第30話 最高の人と現場だったに違いない


「じゃあ最後に四月一日さんお願いします」


食事会場に入ってから、2、3時間が経過したくらいで、橋本さんを含めスタッフさん達の挨拶がはじまった。

私が泥酔させてしまった2人も、とりあえず目が覚めたようなので一安心。

やや呂律が回っていなかったが、セーフだと思う。


そして最後に私の挨拶になった。

食事のあと奈緒ちゃんと色々喋っていたら、挨拶の内容を考える時間などなかったためピンチだ。仕方ない、口から出たものをそのまま伝えるしかないな。


「まずはじめに、この度は6日間に及ぶロケ、何事もなく終えられたことに感謝したいです。それはスタッフの皆さんのおかげです、本当にありがとうございました。

テレビの経験がない私を手厚くサポートしてくださった中尾さんをはじめとしたスタッフさん、本当にありがとうございました。橋本さんには、褒められたと思ったらすぐ落とされたので身を引き締めて収録に臨む事の大切さを学ばさせていただきました、ありがとうございました」


「さすがプロデューサー!」


泥酔コンビが茶々をいれているが、後に橋本さんに絞められそうだな。


「あと、奈緒ちゃん。メイクだったり、衣装のことだったり初日から本当にありがとう。奈緒ちゃんが隣にいてくれたから、私も頑張ろうって思えたから。…かっこいいとこ見せられたかな?」


首を縦に振る奈緒ちゃんと目が合った。そんなに強く振ると首痛めちゃうよ。


「6日間…長いようで本当にあっという間でした。やっぱりロケって大変だと思った一方で、修学旅行みたいに楽しい時間を過ごせたのは、最初にも言った通り、スタッフの皆さんのおかげです。…私が至らなかったばっかりに迷惑をおかけしたこともあったと思いますが、また機会があれば皆さんと一緒に収録したいです。

…だから、絶対にいい番組として放送して、視聴率取って続編!つくりましょう!」


「四月一日さんにそんなこと言われて雑な編集できないよな?」


そんなことを言って橋本さんが映像担当、編集担当の方に視線をやっていた。


「もちろんっすよ、今度は屋久島とか沖縄行きたいんすから!」


「私も屋久島行きたいです!最後に…収録本当にお疲れ様でした!四月一日あかりでしたばい!」


クランクアップしたときよりも大きな拍手が会場内に響き渡った気がする。少し涙が出てきたのは無事に終わって安心したのと、終わりたくない寂しさの両方だろうか。



鳴り止んだ拍手の後も静寂は現れなかった。そのせいか、いつの間にか私の目元も元に戻っていた。


…こんな素敵な時間をありがとうございました。









あとがき

これにて第一章終了となります。ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。

次回、第二章以降の話は、ストックが出来次第更新いたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る