ。ってかね、私ももし服が割烹着だったら奥さんに何かあったのかって思ってた所でしたよ。いや本当にそっくりですね」
三十八歳、いや三十七歳。
その年齢にして、その女性は間違いなく孫を持つお婆さんだというのだ。
「一月前ね、お二人の娘さんが子どもを産んだんですよ、ここで。月美ちゃんと言うかわいい女の子ですよ」
「その子ができた時はどうだったんです」
「三十代でお爺さんお婆さんになっちゃうのかって苦笑いしてましたよ、自分だって十八で産んだ子供なのにねえ。旦那さんの側のお爺さんお婆さんからそちらのお母さんよりは後ですからって思いっきり笑われてましたよ。いやあ、無事に月美ちゃんを出産できたのもあっていい思い出ですよ」
その二人も共に四十五歳だと言う。夫は息子や嫁と共に蕎麦を育て、妻は近所の菓子店で中学校時代の先輩と一緒に働いているらしい。
「反対とかなかったんですか」
「赤とんぼの歌じゃないですけどね、十五の時にはもう話はまとまってたみたいでね。中学校を出るやすぐ今の嫁ぎ先の家に通う仲になってねえ、まあ小学校時代から奥さんの方が旦那さんの家に遊びに行くぐらい仲が良かったみたいなんでそのままなし崩しにって言う感じで。旦那さんが都会にある農業高校出るまでは待とうって事になってそれで籍入れたのが一昨年なんですけど」
十五で姉やは嫁に行き お里の便りも絶え果てた――――――――
ただの童謡であり、幻想の中の過去だと思っていた世界がここには確かに存在していた。
その癖、目の前の医療器具はずいぶんと二十一世紀的な輝きを放っている。私は耳から入ってくる情報から逃げる様に、近代的な医療器具を凝視した。
「やっぱりどこか悪いんですか」
「いえその……十七歳で結婚するって言うのが信じられなくって……」
「保険証を見せてもらったんですけど、東京から来たとか」
「はいそうです、と言うか東京で生まれて今まで東京を出た事がほとんどありません。旅行もほとんど行かず趣味と言えば街中でのショッピングや食べ歩きぐらいで」
「海外とかにもですか」
「いや飛行機が嫌いって訳じゃないんですけど、不思議と縁がなくて」
「実は私も東京出身なんですけどね、この村に来た時は驚きましたよ色々と。まあ元々無医村撲滅が夢でしたから望む所ではあったんですけど、ここは何て言うか、都会は無論他の田舎とも別個の場所ですね。大合併とか、限界集落とか、それって何語ですかって感じのね」
私がこの場所を選んだ理由の一つも、ここが「村」だからと言う事であった。
と言うより、他に何もなかった。
会社の後輩に限らず、他人が私の家に入って来た時のコメントはいつも同じだった。
やっぱりきちんとしているんですね。
さすが仕事ができる人は違いますね、
予想通りいいお部屋です。
やっぱり、流石、予想通り、案の定、思った通り。
そのどれかが必ず枕詞としてついて来る。期待を裏切らないと言えば体はいいが、予想から上にも横にも一ミリたりともはみ出す事はないと言う事だ。
事務職から始まって、経理畑をずっと歩んで行った人生。一円単位の狂いも許されない環境。それを苦痛に思ったのは二年目までで、それからは今までこれが我が天職だと言わんばかりに帳簿とのお見合いを続けながら必死に頑張り、現在の地位を手にするに至ったのである。
「先生は……」
「私がこの村に赴任したのは二十五年前ですけど、その時はもう本当に大変でしたよ。村中のあっちこっちからうちの娘をもらってくれって。医者だからって儲かるもんじゃありませんよって言ったらねえ、そんなの関係ない、二十五になって未だに浮いた話の一つもねえなんて危ないんじゃないのかって、診療に来ているのか見合い写真を渡しに来ているのかわからないような状態でね」
「大変ですね」
「引く手数多って言うより私の事を心底心配していると言う感じで、娘さんの気持ちを云々って何遍も聞いてみたんですけど、なかなか要領を得る答えが出て来なくて困っちゃいましてですね。実は私一人っ子なんですけど、どうもその事が伝わっちゃったのが原因っぽくて」
「どういう事なんですか」
「まあ要するに、二十五になっても独り身でいるなんて家が危ないじゃないかとか言う話だった様で……家とかそういう事ってよくわからないんですけどね」
