第3話 Monster’s meal
致死率の異常に高いものに変異したウィルスに人々は恐怖し、パニックに陥る。
ウィルスは、高熱に加え、人間の肺を攻撃する特徴があった。
発症すると短時間で肺を硬化させ、肺としての機能をすべて奪い去る。
どんなに屈強な戦士であっても、肺の機能がなくなれば、体中に酸素が行き届かくなり、窒息して死に至る。
怖いのは、感染したのがわからず普通に生活していて、発症後、数時間で容態が急変し、死に至るもので、体の異変に気が付いた時にはすでに手遅れで対処のしようがないことだった。
初めて、そのウィルスに感染したものは、致死率は下がるが、肺の機能の三分の二は、その機能を果たさなくなり、普通の日常生活を送ることも困難な状態に陥る。
各国は、競い合うようにワクチンの開発に乗りだしたが、「マイクロチップが入っている」とか「副作用で50%の割合で死ぬ」とか風評がまことしやかに流れ、なかなか接種が進まないのと、ワクチンを作ってもそれをあざ笑うかのようにウィルスは変異を繰り返し、ワクチンが利かないものにどんどんその姿を変えていた。
空気感染のため、瞬く間に広がっていく。
家で発症して死亡した場合も、その部屋を密閉し、専門の死体回収業者が引き取りに来るまで何もできない。
また、外で倒れて亡くなった場合、だれも遠巻きにして避けて通るだけで、安否確認もされず、ただ、道端に放置されるだけだった。
そして、放置された死体は道路清掃のような車がまるで大きなごみを扱うように、密閉された荷台に自動的に送り込まれ回収され、その後を薬剤で洗い流されると、さながら地獄絵図を見ているような状態だった。
そんな中、日本国内のある研究所がその地獄絵図からの脱却のため画期的な研究を行っていた。
それは硬化した肺を蘇らせようというもので、SSTPという細胞を使った治療方法だった。
SSTP細胞(Super Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)とは、本来生物の細胞は細胞の分化を記憶し、胃の細胞なら胃の細胞にしかならない。
しかし、ある技術を使用することで、その細胞の持っている記憶を消去し、新しい記憶を植え付けることが出来る技術から生まれた細胞で、胃から抽出した細胞をまったく無垢な状態の細胞に変え、例えば心臓に移植することで異常のある心臓を正常な心臓に生まれ変わらすことが出来る技術だった。
21世紀の初頭、STAP細胞として注目を集めたが、いくら「STAP細胞はあります」と大声で訴えても、とある陰謀から偽物だという烙印を押され闇に葬られた。
しかし、秘かに研究は続いていて、細胞分裂の速度が画期的に上がり、SSTAP細胞を移植し、その臓器を驚くほど短時間に修復できるまでになっていた。
政府のある機関がその研究に目をつけ、ウィルスでやられた肺をウィルスが完全に硬化させる前に修復できないかと持ち掛ける。
研究所も一躍有名になれる千載一遇のチャンスと乗り気であったが、まだ、マウスでしか臨床実験は行っておらず、人での臨床試験は一切行っていなかった。
そこで、政府のある機関と研究所は、発症した人間を使って臨床実験を行うこととする。
ただし、それは緊急事態の特別措置として、外で倒れた人間をその意思とは関係なく研究所に連れて来て細胞を移植するというモルモットにも似た方法だった。
「ねえ、龍。
食べ物が少なくなったから、近所のスーパーに買い物に行ってくるね」
「鈴。
俺も一緒に行くよ」
「本当?
最近、例のウィルスで心配していたの。
ほら、とうとう近所でもなくなった人が出たじゃない。
私や龍は一回かかっているから、危ないんだって」
「マスクして、ゴーグルして、肌の露出を少なくすれば大丈夫だって。
それに、帰ってきたらすぐ、手荒いうがいをすれば、大丈夫だっていってたよ」
「うん。
だけど、なんか周りの人も懐疑的とうか殺伐としていて怖いのよね。
一緒に行ってくれると助かるわ」
「そのかわり、今日の夕飯はハンバーグがいいな」
「まあ」
二人は仲良くシェアハウスを出てスーパーに向かう。
しかし、出て5分も歩いたところで鈴の体に異変が起こる。
「龍…
なにか…息苦しい…
助け…て…」
その場にしゃがみ込む鈴。
龍は必死になって近くの人間に救急車を呼んでくれるように頼むが、周りの人間は党回りして、龍と鈴に近寄らないように、そして関わりを持ちたくないと言わんばかりに龍の頼みを無視して歩き去る。
鈴の背中をさすりながら絶望に駆られていると龍たちの前に救急車のような、しかし救急車とは違い側面になんとか研究所と書かれている車が停まると、全身防護服を着た人間が下りてくる。
そして救急車のように後部のドアが開くとストレッチャーを引っ張り出す。
「君、この人は?」
防護服を着た人間は3人で、1人が龍に話しかける。
龍は、誰かが頼んでくれた救急車だと思い込み、必死に説明し、鈴を助けてほしいと哀願する。
「君は?」
「彼女の恋人です」
「いや、そうじゃなくて、例のウィルスにかかったことはあるのかと聞いているんだ」
「え?
