第2話 不機嫌そうな理由、珍しい集まり
時間は流れ、五時限目休み。結局、柊はガンを飛ばしてくるばかりで、アクションを起こしてはこなかった。
一応、柊からの視線を気にしていないようにしてはいるが、気にしていないようにと考えてしまってる時点でめちゃくちゃ気にしてしまっていることは言うまでもない。
限界です。俺はスマホを取り出し、柊にメッセージを送る。
『あの、なんですか?』
とりあえず端的に訊いてみた。
するとすぐに既読がついて、返信が。
『別に、なにも』
いやいやいや、しらばっくれるのは無理あるでしょこれ! そう内心で突っ込みながら、慣れない手つきで文字を打つ。
『なにもないわけないだろ! 朝からずっと俺のことを睨んできやがって。なんだ? 両国に振られた寂しさを俺で紛らわそうとしてんの? 俺のこと好きになっちゃったの?』
俺は煽り全開の文を送って柊の方を見やった。
間髪入れずに射殺すような視線を向けられ、俺は慌てて謝る。
『すいません調子に乗りました』
既読はついた。しかし返信がこない。
やべぇ……これめっちゃ怒ってるんじゃないの? もしかして俺――殺されちゃう⁉
あり得なくもない悲劇に俺が恐れおののいていると、柊から返事が。
『振ったんだってね。沙世から聞いた』
やはりその話か。
『ああ。けどそれがどうした? 俺は有言実行したまでで、お前にしかめっ面される覚えはないぞ?』
『そりゃそうだけどさ……』
少しの間を挟み、柊から続けざまににメッセージが送られてくる。
『振るだけじゃなく関係も断つのかと思ってたんだけどね……まさか友達のままいようって仰るとはね』
『いや、あれは単なる社交辞令だ。他意はない』
『とか言って、本音は沙世との関係を切りたくなかっただけじゃないの? 私に大見え切った手前、一応振りはしたけど、実は沙世のことが気になってて、だから友達のままいよって言ったんじゃないの?』
『そりゃ勘ぐりすぎだ』
『どうだか』
『もしかして、それで怒ってたのか?』
『別に、怒ってないし。ただ、デカい口叩いてた割には中途半端なことするんだな~って思っただけ』
柊の棘のある文面から、怒ってないは間違いなく嘘だということがよくわかる。
彼女の言う通り、あの時はボッチ街道を歩む気でいた。片瀬とのうやむやな関係をきっぱりと終わらせるつもりでいた。しかし状況が、いや心境が変わった。
このことを柊に伝えるつもりはない。言い訳がましいと捉えられてしまう未来しか視えないから。
『まぁ、好きなように解釈してくれていい。俺はすべきことをしたまでだから』
『やーい、ミスター中途半端~』
『お? まさか俺に喧嘩売ってんのか? 言っておくけど、口喧嘩だったら相当強いぞ? 俺は。女相手だろーが手加減はしない、泣かす気でいくからよろしく!』
柊の幼稚な売り言葉を俺は冗談のつもりで買ってみたが、返信はこない。
あれ? そんなにつまらなかったですか? と、俺は柊の方へと視線を向ける。
なんのこっちゃない。カースト上位に位置する彼女には、俺にかまけている暇がないってだけのこと。
いつのまにやら柊の周囲に人が集まっていた。ただ、いつもよりメンバーが多い。
柊グループと両国グループが仲良しこよしなのは今に始まったことじゃない。よく一緒にいるところを見かけるし、違和感のない日常の一枚だ。
しかし今日はもう一派、加わっている。
俺の隣の席の女子、
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