結局村に赴任してから半年で父一人娘一人の女性と籍を入れ、今では二十三歳のトラックドライバーの息子と、息子と同い年の嫁、二歳の孫を持つおじいちゃんだと言う。
三十七歳の私は世間的にはおばさんだが、伯母さんではない。
妹が籍を入れたのは半年前であり、新婚夫婦らしく男女の営みを繰り返しているのだろうが、未だに妹が新たな命を宿したと言う話は聞いていない。
「本当に大丈夫なんですか」
「はい……………」
あんな事があったのにもかかわらず、私は蕎麦屋に入っていた。私にはもう、恨み言を言う気は起きなかった。
「しかし本当にお婆さんであり、そして三十七歳なんですか………未だに信じられませんよ」
「私だって、これほどまでにそっくりな人に出会うなんて信じられませんよ」
見れば見るほど、私に似ている。古川さんの旦那さんも、ちらちら私と古川さんの事を見つめながら薄く笑みを浮かべている。
「いや本当にそっくりだな、今日はいい日になりそうだ」
「それはそれは……」
「それでお仕事は何を」
「広告代理店で経理を担当しています」
東京で中堅広告代理店の経理課を担当する私に対し、片も付かないような田舎の蕎麦屋を夫と共に切り盛りする古川さん。
片や雇われ社員、片や個人事業主。
片や独身、片や子どもどころか孫すら持つ身。
私と古川さんは何から何まで正反対だった。
「どうなんです、十八歳で子どもを産むってなった時は……」
「別段何もありませんでしたよ、中学校を出るちょっと前にはもううちの人との話がまとまっていたので、自然の流れかなと」
「他の恋愛をしてみたいなとか思わなかったんですか」
「小学生の時一度だけありましたよ、でもその相手は村役場の人で年齢が十五も違ってて当然ながら奥さんもいまして……まあ憧れるだけならば勝手ですから」
それが初恋であり、最初で最後の失恋だそうだ。そんな物を失恋と呼ぶのならば、この世でお互い失恋を経験しないまま結婚したカップルなど保護すべき希少種だろう。
現に私だって小学校五年生の時担任の教師に目を輝かせ、二学期の半ばにその先生が結婚してがっかりした事もあったが、それが失恋と呼べるのだろうか。
「そんなに綺麗ならばモテたでしょう、いや本当にそう思いますよ」
「そうですかねえ、私はそう言う事にとんと疎くて、気が付いたらこの人と一緒になってて、それで母親になってて……」
我ながら呆れるほど白々しくかつ自惚れに満ちた物言いであったが、古川さんの反応はまるで変わらなかった。
同じ顔をしている人間に向かってモテたんでしょうなんて褒めるなど、自分の顔がいかに良い顔か自慢しているのと何も変わらない。我ながらなんでそんな事を言ってしまったのか、情けなくて仕方がない。
「ところで、失礼ですけどお客さんお年は」
「古川さんと同い年です」
「お子さんは」
「いません、と言うより一人暮らしです」
「これは大変失礼を……それで旦那さんは一体何年前にお亡くなりに」
「だから、未婚なんです…………」
古川さんがこの村でどんな暮らしをして来たのか、私はほとんど知らない。
だが義務教育を終えて二年で人妻となり、三年で母親となり、それから十七年たった今祖母になったこの女性が、この村から満足に出た事がないであろう事は容易に想像が付く。
生まれてから三十七年間も同じ場所にいれば、その土地に染まらない方がおかしい。だからこそ、私が独り身である事に対して死別ですかと言う言葉がすんなりと出て来たのだろう。
東京だったら三十七歳の独身女が真っ先に未婚ですかとは聞かれる事はあっても、死別ですかとは言われる事はないだろう。未婚ですか離別ですかと聞かれ、ようやくその次に死別ですかと聞かれるのが順序である。
「あの……伺いたいんですけど、この村に離婚した方っています?」
「私の知っている中では二人だけですね。一人が隣町の女性に浮気して家に寄りつかなくなった方で、それが二十年ぐらい前で……」
「もう一人は……」
「三ヶ月ほど前ですね。二年前に県庁からこの村に赴任して来た振興活動担当のお役人の方で、五年前に奥さんをなくしたリンゴ農家の方と去年一緒になったんですが、半年で別れてしまいまして、何が悪かったんですかねえ…」