は、はい、あります」
「わかった。
本来なら感染予防法で君は乗せられないのだけれど、特例として同乗してもらう」
「は、はい」
二人が運び込まれたのは、研究所だった。
中は医療施設のようで、すでに何人か手術台の上で処置を受けていた。
龍は大きな病院に行ったことがなく、連れ込まれた研究所が病院だとばかり思っていた。
龍の前に防護服を着た医師のような男がやって来る。
「え?
鈴を手術するのですか?」
「ああ。
すでに肺の3分の2まで硬化が進んでいて危ない状態だ。
今から細胞移植手術をしないと間に合わないんだ。」
「そ、そうですか…
そうだ、鈴の両親に連絡しなくっちゃ。」
「そんなことしていたら間に合わないよ」
「じゃあ、手術をしているということだけでも連絡を取らないと。
ここはなんて言う病院…う…」
龍はいきなり息苦しさを感じ、その場にしゃがみ込む。
「どうしたんだ?」
医師のような男は冷静に龍に尋ねる。
「せ、先生…、急に…息苦しく…」
「そうか。
おい」
いつの間に傍に来ていた防護服の男に腕を捕らえれ、注射を打たれる。
「な、なにを…するんです…」
龍は失っていく意識の中で必死に尋ねるが医師らしき男は何も答えず、周りの男たちと話す声が聞こえた
「おい、急いで手術するぞ。
発症したての人間で、どれだけ効果があるか試さないと。
今まで、発症して1時間以上たったものばかりで、皆ダメだったたし、
さっき運び込んだ女性もダメだったから…」
(ダメだった?)
そこで、龍の意識は途切れる。
「あ?!」
龍は目を開ける。
どのくらい転寝をしていたのか、すでに陽は傾き、黄色の光に変わっていた。
「どのくらい寝ていたんだ?
そうだ、朝、グレーシーソフィやヴィヴィと話をしていたんだ。
だから…
げぇ、半日も寝ていたのか」
いろいろとグレーシーソフィとヴィヴィからショッキングな話を聞いたが、龍の頭の中はすっかり霧が晴れたようだった。
「まあ、なんであれ、あの二人は可愛いし。
それに、献身的に世話をしてくれた優しいいい娘たちじゃないか。
考えてみたら、初めから違和感なかったし、俺だって、本当のところなにがどうなっているのかわからないしなぁ。
ところで、ここは一体何年なんだろう。
あれから何年たったんだろう。
それに、鈴は…
鈴は、いったいどうしたんだろう。
治療で元気になったのかな。
それとも死んでしまったか。
待てよ、俺と同じで何年か寝ていて起きて彷徨っている?
まさか、プルートになっているとか…
そんな馬鹿なことはない。
さてと」
龍の頭はやっと現実を受け入れ、回転し始めたようだった。
「…どう?」
「うん、起きたみたい」
「よかったぁ。
また、具合が悪くなって眠り続けたわけじゃないのね」
扉の方からグレーシーソフィとヴィヴィの可愛らしい声が聞こえてくる。
二人とも龍に嫌われたと思いながらも龍のことが気になって遠くからずっと見ていた。
龍は、自分のことを尚も心配していてくれた二人のことを愛おしく感じていた。
「グレーシーソフィ、ヴィヴィ。
わるい。
お腹空いた。
何か食べ物ある?}
「え?」
「きゃっ」
二人は急に声を掛けられ、扉の向こうで驚いた声を上げる。
「朝、用意したパンとスープならあるけど…」
「お、いいね。
少し貰える?」
「うん。
ちょっと待っててね」
暫くするとスープのいい匂いが部屋に漂ってくる。
グレーシーソフィの作る料理は、いつもいい匂いで、味も龍好みの味付けで美味しかった。
「龍、ここに置いておくね」
グレーシーソフィは小さな声で言うと、スープが入った皿とパンの乗ったパン皿を乗せたお盆を扉の近くにそっとおく。
「え?
なんで?」
何でそこに置くのかと龍が尋ねる。
「え?
そっちに持って行っていいの?
私、龍の近づいていいの?」
「何言っているんだよ。
いいに決まっているだろ。
ヴィヴィも、そこにいるんだろ?
一緒に来て」
「え?
私もいいの?」
ヴィヴィの声は懐疑的だった。
「だって二人がいないと元気がもらえないじゃないか」
「えー!
