第16話「追想の樹木とドワーフ③」

「心当たりがあるんですか?」


師匠にそう聞くと、師匠は頷き


「こいつは――――あたしが昔、仕留め損ねたヤツの魔法だな」

「師匠程の相手となると・・・あぁ、昔言ってたあの女魔族か」


昔、半ば戦争じみた争いが一国で起きていた。

魔族と帝国の争いである。


「その時は流石に帝国でも対抗し切れずに師匠に頼んで来たんですよね?」

「あぁ、名を夢魔のヴィニテア。魔王の秘書とされている女だ」


魔王の秘書、となると実力はそこそこなはずだ。


「アタシが互角となると・・・分かるだろ?強さが」

「確かにそうですね」


師匠と二人でそう話すとカリムが食い気味に


「そうそう!その名前の女だ!その女のせいで偉い目に遭ったぞ俺等ドワーフは」

「それで・・・・結局の所被害は追想の樹木の結晶化のみ・・・って事ですね?」


カリム達ドワーフは頷く。


「よし、お前等!そこらの樹木も伐採すっぞ!」

「「「「オォー!!!」」」」


彼等がそう勤しんでいる間の別の場所では、とある一人の女魔族が魔王に説得され続けていた。


魔王アドラード

「なっ!また子供等を養子にするよう頼んだらいいから!」


夢魔ヴィニテア

『どうせアタシなんかぁ―――――』


魔族は色んな種族から敵対している――――のはその国の勝手な思い込みだった。

その所為で魔族の一部は和平交渉しようにも迫害されている。

真実を知るのは魔族のみだった。


「あ~あ、どうすっかなぁ~・・・」


魔王アドラードと呼ばれているその男はヴィニテアの血の繋がった兄妹である。


「あー、ホラ。営みなら精力も桁違いのヤツを旦那に向かえればいいし、なっ?」


夢魔族のヴィニテアは淫魔族とも呼ばれている。

同じ淫魔族で長をしている魔王だけが魔族の中で最も唯一の家族である。


『どうせ、どうせアタシなんかぁぁぁぁぁぁあああ』

「う~ん・・・・どうにかして泣き止ませないと・・・・」


すると、宰相らしき魔族の女が来た。


「おっ、ウテア。戻って来たって事は・・・」


ウテア=フェスメア

「えぇ、姫の行く当てのある所を見つけました」


彼女は「しかし」と付け加え


「その場所に居る方々はもれなく女性過多。その場所はお店になっていますが、男性は店主のみ」


魔王は何度も頷き


「その店主に妹を授ければ妹は泣き止むだろうか?」

「かと、とは言えあの雰囲気であればもっとも敵対心の強すぎるドワーフの女の子をあのお店に居座せる可能性が」


魔王は何か決心し


「その男の店主に妹と他の女性陣との間を取り持って貰おうじゃないか!」

「では、姫の説得は私が」


そしてノア=クラークに戻り――――


「―――と言う訳でドワーフを向か入れる事にしました。あと師匠も連れて来ました」

「ドワーフのノシル。よろしく」


勉強の一環としてノシルには俺の自宅兼仕事場となっている所に連れて行く事にした。

師匠は俺一人が工房主として活動しているのと王国との件にて既に話を通した。


「ウチの弟子が世話んなった。ヴィトってんだ、宜しくな」


ノシルは鍛冶場担当となり、スフィアがサポートにまわる事になった。

そして師匠は工房の経験もあると言う事で色々見て回りながらサポートしたり手伝いをしてくれるようになったのである。

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