「二十年ぶりの離婚って事ですか?」
「ああそうだよなあ。あの時は俺らも必死こいて止めたけどな、ったく何がいけなかったのかね」
日本で二分に一回離婚が起きていると言う厳然たるデータなど、この村では通じない。
この村に置いて離婚は十年に一回。全国平均の二百六十万分の一以下の比率だ。
「よく都会の人はあっさり離婚するって聞いた事ありますけどそうなんですか」
「そうですね。同僚にもバツ3、つまり離婚歴三回って言う男性がいまして。石を投げれば当たるぐらいにはいますよ」
「へえ…………」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔。そんな慣用句を中学校の時に覚えて以来、初めて使いたくなった。自分とほとんど同じ顔をした女性がここまで呆気に取られている様は、正直気味が悪いを通り越して面白かった。
「いらっしゃい」
「よう来たぜ今日も、おや今日は珍しく客がいるねえ。ってあれ、嫁さんの妹?」
当たり前だがここは蕎麦屋だ、客が来なければ商売は続かない。応対の様子から見ると同じ村の常連客と言った風情だ。
「バカ、俺の女房は一人っ子だよ、お前と違ってさ」
「そうだよな、俺なんか下に四人も出来ちまったんだからな、しかも一番下なんか俺が十四の時に生まれたんだからな」
「そういうお前も三人もガキ抱えてご苦労様なこったな。ああ、話を戻すとこの人は東京から来た旅人さんだよ。あんまりにもそっくりなもんで俺も驚いたけどさ、ってか大丈夫かいあんな派手にすっ転んで」
「大丈夫ですよ、奥さんも言ってるでしょ」
「ならいいんだけどねえ、で今日もまたたぬきそばかい?」
「今日は折角だから、そっちの嫁さんそっくりの女性と同じもんにしようかな」
「天丼を下さい」
「天丼かよ……まあ仕方がねえか、我慢しよ、ああお嬢さんは気にしなくていいから」
天丼を下さいと言った事に、民宿のおばさんがお勧めしたからと言う以上の理由はない。そして、常連客の男の人が私と同じ物を食べようかなと言った直後に注文した事については全く何の理由もない。
で、運ばれて来た天丼は海老が二本乗っている以外はカボチャ、ピーマン、ナスと言った野菜中心の、都会でもありふれた天丼だった。変わっている所と言えば、みそ汁やお新香と一緒になぜかウサギリンゴまでついて来た事ぐらいだ。
「サービスだよサービス、天丼は高いからってなかなか頼んでくれる奴がいなくてさ」
「当たり前だろ、ざるそば二枚と同じ値段でこの店一番高い代物だろ?よっぽどの事じゃなきゃ頼む奴ぁいねえっての。だいたいカツ丼が八百円なのによ」
「輸送費ってもんがあるからな、海老は高いんだよ。隣町の加工場から三十分で運んで来られる豚肉と二時間かかる海老の経費を同じにしないでくれよ」
「そりゃまあそうだよな。でもさ店主の嫁さんそっくりのお嬢さん、こういうとこで喰うのと東京で喰うのって違うもんかい?」
私は何も答えなかった。中身そのものはほとんど違わない。テーブルや椅子もかなり新しいせいか余り田舎の店に来ていると言う気分もしない。
それなのに、同じ物を食べている気がして来ない。もともと天丼など好物でも何でもなく、年に三回ぐらいしか食べない料理だからしっかりした味や店の風景など覚えてはいないが、私の想像をはみ出した味でない事だけは間違いがなかった。
「どうしたんだそんなに黙りこくって」
「いえ美味しいです、東京のより」
「そうかそうか、良かったなお前ほめてくれてよ」
いくら経理と言う人より数字と向かい合う事が多い立場とは言え、十五年も社会人をやっていれば愛想笑いやお世辞を言う技量など否応なく身についてしまう。
だがこの場合、そんなおべんちゃらを言わせたのはそんな類の理屈と言うより、これ以上言葉を濁らせてまた先程の転倒の話を蒸し返されたくなかったと言う思いの方が大きかった。
「ごちそうさまでした」
「おおありがとうございます、それでこの後は……」
「さっきの話なんですけど……」
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