しょうがないな~」
と言いながらも、声は嬉しそうな声に変っていた。
グレーシーソフィがスープ皿やパン皿が乗っているお盆を持って部屋に入って来る。
その後ろから、ヴィヴィがもじもじしながら入って来る。
二人とも、嬉しそうに顔を上気させていた。
「はい、どうぞ。
召し上がれ」
グレーシーソフィは、ちょこんと龍の横に座ると、お盆を龍の前に置く。
反対側にはヴィヴィが龍に寄り添うように座る。
二人とも興奮しているのか肌がじんわりと湿り、ブルームネクタの甘い優しい香りが龍の鼻を擽る。
グレーシーソフィは楽しそうに、手を伸ばして伸びをしたりして、嬉しくて仕方ない様子だった。
ヴィヴィも同様に嬉しそうに、もじもじと体を動かしていた。
そのグレーシーソフィの湿った首筋を見て、龍はたまらずにしゃぶりつく。
「きゃっ!
龍ったら…。
だめ…よ…。
スープが、冷めちゃうって」
グレーシーソフィは名残惜しそうに、龍の顔を両手で引き離す。
「私…、だめじゃないよ…」
反対側でヴィヴィが恥ずかしそうな声を出し、上目遣いで龍を見る。
「あ、ヴィヴィ、ずるい」
ヴィヴィの声に反応して龍はヴィヴィを抱きしめ、その首筋に顔をうずめ、首筋に滲んだブルームネクタを吸い始める。
「あっ…
うれしい」
ヴィヴィは龍に首筋を吸われながら、うっとりした顔をして声を出す。
「ずるーい。
次は私だからね」
グレーシーソフィが真っ赤な顔をして、抗議するような声をだした。
「ごちそうさま。
美味しかったよ」
スープとパンを残さずに平らげ、龍が満足したように言うと、グレーシーソフィは、ぐったりしながら満足そうな笑顔を見せる。
ヴィヴィは横になって嬉しそうな顔をしながら寝息を立てていた。
「軽かった?
お腹いっぱいになった?」
グレーシーソフィは体を起こすと、龍の顔を覗き込む。
「ああ、お腹いっぱいになった。
君たちから元気もいっぱい分けてもらったからね」
「もう、龍ったら」
グレーシーソフィはいたずらっぽく笑う。
夜も更け、プルートが徘徊し始める時間。
グレーシーソフィとヴィヴィは、龍の手を借りずとも完全にプルートの誘惑を跳ね除け、眠ることができるようになっていた。
ただ、プルートが近くに来ると、何かを感じるらしく、龍にしがみついて眠る。
その晩も、3人、真ん中に龍を挟み、川の字で寝ていると、両側からグレーシーソフィとヴィヴィが龍の腕をつかんだ。
龍が目を覚まし、二人を見るが、二人とも眠っているようだった。
そしてしばらくすると、龍の腕をつかむ力が緩くなる。
(離れて行ったか。
もう大丈夫だな。
でも、何で二人は誘惑を跳ね除けることが出来たのかな)
プルートの誘惑は絶対的なものだと聞いていたので不思議に思えたが、可愛い二人が食べられることはなくなったので、それはそれで良いことだった。
(体の調子も良くなったし、体力も戻って来たから、今夜こそはプルートを見に行ってみよう)
龍は、二人からプルートの話を聞くだけで、実際の姿を見たことがなく、自分の眼で見てみたいと思っていた。
体力も付き、走れるようになったので、いざとなったら走って逃げられるという自信もあり、今から見に行こうと決心する。
「ちょっとだけ、出かけてくるからね。
すぐに戻って来るから、大人しく寝ててな。
その前に、少し、エネルギーチャージをさせて」
龍は小さな声で二人に話しかけると二人の胸元に順々に顔を寄せて深呼吸する。
二人の胸元からは、温かい体温とともにブルームネクタのいい香りがして、それを吸い込むだけで元気が出た。
そして、しゃぶりつきたい感覚に陥る。
「いかん、いかん。
何考えているんだ、俺は…」
グレーシーソフィの胸元から顔を反らし、頭をかきながら立ち上がると、二人が寝ていることを、もう一度確認してから部屋をでる。
龍が居候しているグレーシーソフィ達の住処は荒れ果てた5階建てマンションの最上階で、窓やサッシはとうの昔に朽ち果てたようで、二人が今の場所を住処にしたときは窓の後がぽっかりと空いていたと聞いていた。
その5階部分だけ2人が生活できるように工夫を凝らしていたが、他の階はだれも住んでいないので雨風が侵入し壁や床が崩れ、とても生活できる状態ではなかった。
マンションの壁はシダ系の植物に覆われ、周りは果物、木の実がなる木が生い茂り、ジャングルに近い状態だった。
龍は、壁を伝いながら真っ暗なマンションの中を階段を使い下りて行く。
