第12話 日本語とは?
「続いてこちらにやってきました。ここも公園なんですか?すごい広くて、プールもあるし、サイクリングもできるし、とめちゃくちゃ盛りだくさんな場所みたいなのですごく楽しみですばい!」
スタッフさんからついに使った、みたいな雰囲気が感じ取れたのでそのまま畳みかける。
「やっと私も方言使えるようになったですばい」
「いやーまだまだですね」
久保さんが橋本プロデューサーの横から声をかけてくれた。よし、手応えはいい感じ。
「まずは中の様子を見ていきたいんですけど、あぁお花がすごい綺麗ですね。デートとかで来たら女性は喜びそうですね。えぇと、この中にハート形になってる花がある?」
へぇ…なかなか洒落てるなぁ。実際カップルがちらほらいるのを見かけて少し羨ましく思っていたりする。私は女子高、女子大だったので、中学以降男性と接点がなかったから仕方ないと割り切るしかない。
「さぁ、お待たせしました。サイクリングの時間ですよ。私、実は聞いた時からすごい楽しみで」
サイクリングの経験なんて全くない。ママチャリを移動手段として用いるくらいだけど、こういった場所でやるサイクリングというものにすごく心踊らされている。
スタッフの方から楽しみにしすぎでしょ、みたいな笑い声が聞こえてきた。
「どうやら少し少年っぽいところがあるみたいですね。スタッフさんの目からみた私は」
「あぁー風が気持ちいいです」
バイクを漕ぐうちに心地よい風に当てられる。季節的にも春なのでよかった。多分夏ならば汗だくになってそう。…だからプールもあるのかな?結構考えられてるなぁ…なんて考えながらコースを1周する。
「えぇと30分かかったんですか?コースレコードは18分みたいですので、私の約半分の時間ですね。はい、自信のある方は是非レコードを出しに遊びに来てくださいね!もちろん自信の無い方は私の記録に挑戦してみてくださーい」
OKです!と収録の止まる声が聞こえて、どっと疲れがでてきた。よく考えれば、朝一に福岡に来て、ロケを8時間ほど行ってきたわけだし、おまけに最後にサイクリングしてるからなぁ。もちろん慣れない地、人と過ごす緊張感もあっただろう。
「お疲れ様です。とりあえずこれからバスに乗って宿泊先向かいますので」
「お疲れ様です!何かやることあれば手伝います」
身体的にはかなり限界だが、こういったロケで私にできることは精一杯やりたい。裏方の仕事というのがいかに大変か、私は社長や笠井さんの姿を見てわかっているから。
「えぇと…できたら荷物なおしてもらえれば」
「荷物壊れちゃったんですか?どこをなおせば…!」
「あぁ…えと車の中に積み込んでくれれば大丈夫です」
「…?わかりました!」
どうやら荷物が壊れてるらしいが、見たところ傷1つないよね?私荷物のこと勘違いしてないかな。
「すみません、荷物これでよかったですか?」
先に荷物を積んでいた中尾さんに声をかける。
「あぁ大丈夫です。手伝ってもらってありがとうございます」
「いえいえ、何か壊れてるからなおして…って言われたんですけど…どこも壊れてないですよね?」
「…あぁ多分修理する意味でのなおす、じゃなくて、収納する意味のなおす、で言われたんじゃないですかね」
「なおすにそんな意味が?」
「方言なんで無意識に使っちゃうんですよね〜…今度からタレントさんの出身地に気をつけて伝えないとですね」
ばりばりの方言なら、あっ方言だって解るけど、標準語の感覚で言われると全く分からないんだなぁ…「なおす」とりあえずメモしておこう。
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