第26話 空からのお別れは定番シーンである


これで本当に最後である。


6日間が長いようであっという間だった。

しんみりした空気は一旦リセットだ。収録にまで持ち込むわけにはいかない。


「ツアー最後を飾るのはこちら、桜島です!煙が登ってて存在感もすごいですね。圧倒されます…!」


桜島は日常的に噴火しているらしいが、こんなに煙が登ってて噴火の音が聞こえるのに地元の人は怖くないのだろうか。

ただ、自然の神秘というか、魅力というか何となく心惹かれるものではあると感じた。



「…え?実は空からみれます?」


てっきり地上から眺めるものだと思っていたのだが、空から見ようとスタッフさんからカンペで指示される。


「実は私高所恐怖症で…大丈夫か?いやいやだいじょばないですよ…!」


高所恐怖症といってもそこまで高いところが無理という訳では無い。これはオーバーリアクションで、番組を盛り上げるためだ。


「空からみた景色をお送りしながら、番組終了とのことなので、乗ります。私も覚悟を決めました」


ちょっぴり怖いが、スタッフさんもインストラクターさんもいるので大丈夫だろう。




「あー桜島の上まで来ましたよ。見てくださいよ、超きれいです!」


空の上から桜島を眺める。桜島単体でなく、島ごと真上から見る景色もまた絶景である。



「皆さんも機会があれば是非空からの景色も堪能されてください。ということで、ここ桜島の空からお別れです。さようなら〜!」


OKとスタッフさんからお言葉を頂き、カメラが止まり、地上に戻る。


地上に戻るやいなやトイレに駆け込んでいった中尾さんと橋本さんだが、2人の方が私より圧倒的に高所恐怖症だったらしい。

新事実を知ったところで、機材をバスに詰めこみ、ロケは多少の体調不良者が出たものの、無事終了となった。


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