徐々に暗闇に眼が馴れて来て、しかもその晩は満月で雲一つない天気だったせいか、周りがよく見えた。
(なんか、目も良くなったみたいだな)
最近では、視界が広がり、遠くまでよく見えるようになったと感じていた。
1階に下り、エントランスから外に出る。
地面のアスファルトは、植物の力で、めくりあがり、砕けていて、その合間から土と草が生え、歩きにくい状態だったが、龍は絶妙なバランス感覚で普通に歩くことが出来た。
ここで暮らして1か月あまり。
最初の内は、永い眠りについていたせいで、筋力がゼロの近く、また、動くのもままならなかったが、グレーシーソフィとヴィヴィに献身的に世話をされ、昼間、マンションの周りを歩き回れるほどに体力も回復し、筋力も戻っていた。
二人の存在は、龍の体力を回復させるだけではなく、心の状態も安定させていた。
一般的に訳の分からない時代で目を覚まし、知っている人間は誰もいなく、家族や恋人の鈴がどうなったのかわからない状態では、とても平常心ではいられないはずだったが、二人の存在が龍の心の支えとなり、また、二人がそばにいて、肌のぬくもりを感じることで精神状態が安定していた。
正面には三角のシルエットを残した中野サンプラザが見え、その左側にはJR中野駅があった方には、龍が出てきた地下の倉庫のような空間の出入り口がぽっかりと空いていた。
恐怖のウィルスで死亡する人間が日本では日に数万に上り、特に東京のような都会では火葬して埋葬することは間に合わず、都内何か所か地下を掘って広い地下街のような空間を作り、そこに死亡した人間を入れた特殊な棺を並べ、合同墓地としていた。
龍が目を覚ました時、広い空間にたくさんカプセルのようものが置かれていたのは、まさにウィルスで死亡した人々の棺だった。
(今度、あの中をもう一度見に行かないとな。
それに吉祥寺のシェアハウス。
鈴は一体どうしたんだろう。
厚木の実家も行かないと。
でも、この時の流れ方では誰も…)
龍は、寂しさと絶望感を覚えた。
その時、100Mほど離れた木々の間で黒い塊がもぞもぞ動いているのが見えた。
「プルートか?」
龍はその黒い塊の方に近づいていく。
黒い塊は、その場にとどまったまま、何かをしているようだった。
「フェアリーを食べているのか?」
龍は、グレーシーソフィが体の中に蛇を差し込まれ、食べられているグロテスクな情景を想像し、悪寒と怒りを感じた。
よく見えるところまで近づくと、でっぷりとした巨体で、首から上が鰐のような爬虫類のような頭、そして体中うろこに覆われたグロテスクな生き物がしゃがみ込んでいた。
眼の前のプルートの足元には、グレーシーソフィくらいの女のフェアリーが横たわり、プルーとの両手が、その両足首を掴み、広げ、股間から伸びた蛇の胴体のようなものが、横たわっているフェアリーの花弁の中にとつながっていた。
フェアリーはすでに絶命しているようでピクリとも動かなかったが、差し込まれた蛇が下腹部の中で暴れまわっているのか、そのフェアリーの下腹部は波打つように動いていた。
「ああやって、毒を注入し、内臓を梳かしているのよ」
背後からヴィヴィの声が聞こえた。
「え?」
龍が慌てて振り向くと、すぐ後ろにグレーシーソフィとヴィヴィが険しい顔でプルートの方を見ていた。
「お、お前たち。
なぜ、ここに。
寝ていたんじゃないか?」
「だって、龍の気配がいきなりなくなるんだもの。
驚いて飛び起きちゃった。
それで下に下りて行くのが見えたから、ヴィヴィと二人で後を追いてきたの」
「ばかな。
プルートが徘徊している時間に危険じゃないか。
もし出くわしたらどうするつもりだ」
「だって、それよりも龍が心配で」
「グレーシーソフィ…」
心配そうな二人の顔を見て、何かを言おうとしたとき、プルートの方から「ぐちゅ、ぐちゅ」と気味の悪い音が聞こえた。
見ると蛇がフェアリーの中から何かを飲み込んでいるように、胴体が脈打って、プルートの本体に吸収されていく。
「吸われていく。
溶かされた体の中身が、プルートに吸われていく」
ヴィヴィが感情を押し殺したような声でつぶやく。
その言葉を裏付けるように哀れなフェアリーの腹部は見る見る間に凹んでいき胴体の部分は骨と皮だけになっていく。
蛇の動きが停まると、プルートは蛇を差し込んだまま体を前に倒し、フェアリーの肩口に噛みつく。
ぼりぼり
皮を食い千切り、骨を砕いて食べている不気味な音が周りに響き渡る。
「ほら、あそこ」
