第19話「ヴィニテア=ディアとアラメイア=スノー」
ノア達を余所に一人の魔族の女は一人旅をしていた。
"変装"込みで。
そうでもしなければ魔族を嫌う多種族から迫害されかねないのだ。
「・・・やばっ、万が一の時のポーション常備するの忘れたッ?!」
彼女が常備していた鞄の中身を探るも・・・・やっぱり入って無かった。
「あー、今戻るのもなんだし・・・行くか~」
アラメイア=スノー
「どうかなさいました?」
突然人に声を掛けられた彼女は驚くも、不思議な雰囲気を醸し出している女性に遭遇した。
ヴィニテアは事情を説明すると――――
「そうですか、それなら道中集めた野草で簡易的なポーションを作りましょう」
「ほ、本当に?!」
彼女は笑顔で頷き、即席の簡易的ポーションを10個程作り上げた。
意気投合した二人はお互いの秘密を明かした。
「まぁ・・・魔族だったんですね・・・!」
「えぇ、私こう見えて結婚適年齢なのよ」
ヴィニテアが深い訳を話すとアラメイアは同情するように頷く。
そして彼女もまた道中の話をする。
「実は私、母から適切な職場を勧められましてね。母の親友が居る工房の工房主に会いに来たんです」
「成程、実は私も―――」
やがて二人の目的地が一緒だった事から工房主は相当ないい人だと理解する。
大体、王族や貴族の令嬢なんかは政略と言う望まぬ結婚を強いられる時代に生きている。
唯一の職人が減る一方でそうなっていた。
今は――――
「私の部下は皆優秀でその部下の助言通りに動いているの」
「成程~、御立派な部下をお持ちなんですね」
アラメイアがそう言い微笑む。
ヴィニテアがふと何かを思い出し
「あ、そう言えば最強の魔導師が居るって聞いたけど・・・」
「あー、それ私の家系ですね。スノー家は代々魔力の保有数によって魔導師団に入るかそうでないかを決める儀式みたいなのがありまして・・・・」
彼女がそう言うと目を細めて
「・・・実は、魔導師団に入るのはほぼ強制みたいなものなんです」
さらに言い続ける。
「強制?」
「えぇ、魔族も昔はあったでしょう?弱者が強者に受け入れられるまでどんなにひどい仕打ちでも無理矢理受け入れさせるようなものを」
ヴィニテアが何度も頷く。
「お爺様の代で無理矢理廃止にしてより強力な冒険者に討伐させて貰うみたいなことをやってのけた過去があったなーそう言えば」
「私の祖父の代も同じなんです」
スノー家では代々、国から戦力の増強を理由に強制的に徴収される事があり、祖父の代で戦力としては乏しいとされ、辺境伯を受け入れた過去がある。
「私の父も叔父も伯母も三人揃って強制されるような魔力を保有していなかった為、こうしてスノー家では今の私で強制的に徴収されるのは国の反発を貰うと断定したのです」
「成程、ひいお爺様の代では強力な魔導師だったんだよね?」
何代目かも忘れかける頃に―――彼女の曾祖父以上の代ではそれはもう立派な氷の魔法を扱った最強の魔導師として受け入れられていた。
だが国からの要請は強制であり、ほぼブラックな職場だったと言える。
「でも、私の父の代から今の国王に変わり、魔導師団も半ば残りたい者だけ居座らせる体制に入ったんです」
そうして彼女は"一応"魔力検査を受けるもそれ程戦闘向きでは無い魔力量と断定され、こうして国に貢献できるような薬草専門の調合師となったのである。
「なんかこうしてなんでお互いがまだ勘違いをしているのかが分からない・・・」
「ですね」
ヴィニテアは困惑し、アラメイアは苦笑する。
「あっ、そろそろ見えて来ましたよ!」
「あれがそうなんだ?」
一見変哲ともない民家に見えるが隣には工房らしき構造物と併合している。
アラメイアは扉の前に立ち何度かノックをする。
「御免下さい。母の紹介出来たアラメイアです」
彼女がそう言うと、扉の奥の方で物を片付けてさっさと移動する足音が聞こえる。
やがて扉は開き――――
「どうも~フィーから聞きました。俺は――――」
その工房主は彼女の方を見ると――――
「もしかして魔族?」
「?!」
姿を偽っている筈が、見事にバレてしまったのであった。
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