第4話「親の居ない子と彼女の友と――」

「私が領主の屋敷に居る訳・・・ですか」


彼女が語り出したのは――――壮絶な話だった。


「何年か前に村方面で大飢饉と病気の蔓延があったのを聞いた事、ありますか?」

「あ~、職場で働いていた時に親切な騎士から聞いたな。何でも雨が降らない日が続いて食物の成長が著しくなったのと、その悪影響でまともに食事での栄養が取れずに病気になったってのが。それで大忙しだったなぁ~、ポーション造っては被害が膨大な村へ急いで騎士が殆ど駆り出されていたってのが」


俺がまだ王宮で働いていた時、偶然にも億を超えるエクストラポーション制作の依頼が。

お陰で一睡も出来ず目標数にまで納品を終えた後に暫く休んでた記憶がある。

後日、親切な騎士や国王から感謝された。


「んで、君の居た村はどうだったんだ?」

「それが・・・」


彼女の村で丁度だったはずなのが――――ご両親の分は無く、彼女のみが飲んだらしい。


「エクストラポーションを製作しようにも素材は使い切ってしまって・・・失敗続きで結局、父と母は亡くなりました」

「で、友人には恵まれていたか?」


シリンは頷く。


「幸い、領主様と仲の良かった村長のご自宅に住まわせて貰ってから領主屋敷に」

「そうか・・・、スマンな。君の両親を助けてやれなくて」


俺はそう言って謝るが、彼女は首を横に振る。


師匠せんせいは十分に全ての村の人達を助けて貰った恩があるのでそこまで恨んだりはしません。それに『いつでも親切にしてくれる人には感謝を忘れずにしなさい』と再三ほどには母に言い聞かされましたので」


と、ドアをノックする音がし、領主が迎えると――――若い青年が居た。

俺より5つ年下に見える青年だった。


「―――んで、どうだった?」

「うん、弟子にして貰えたよ!」


その青年は俺の方に来て頭を下げる。


「シリンを弟子にしてくださってありがとうございます!」

「おう、君は・・・彼女を心配してくれてたのか」


壁際に移動して俺がそう聞くと、彼は微笑み


「恥ずかしながら・・・俺と弟とアイツの友達も・・・アイツの心配をしてたんで」

「そうか、良いねぇ~、青春だ!」


俺はそう言って彼の頭を撫でる。

もう夕暮れになったので、彼は一度実家に戻る事となった。


「さて、俺はあんまりここで身を寄せてもアレだから・・・土地を買わせて貰おうかな?」

「それなら明日、俺の知り合いに頼んでみるとするよ」


領主がそう言って彼の護衛騎士が住む宿舎に寝させて貰った。

因みにアスカさんは外で他の護衛騎士と協力して警備をしている。

そして翌朝。


「という訳で、彼に一件ほど見繕ってくれないか?」


行商人クルー=ド=ノヴァリエ

「ふむ、丁度資料を取りに王都の商業ギルドに戻る予定だったから馬車に乗るか?」


その行商人が俺に向き直し


「お願いします」


丁度、馬車を使っていた行商人に領主が頼んでくれていた。

なんでも二人は古くからの付き合いらしい。


「へぇ~、王都の・・・あそこ今じゃ国王がキレて問題のアドミン・グイズ公爵を身分剥奪ついでに屋敷を取り押さえられて結局、一家離散。んであちらの元奥様は今でも国王に謝罪の面会を頼んでいるらしい。因みにお嬢がいるらしいが・・・困った事に、お金が取り上げられてて手持ちに無いらしいから泊まれる場所が無くてすたれて無視されている貧民街スラムでナリを潜めてるらしい」


その話を聞いた俺は・・・・


「なぁ、アスカさん」

「よろしいかと。ノアさんの頼みとあらばそのお嬢様を捜索してきます」


隣にいつの間にかついて来たアスカさんにお願いした。

いつの間にか乗っていた事に驚く行商人のクルーさんは


「し、心臓が止まるかと思ったんだが」

「いやぁ、すいません。彼女は昔から陰に潜む事を得意として居まして」


まぁ、彼女の話に関しては追々と。

やっと王都に着いた俺は、先に国王に会いに行く事にした。

そこにはいつもと変わらない親切な騎士のディアハンさんが居た。


「どうも、ディアハンさん」


俺に声を掛けられたディアハンさんが驚く。


若い騎士ディアハン=バスター

「うっわ、ノア?!いつの間に戻って来たんだ?!」


ディアハンに事情を説明した。


「はぁ~成程。んじゃあ用が済んだら村に戻るんだな?」

「えぇ。その村にて一軒家を建てて生活するんで」


俺はそう言ってから国王に面会して貰えるよう頼んだ。

例の母子も含めて。

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