グレーシーソフィが指さす方を見ると、ヴィヴィのような小さなフェアリーが見えた。
そのフェアリーは背中から蛾のような大きな羽をはやし、また、眉間のあたりから2本、まるで触覚のような角を生やしていて、手には鋭利な刃物を持ち、じっとプルートを見つめ、タイミングを計っているようだった。
そしてプルートが肩から捥いだフェアリーの腕を食べ始めた時、もう一人のフェアリーは立ち上がり、羽根を広げ羽ばたくと、まっすぐプルートと食べられているフェアリーの方に向かって滑空していく。
よく見るとそのフェアリーは両わき腹から1対の小さな手が生えていた。
そして、音もなく食べられているフェアリーのところにたどり着き、止まることなく手にした鋭利なナイフを一閃すると、食べられているフェアリーの首から上が、ポロリと取れ、地面に落ちる前にわき腹から生えている小さな手が、その頭を掴み、そのまま、飛び去っていく。
「よかった。
頭は無事に持って帰れたわ」
グレーシーソフィは安堵の声を上げる。
しかし、龍はプルートがわざと首が落とせるようにしたような気がした。
その後も、プルートは哀れなフェアリーの体を貪り食べ続け、ほとんど食べ終わったところで立ち上がり、満足したように重い体を引きずりながら闇に消えて行く。
龍は、凄惨な食事があった場所に近づくと、食べ散らかしたと思われる肉片や皮の破片が落ちていたが、不思議なことに見る見る間に分解され土に吸収されていった。
龍はプルートの後を追おうと思い、グレーシーソフィとヴィヴィにすぐに家に帰るようにと言おうと振り向いたときに、二人の悲鳴が聞こえた。
見ると、二人の後ろにいつの間に近づいていたのかオオトカゲのような頭をしたプルートが腕を伸ばし、ヴィヴィの羽を掴もうとしていた。
「早く、こっちに!」
二人は龍の方に逃げようとしたが、恐怖でバランスを崩し、転んでしまう。
“ピリ”
なにかが破けたような音が聞こえた。
見るとプルートの伸ばしたての先には、ヴィヴィの羽が残っていた。
ヴィヴィはプルートに羽を掴まれたまま、バランスを崩し倒れた時に、付け根から羽が取れてしまったようだった。
しかし、本来は飛ぶための羽で簡単に取れることはなく、以前も羽を掴まれ、そのまま、引き寄せられるほど丈夫なものだった。
しかし、今は驚いている暇もなく、プルートは手に残った羽を捨て、倒れている二人に向かって醜い手を伸ばそうとしていた。
グレーシーソフィは健気に、ヴィヴィに覆いかぶさり守ろうとする。
「二人とも、そのまま!!」
龍は足元に転がっている野球のボールほどの大きさのアスファルトの塊を拾い上げると、力一杯、プルートに向かって投げつける。
アスファルトの塊はプルートの大きな体の右わき腹のあたりに吸い込まれる。
ズボッ!!
鈍い音がして、アスファルトの塊は体を貫通する。
「え?」
いくら龍が力一杯投げたからといって、普通、人の体を貫通するものではなかったが、プルートの体はまるで豆腐のように柔らかく貫通した。
「…」
プルートは何が起こったのかというような顔をして動きを止める。
しかし、股間から生えている蛇は二人に襲い掛かろうと激しく動く。
龍は、木の枝をむしり取ると、二人の頭上を飛び越え、枝を振りかぶると、動きまくる蛇に真上から枝を叩きつける。
すると蛇はプルートの股間から捥げ落ち、地面の上でのたうちまくり、直ぐにおとなしくなると、先ほどのフェアリーの肉片と同じようにすぐに分解され、地面に吸収されていった。
ギャア
股間の蛇を龍に叩き落されたプルートはさすがに悲鳴を上げると、逃げるように向きを変え、暗闇に消えて行く。
「ヴィヴィ、大丈夫?」
龍はその後を追おうとしたが、グレーシーソフィの悲鳴にも似た声で二人の下に足早に戻る。
ヴィヴィは背中の羽の生えていた部分から赤い体液を滲ませ、目を閉じぐったりしていた。
「ともかく、家に戻ろう」
龍は、ヴィヴィを抱き上げ、住処としているマンションに向かって歩き始める。
ヴィヴィはぐったりとしていたが、どこか気持ちよさそうな顔をして龍の胸に寄りかかっていた。
ヴィヴィの体はいつもより熱く感じ、熱があるようだった。
それと、いつもは軽い体が、少し重くなった気がした。
龍の横にはグレーシーソフィがぴったりと寄り添って歩く。
「龍ったら、凄いね。
あのプルートを追い払っちゃった」
「ああ。
あいつ、蛇がいなくなったから、どうやって食事をするんだろう。」
「え?
龍、知らなかった?
