第29話 「あーん」は定番


「あ、遅いよー」


「ごめんごめん」


食事会場に戻り、待たせてしまっていた奈緒ちゃんの隣に座る。


「あ、料理取ってくるの忘れた」


「あかり姉さん、そんなドジだったっけ」


何やってんだというよりも、むしろ心配している顔されたので申し訳ない。橋本さんと話していたから、と理由づけするほどでもないので、謝りながら再度席を立つ。


「ごめん、取ってくるね。奈緒ちゃんも何かいるのある?」


「えっと、スイーツがあればなにか適当に」


「合点」


これ食べたいなー、これも美味しそう。けど野菜不足だな…サラダ多めによそっておこう。

あとはスイーツか…私も食べたいのだが、私の皿に乗りきらないので、奈緒ちゃんの皿の場所をお借りしよう。


「お待たせ〜」


「うわぁ〜…結構食べるね」


私の皿をみて、また皿をみて声を発してきた。


「そうかな?急にお腹空いてきたから食べたくなっちゃった。はい、これスイーツね。奈緒ちゃんのお皿に、私が食べたかった分のスイーツも乗せちゃったけど大丈夫?」


「むしろ、これを全部私が食べろとあかり姉さんが言うのなら、あかり姉さんの服が汚れることになってたよ?!」


汚れるって何で??


「…スイーツは別腹かなと思ったんだけど。全部食べちゃったらまた取ってくるつもりだったし」


「あかり姉さんって大食い選手権でてたりする?」


「そんなわけないじゃん」


私は笑っていたのだが、奈緒ちゃんは引いた笑みを浮かべていたのが解せない。そんなに量が多いのか?腹八分くらいに抑えたと思うんだけどなぁ。


「…ねぇ、ん…」


「…ぇ、なにもついてないよ?」


「そうじゃないよ!食べさせてってこと!」


「分かってるよ。ちょっとからかっただけ。はい、あーん」


「なんで飲みものなの?!あーんの口じゃ零れちゃうよ?!」


的確なツッコミをありがとう。


「ごめんごめん、奈緒ちゃんがかわいいからからかいたくなるんだよな〜。はい、あーん」


「あーん…今度はちゃんと食べさせてくれるんだ」


「流石にもうボケる素材がないし、食べもので遊ぶのは失礼だから。それにそろそろ奈緒ちゃんを餌付けしておかないといけない気がして」


「たしかに食べさせてほしかったけど、餌付けって言うのはどうなのかな?!」


あはは、奈緒ちゃんは可愛いなぁなんて言って頭を撫でれば万事解決するのだ。

私のお腹も結構我慢の限界なので、食事に移る。




「いやー美味しかったね」


「なんでスイーツしか食べてない私と同じタイミングで完食したのか…」


お腹空いてたからね、普段はそんなに早食いではないことを証明したいが、納得してもらえなさそうだな。







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