第2章

第1話 様子がおかしいよ柊さん

 来週の今日まで出ている天気予報を見る限りじゃ、もうそろそろ梅雨明けが発表されてもおかしくない。傘マークが支配していた時代は終わり、これからカンカン照りの日々が続く。そう思うと、もう…………。


 教室の窓から見える曇り空が名残惜しい。


 ……それにしても、懸念していた事態にはなっていなかったな。


 一昨日、片瀬に告白され、俺は振った。その結果から派生してしまう可能性があった心配ごとが一つあった。


 片瀬の告白が嘘だった場合、俗に言う〝噓告〟だった場合だ。


 応じても、断っても、俺には最悪な未来しか訪れない。


 前者なら笑い者、後者なら嫌われ者。


 それだけは勘弁願いたかった。が、まあどうやら杞憂きゆうだったようで。クラスの連中はまったく俺を気にしていない。


 ということはつまり……片瀬は本気で俺を……。


 片瀬は俺を好き。そう結論付けようとするが、どうにも頭によぎってしまう。彼女の曲者な一面が。


 ……安直、かもしれない。いや、そもそもこの話を掘り返すのもおかしいのかもしれない。


 片瀬の気持ちを俺は断った、それで終わり。


 終わった後にあーだこーだ考えていてもしょうがない。


 俺が描いていた理想のボッチ学園ライフは残念ながら叶わなかったけど、まあいい。


 自分の口から友達としてよろしくって言ってしまったからには、最低限の務めはする。それで片瀬が迷惑と感じたら、向こうから縁を切ってくれるだろう。したら晴れて、ボッチ街道だ。


「……………………」


 片瀬の件はまあそれでいいとして……柊のヤツは一体なんなんだ? 俺に文句でもあるんだろうか?


 時は三時限目休み。後一時間もすればお昼を迎えるとこまできたわけですけれども……その間、やたら柊と目が合っていた。


 目が合った、は正確じゃないかもしれない。彼女はずっと俺を睨んできていて、視線を感じた俺が目を向けビビる、が一連の流れになっている。これを偶然とは呼べない。


 そして今も、柊から視線を送られてきている。気がするじゃない、間違いなく俺を睨んでいる。


 ここ最近、柊とは喋っていないし、なんなら目すらも合ってなかった。なのに休みが明けた途端にこれだ。


 思い当たる節は一つしかない。片瀬との一件以外思い浮かばない。しかし何故それで咎めるような視線を向けられなければならないんだ? 事情はどうあれ、俺は有言実行したはず。彼女に睨まれるわれはない。


 ああ……嫌だなぁ……スゲー居心地が悪い。


 柊からの謎すぎるプレッシャー。理由はわからない、わからないからただ嘆くことしかできない。


 これがもし一日続くようなら、さらに向こうがそれ以上のアクションを起こしてこなかったら……やむなし、俺の方から動くしかないか。

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