プルートも不死身なの。
体の一部が欠損しても、数日で元に戻るわ。
蛇も生えてくるし」
「そうなんだ…
じゃあ、退治するのはどうしたらいい?」
「そうね…
頭を潰すのが一番確実ね」
グレーシーソフィの言葉を聞いて龍は少しがっかりした。
「この付近にプルートは何人いるか知っているか?」
「うん。
だいたい、5km四方に2~3体が普通で、ここら辺は餌となるフェアリーの数が多いから3体いるわ。
さっき見た鰐頭と蜥蜴頭、ほかに猪頭のプルートがいるわ」
「ふーん。
一応、密度を考えているんだ」
龍は、感心したような声を出す。
住処に戻ると、ヴィヴィをそっとうつぶせ寝させ、傷を見る。
傷は、背中の羽の生えていたところに2本線のように、まるでささくれを剥いた後のような痛々しい傷で、赤い体液が滲んでいた。
「ヴィヴィ、大丈夫?」
グレーシーソフィが心配そうに声を掛ける。
「うん、大丈夫。
背中がピリピリ痛むけど、それ以外は楽になったよ」
ヴィヴィの顔には赤みが差し、言葉通り元気になってきたようだった。
「!」
その時、背中の傷の部分に温かく柔らかいものが触れる。
グレーシーソフィの方を見ると、グレーシーソフィも驚いた顔でヴィヴィの背中の方を眺めているのが見えた。
「え?」
自分の両肩の近くに龍の手が着いているのが見え、顔を横に反らせてみると、ヴィヴィに覆いかぶさるようにしている龍が見えた。
そして龍が自分の傷を舐めているというのがわかった。
「龍…?」
ゆっくり優しく傷を舐められ、ヴィヴィはいつしか痛みを忘れ、気持ちよさに酔いしれ始める。
「傷が…、ヴィヴィの傷が治っていく…」
グレーシーソフィの眼に、龍が舐めているヴィヴィの傷がみるみる小さくなっていくのが見えた。
二人の驚きを後目に、龍は一心不乱に傷を舐め、赤い体液を舐めとっていく。
「うぅ…」
気持ちよさに、ヴィヴィはたまらず声を漏らし、体の芯が熱くなり、体が湿って来る。
「傷が治った…」
グレーシーソフィが声を漏らすが、龍はヴィヴィの背中を舐めるのをやめず、それどころか、傷でないところも舐め始める。
「龍…、くすぐったい…」
ヴィヴィが甘い声を漏らすと、龍はヴィヴィの服を脱がせ、裸にしていく。
ヴィヴィも抵抗するどころか、自分から服を脱ぐようにして龍の手を助ける。
全裸になると仰向けに寝かされ、龍は覆いかぶさるようにして、ブルームネクタで湿った全身を舐め始める。
「あ…、いや…
気持ち…いい…」
いつもは羽があって持ち上げられ龍に舐められていたが、仰向け寝になってされるそれは、格別な快感をヴィヴィに与えた。
全身くまなく舐めとられるころには、ヴィヴィは絶頂を迎えたのか、とろんとした目で龍を見ていた。
そして龍はヴィヴィの脚を広げると、たくましく大きくなった葯が、ヴィヴィの可愛らしい花弁に触れる。
ヴィヴィは突入してくる龍の葯に備えるかのように、目を閉じ、体の力を抜く。
“グリュ”
音がするように龍のたくましい葯がヴィヴィのッ小さな花弁の中に割り込んでいく。
「うっ…」
たまらず、ヴィヴィが声をもらす。
しかし、いつもなら、体がリセットされ毎回初めてのように感じているのが、今回はヴィヴィの体が龍の大きさを覚えていたかのように、入ってきたため、痛みよりも、初めから快感に襲われる。
それからヴィヴィは、龍の体の下で快楽を貪るように、体を、腰を動かし続ける。
そして、龍の体液が子房の中いっぱいに押し寄せてくると、1滴たりとも逃すまいと言うように吸収する。
一部始終を見ていたグレーシーソフィは身体中ほてっているように赤い顔をして、とろんとした目をしていた。
ヴィヴィから体を離した龍がグレーシーソフィに迫って来るが、グレーシーソフィは金縛りにあったように、そこから動けないでいた。
ただ、グレーシーソフィの瞳は、期待できらきらと輝いているようだった。
龍は、グレーシーソフィの前に滲みよると、両手を広げ、グレーシーソフィの体を包み込むように抱きしめる。
それでグレーシーソフィにスイッチが入ったように、自らも龍の背中に手を回し、抱き着くと、顔を上げ龍の唇を探し、しゃぶりつくように唇を合わせ、舌を絡め、お互いを啜り合う。
その間、龍の手はグレーシーソフィの服を脱がし、裸にしていく。
グレーシーソフィを全裸にさせると、龍はゆっくりグレーシーソフィをヴィヴィの時と同じように仰向けに寝かせ、顔から指の先までブルームネクタでしっとりと濡れたグレーシーソフィの全身をくまなく舐め上げていく。
喜びと快楽で全身を何度も痙攣させるグレーシーソフィ。
龍は、刺激するたびにグレーシーソフィの乳首や花弁からこぼれ出てくるブルームネクタを吸い取りながら、元気になっていく。
