第7話 勇者

 周辺でシュパン!っと、何か斬れる音がした。皆んなはその音に振り向くと・・・


ポテッ コロコロコロコロ・・・


「わ・・・わ・・・ワキヤ隊長!」

「隊長〜〜!!」

「キャーーーー!!」

「何が!?何があった!」


「クックック、集団でつるまないと何も出来ない人間風情共よ、貴様らが言っているワキヤとやら、この魔王ゲルディ様が討ち取った!脇役の様に弱く、もろい奴であったぞ」


 ワキヤ隊長は即死であった。魔王の大鎌デス・スィクルの餌食で首を一瞬で落とされてしまったのだ。


「デュエルはどこだ?」


 ゲルディは冷静に人間達へと質問した。既に人間達は士気が下がっていた。恐怖で足が覚束ない者が多数、泣いている者までいた。

 そこに、ただ1人勇気を振り絞って質問する騎馬ナイトがいた。


「な・・何故だ・・何故魔王は穴にいないんだ?なぜそこにいる!?」


「貴様の言っている意味は不明だが、貴様ら全員が攻撃したのは我がしもべコウモリモンキーのハネザルだ!」


 それを聞いた防衛軍全員はずっしりと腰が重くなった。間違えてE級魔物に全力で攻撃したのだから。

 ただ1人を除いて・・・


「チッ、やはりお前らの実力じゃ、魔王は倒せないか。」


 そう言ったのはリゾットだった。ゲルディはリゾットに対して大鎌を突きつける。


「クックック、貴様がボスか?」


リゾットは無表情でゲルディを見ているが、実は心の中ではパニックを起こしていた。


(まずい!まさか俺の作戦が失敗するとは!やばい、やられる!考えろ考えろ!・・・ハッ!そうだ!!)


「・・・おいおい、魔王様、冗談はやめてくれよ。俺は確かに人間だが、魔界支援派の人間だぜ?」


「魔界支援派だと?」


「そう!憎っき魔界の敵となる冒険者をこうやって集めて魔王様にトドメを刺してもらう。それが俺の役割さ。」


 リゾットは自身ありげな表情で、ゲルディにそう伝える。勿論それを聞いた300人は黙ってはいられない。

 女僧侶で回復補助をしていたシムキーナが泣きながらリゾットに文句を言う。


「リゾット様・・・あたし達を騙していたのですか?あなたは、職業は勇者と言ったじゃないですか!?リゾット様に勇者討伐参加依頼料も支払い、ご馳走様とお酒までおまけして、最後に・・・あたしまで無理矢理抱いて・・・」


ザワザワザワザワザワザワザワザワ


周りがざわつき始める。


「な・・・待てよ、冗談じゃない、しかも誰だお前?」


「な!!ひ、酷い、酷いよリゾット様!!そうやってあたしや他の女性の方にも傷つけていたのね!」


ザワザワザワザワザワザワザワザワ


周りは更にざわつき始めた。

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