第10話「とある元メイドの話」
「――――さて、仕事が終わりましたね」
私はとある公爵家にて一時的に働いていた元メイドである。
それにただのメイドでは無く専属。
要は「側付き」。
その人に生涯まで仕えると言う意味で。
アイリス=イデア
「ギルマス~、もう休憩ですか?」
「えぇ、近くの飯屋に足を運ぼうかと」
私の目の前に居る女性はアイリス=イデア。
彼女は私の秘書も務めている万能型受付嬢である。
因みに孤児院育ちであるニャニャの保護をしていてお姉さんポジションを維持している。
「ニャニャや他の担当にも伝えておきました。私も手が空いているので一緒に行きましょう」
「オッケー、いこっか」
ノア様はとある貴族の生れである。
ノア様のみ強力な職業と強大な魔力量を保持しているゆえに侯爵夫人様や侯爵夫人様の従兄様が危惧していた為、私がノア様の専属メイドとして働かせて貰う事になった。
「らっしゃい!女性二名お通~りッ!」
「「「らっしゃっせー!!!」」」
顔なじみのある居酒屋に足を運んだ。
亡くなった祖父や父と十九の時にお酒デビューを果たす為に訪れた。
「よう、いつものアレにすっか?」
「えぇ。同じものを彼女にも」
「毎度ォ!」
お気に入りのカウンター席の奥に二人で座り、通うと必ず顔パスで普段注文しているものを勝手に作ってくれるのだ。
この居酒屋は祖父が当時初めてデビューした私と同じ歳に訪れて店主と話をして和んで宿に帰る事が多々あったそう。
「お待ちど!【ロックコブラの焼肉定食】出来上がり!」
「有り難うございます!――――はぁ~良い匂い」
ロックコブラ、本来は砂漠のあるエリアに潜む魔物だが・・・栄養源のある魔物か動物を喰らう所為で栄養源がロックコブラの体全体に行き渡っているらしい。
だから火を通しても脂身が少なく、味としてはさっぱりしているのだ。
「この定食、・・・おいしい」
「だろう?!お嬢さん!」
大将がそう言って大笑いをする。
「居酒屋なのにおかしいでしょ?」
「あっ・・・・言われてみれば」
昔、私みたいに脂っこい料理が苦手な人が訪れる事がある。
その為に考えたメニューの第一弾だ。
因みにお肉の方は毎回に渉って冒険者から無料で多めに受け取り、材料が多めに残っている為に大分減らして作ってみた所、大好評だった。
それゆえさっぱりとした料理のある居酒屋として多く知れ渡る事になったのだ。
「他の新メニューも今も開発中なんだぜ?」
「成程・・・・新作出来たら私に食べさせてください」
「あっ、出来れば私にも!!!」
「おうよ!楽しみに待ってろよ~!」
食事を終えて途中の分かれ道でアイリスと別れた。
「・・・・さて、と―――――」
先ほど食べたロックコブラは熱を通すとさっぱりとした味と風味に様変わりする事があり、脂もそんなにない魔物である。
「明日は時間があれば・・・墓参りしようかしら」
とある日の翌朝、ノア様が三件程の依頼を難しい依頼から熟したとの報告を受けた。
「あら、そう。それは良かったわ」
「ギルマスは
お昼、昨日の遅くに
私は気になって聞いてみる為に彼女を呼ぶ事にした。
「えぇ。私がメイドとしてノア様の側仕え・・・もとい、メイドとして仕えるようになったのは・・・・ノア様の力の制御の為なの」
「力の制御・・・・と言うと?」
私は魔法で彼女にお茶を出し、隣の空いている席に座る。
「あの御方は――――クラーク家は由緒正しい家系でね、魔力が安定してて尚且つ弱い所もカバーできるような凄腕の家系なの。でも、ノア様が生まれてから生活が一変したわ」
ノア様の魔力は人害にはならないが、周囲の者を壊してしまう程だった。
「成程、だからギルマスがノアさんに仕えていたんですね」
「えぇ、私のお陰であの御方は今でも悠々自適に生活していたから安心したわ」
話を終えた私は自分の仕事場に戻った。
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