「も、もう…だめ…
龍…勘弁…して…ください…」
何度も刺激され、その度ににじみ出たブルームネクタを吸われ、グレーシーソフィは絶頂を迎え、くたくたになっていた。
龍は、グレーシーソフィの両足を開き、その足を両肩に乗せ覆い被さっていく。
グレーシーソフィの花弁が上向きになったその上から、たくましい花糸と大きな葯を差し込んでいく。
「くぅ~」
グレーシーソフィは何とも言えない声を上げ、龍を迎え入れる。
グレーシーソフィも毎回リセットされ、その都度、龍は最初の挿入で壁を突破する感覚があったが、今日はそれはなく、龍の道ができていたようだった。
グレーシーソフィも挿入された初めから、快感の波に襲われ、自ら吸い付くように龍を求め、身悶え続ける。
花柱の中は、龍を奥へ奥へと誘いように脈打っているようだった。
そして、龍の体液が子房の中に流れ込むと、その体液も吸い取るように、体の中に吸収していくようだった。
「あ、ああ~」
声を上げ、体を激しく痙攣させ、グレーシーソフィはぐったりとする。
しばらくそのままグレーシーソフィを抱きしめていた龍は、そっと体を離す。
「龍…。
もう…外に行かないでしょ…
横にいて…一緒に寝て…」
眼を閉じ、息を切らせながらグレーシーソフィが囁くように言う。
「ああ、そうする」
そう言って龍は二人の間に仰向けで横になると、左右からグレーシーソフィとヴィヴィがにじり寄り、龍の腕を抱きしめ、気持ちよさそうな寝息を立て始める。
腕に当たる二人の乳房の感触を楽しみながら、龍は遭遇したプルートのことを考えた。
(見かけは強そうだが、実は弱いのかも。
あの誘惑さえなければ、この子たちでも太刀打ちできそうだな…)
けだるい疲労と、二人の体温の温かさ、鼻腔を擽るいい匂いを感じながら、龍もいつしか眠りについていた。
翌朝は、朝から大騒ぎだった。
騒ぎの主はヴィヴィで、龍は羽がなくなって悲しむものだと思っていたが、実際は反対で、羽がなくなってよほど嬉しかったのか、寝具のムートンの上をゴロゴロと転がっては大笑いしていた。
「まあ。
ヴィヴィったら、羽がなくなって、そんなに嬉しいの?」
「嬉しいなんてものじゃないわよ。
だって、これで何も気にせずに横になれるじゃない。
ほら、仰向けだって、こんなものよ!」
ヴィヴィは、仰向けになると大の字になって見せる。
「空を飛ぶって言っても、滑空するのが主で高く飛ぶことなんてできなかったし、羽が邪魔でよく眠れなかったし。
それが、体の調子は今までで一番いいし、何も気にせずに好きな姿勢が取れるし、いいことばっかりよ」
「まあ、確かに私もなぜかわからないけど、体の調子がいいのよね。
でも、良かった。
ヴィヴィにとっては、羽が苦痛だったのね」
「ウィ!」
ヴィヴィはグレーシーソフィに抱き着き、喜びを爆発させていた。
朝食が終わった後、龍はおもむろに口を開く。
「今日、ちょっと吉祥寺の方に行ってみようと思う」
「キチジョウジ?」
「ああ。
以前住んでいたところなんだ。
一緒に住んでいた“鈴”の消息が何かわかるかもしれない」
「“鈴”?」
「うん。
鈴は僕の婚約者。
将来結婚しようって、約束していたんだよ」
「そうなんですか…」
グレーシーソフィが憐れみを持った目で龍を見つめる。
「私もついていく。
龍はこの世界のことあまり知らないじゃない。
食べれる物や飲める物の区別ができないでしょ?」
「まあ。
でも、ここに居て、二人がいろいろと教えてくれたじゃないか。
大抵のことはわかるつもりだよ。
…
でも、ついてきてくれるといろいろと助かるかな」
「でしょ!」
ヴィヴィが嬉しそうな声をあげるが、グレーシーソフィがそれを遮る。
「だめよ、ヴィヴィ。
行きたくても、私達はいけないわ」
「なんで?」
「忘れたの?」
「…
キチジョウジって、エリアを超えちゃうんだ」
しょげかえるヴィヴィを、グレーシーソフィはやさしく頷く。
「龍、ごめんなさい。
私たちも動ける範囲、エリアが決まっているの」
「え?
決まっている?!」
「そうなの。
ここを中心に半径3kmの円の中でしか動くことが出来ないの。
その円を出ようとすると、頭の中に声が聞こえ、体の言うことが利かなくなるの。
“出てはいけません”て」
「まさか、プルート絡みか」
「たぶん、そう。
食糧の私たちが、自由に動き回ったら、餌場が安定しないからだと思う…」
「そうか」
“上手く作られているんだ”と龍は話を聞きながら感心する。
「私達、動けて阿佐ヶ谷くらいまで」
「わかった。
ここから吉祥寺までなら、歩いて2時間くらいだから、夜までには戻るよ」
「帰って来てくれるの?!
