第6話 昨日の姿勢が今日も続くわけではない

「ということでチキチキお昼から飲み明かせるか選手権〜」


「…昨日の輝いてた瞳はどこへ行ってしまったのかな」


笠井さんは呆れたような顔を浮かべ、首をガクンと下げているけど仕方ないのである。


「私だって今日もレッスン頑張るぞいって感じだったんですけど、ちょっと嫌なことがありました。だから飲んで忘れたいので付き合ってください」


「せめて夜にしろ」


即答された。


「はぁ…仕方ないですね」


手に持っていた缶をテーブル上に戻す。


「なぜ俺が駄々を捏ねたかのような感じになるんだ」


うるさいですね…とまぁ少し笠井さんに当たってリフレッシュしたのでレッスンに集中します。

私だって24歳ですから、多少のメンタルコントロールはできますから。




「そういえばあかりちゃんってSNSやってる?」


「…口説いてるんです?」


ごめんなさい笠井さんはいい人だと思いますが丁重にお断りさせていただきます。

というか、今どきの子はすぐSNS交換できるの凄いよね。私のときは赤外線ないケータイだとメールアドレス紙に書いて渡したり…ケータイ持ってない子もいたから連絡先聞きにくかったのにな。


「違うぞ。ただ情報発信とかしてないのかと思ってだな…というか連絡先交換してるだろう」


あぁ…そういうことですか。芸能人ってSNSで自分の出演する番組やら出た雑誌やらの宣伝をするし、プライベートのことを報告してファンと共有することが多いですからね。まぁそれができるのは一部の芸能人だけです。


スっと笠井さんの手元に私のスマホを置く。

あぁと画面に視線をやってから、納得したかのように頷き数秒間沈黙の時が流れる。


「…悪かった」


「何で謝るんですか、フォロワーの数が2桁なことくらい気にしてませんし?いいねが指の本数で収まるくらいなのも気にしてませんよ?」


「あかりんごちゃん、とりまバイブスあげてあげみざわしとけばおけまる水産」


「謎の言語で励まさないでください。所詮私なんて数年間アイドル活動しておきながら2桁のファンしかいないし、それもまともなファンかわからないから実質は1桁もファンがいない現役(笑)アイドルですよ。だから飲むしかないですね」



「マジでごめん」


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