第5話 地雷は踏み抜かれるもの
「いらっしゃいませー」
このコンビニバイトとしての日常感。実家のような安心感。ただし泣かせてしまったオカン。それに対してふと感じる罪悪感。
あぁもしかして私ラップ系アイドルに向いてるのかな。グループのラップ担当に立候補しよう。まあ在籍は私一人だから無理だが。
お客さんも減ってきて暇な時間になり、無駄な考え事をしていると声をかけられた。
「もう上がりの時間っすよね。お疲れ様っす」
「あ、ありがと。お疲れ様」
そういえば5年もいるとバイトのメンバーって就職やら結婚やらでほとんど変わってしまうから、私が最古参のバイトなんだよね。
若い高校生男子とシフトの交代時の会話。これくらいしか最近の楽しみがない気がする。
いや、アイドル業に楽しみがないわけでもないし、全然仕事ないけど自分なりに楽しんでるけどね?(謎の強がり)
「そういえば四月一日さんってマリ女卒でしたよね。OB的な繋がりとかないっすか?」
「え?あるけど」
高校から後援会のお便りみたいなのは定期的に郵送されてくるし、年1くらいで同窓会があったりするのが私の母校である。なお参加しない模様。友だちがいないわけじゃないんだけども、実質フリーターな私が行っても浮くからね。
「なら八月一日さんと仲良かったりしません?」
「…ごめんそれはないかな」
「あぁ…やっぱそうっすよねすいません変なこと聞いて」
再度お疲れ様といってタイムカードを切る。
マリ女…マリーク女子高等学校、私の通っていた私立高校であり、八月一日…八月一日花菜の通っていた高校である。
…思い出したくないことまで思い出しそうになった。
こういうときは飲むに限る。
チューハイやらビールやらを後輩のレジに持っていき会計を済ませる。後輩はえぇ…昼から?みたいな目をしてるがお前が私の心の傷を抉ったせいだぞとは言わないでおこう。伊達に24年も生きてないんだからねっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます