第14話 私の初めてが…?

「さて明日のスケジュールは…佐賀と長崎で撮影…」


渡されていた明日のスケジュールを大まかに把握する。佐賀と聞いてぱっと思い浮かぶのは、吉野ヶ里遺跡というほど知識不足だが大丈夫だろうか。ネットサーフィンでもしておいた方がいいかな。

もう私は明日の佐賀と長崎で頭を悩ませている。しかし、福岡県よ。1日しか滞在してないのにもう私の第二の故郷だよ。まぁ明日には佐賀と長崎も第三、第四の故郷になっていると思う。


そんなこんなでホテルの一室で考え事をしているとドアがノックされた。


「四月一日さーん、少し大丈夫ですか?」


橋本プロデューサーの声だったので、すぐ廊下へ出る。


「はい、どうかされましたか」



「とりあえず1日目お疲れ様でした。大変申し訳ないんですが、正直無名のタレントを使って大丈夫かと思っていました。しかし収録が恙無く進んだのは、四月一日さんの実力があってのことだと思いますし、休憩中の姿勢も真剣さが感じられてよかったです」


橋本プロデューサーの顔は、最初に会った時よりも柔らかい表情だ。…というかやはり無名な私のことなんて使いたくないよね普通。社長のごり押し営業のお陰でこの仕事ができててるわけだもんなぁ…いつか実力で私にオファーがくるようにならないと。


「えっと全然知名度のない私を使ってくれたことに、まずすごく感謝してます。だから使ってよかったと思ってもらえるように今の自分にできるだけのことはやりたいと思ってます。明日以降もいい収録になるように頑張りますから」



橋本プロデューサーがこちらこそ頑張りましょう、とお互いに握手をする少年マンガのような展開になった。私も努力、友情、勝利の少年漫画は好きである。



明日は今日以上に頑張るためにも、早めの就寝で疲れをとろう。というわけで、布団に…



「四月一日さん、いらっしゃいますか〜…」


布団に入ろうとした瞬間のノック。やれやれモテるアイドルは辛いな…。

と冗談はさておき、久保さんの声だったがどうしたんだろうか。



「久保さん?どうかしましたか」


「あのですね、今日一緒に寝てくれませんか!」



…?


2人して時間が止まったかのように、そしてお地蔵さんのように固まってしまった。その数秒後、身体から変な汗がでてきた。

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