私たちのところに、戻って来てくれるの?」
グレーシーソフィは龍がそのままどこかに行ってしまうと思っていたので、喜びに顔を輝かす。
「そりゃあそうだろう。
今の僕の住処はここだし、それに…」
“それに、自分の栄養素のグレーシーソフィ達がいる”と言おうとしたが、それだと自分もプルートと変わらないなと、言葉を濁す。
「いいのよ。
龍なら、私たちの“元気”をいくらでも分けてあげるから」
グレーシーソフィは龍の気持ちをわかったように囁くと、龍の頬に優しくキスをする。
「うんうん。
私も龍ならいいんだからね」
ヴィヴィも頷いて見せる。
「じゃあ、行ってくる」
龍は何も持たずに軽装でグレーシーソフィ達の住処を出発する。
「気を付けてね。
川の水や、湧き水は危ないから飲んじゃ駄目よ。
飲むのなら、教えた木の実や果実にしてね。
食べるのも同じよ。
教えた果実だけにしてね。
帰ってきたら、たくさん、あげるからね」
心配顔のグレーシーソフィとヴィヴィに手を振って、龍は出発する。
途中、サンプラザの近くで、龍が地面に出てきた穴の傍を通り過ぎる。
何度か穴の中を探索したが、ミイラのように骨と皮に死体がカプセルに入っているだけで、生きている、仮死状態になっている人間は見えなかった。
(俺が最後だったのかな…)
龍のように仮死状態だった人間は、もう、出て行ったようで、たまに中が空のカプセルがあった。
龍は、鈴を探したが、皆、骨と皮だけで見分けることが出来なかった。
それなので、何か手掛かりを求めて住んでいた吉祥寺のテラスハウスを尋ねてみることにしたのだった。
中央線の高架下に沿って歩く。
地面は、ジャングルのように足場が悪く、2時間ではたどり着かないと容易に思えた。
線路の高架もあちらこちらで崩れている。
木造の家屋は崩れ、電化製品の残骸が散乱していた。
グレーシーソフィから教わったように、地面には強烈なバクテリアがいて有機物を分解するため、家の木材はすでに土にかえり、何も残っていなかった。
コンクリートの建物は、朽ち果て、ジャングルに飲み込まれていたが、形を維持している処も多く、グレーシーソフィ達フェアリーの住処になっているようだった。
2時間過ぎたころ、ようやく荻窪のあたりを通過する。
駅前を通っていた甲州街道の大通りも、見る影もなかった。
4時間ほどかかって、ようやく吉祥寺に到着する。
太陽の位置は真上から、少し、傾いていた。
龍が鈴と暮らしていたテラスハウスは井の頭公園の近くだった。
記憶と周りの風景を見て、位置を特定したが、ハウスは影も形もなく、あったと思われる場所は鬱蒼と茂った草木だけだった。
「まあ、当然と言えば当然か」
それでも、龍はあたりをつぶさに見て回ったが、鈴の手がかりどころか、何の痕跡も残っていなかった。
1時間ほど捜した後、井の頭公園の中に入り、池に近寄る。
休みの日、よく鈴と散歩に出かけたところだ。
池の周りは草木が茂り、昔の思掛けはなかったが、池は残っていて透明で澄んだ水を湛えていた。
「誰もいないから、水も綺麗になったか」
龍が鈴と訪れていたころの池は、生活排水が入り込み、お世辞でも綺麗とはいいがたかった、今の池は水底まではっきり見える抜群の透明度を誇っていた。
その中を、メダカのような小魚が泳ぎまくる。
龍は水際で腰を下ろし、そっと池の水を触ってみると、冷たく、心地よかった。
何も飲まずにここまで来た龍は、急にのどの渇きを覚え、グレーシーソフィに言われたことを忘れ、水を手に救い、口に含む。
「うまい」
水は無味無臭だったが、冷たく、乾いた喉にはご馳走だった。
龍は、そのまま口をつけ池の水を飲み始める。
(魚も泳いでいるから毒もないだろう)
しかし、龍は、水の中を泳いでいる魚を注意してみてはいなかった。
その魚たちの眼が、真っ白だったことに気が付いていない。
のどの渇きを潤し、立ち上がる。
「さてと。
そろそろ帰るか」
何も収穫がなかった寂しさがあったが、グレーシーソフィ達の笑顔が目に浮かび、龍は中野に戻ろうと来た道を探す。
「おかしい…」
しかし、来た道をいくら探しても、見つけたと思ってもすぐに井の頭池に戻ってしまう。
そして、いつしか意識を失い、その場に昏倒してしまう。
「あら?
フーマ?
穴から出てきたばかりじゃないわね。
そうか。
池の水を飲んだのね…。
大変、早く連れて帰って、毒抜きしないと」
龍は夢うつつで女性の声を聴き、担がれている感覚を覚えた。
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