5-3.真の錬金術師の実力証明


 手提げのトランクケースの鍵を解除し、大きく開ける。

 採集器材や培養器材、合成・精製用薬品、評価試験器材等が最低限そろった携帯式錬金術キットは、ぼくみたいな非力にとってはそこそこ重い。でもトランクケースは頑丈で防水だったのもあり、中身は無事だったのが救いだ。

 それらをじっと見つめる。何度もお世話になったものだけど、それでもまだ、自分のものという実感はなかった。


 ハギンス先生、今回も使わせていただきます。

 そして、そこに詰め込んでいた白い錬金術衣を広げる。薬品で黄ばんだ汚れをみるたび、あのときの研究の日々を思い出す。憂鬱とさせた思い出も、今は頼もしく思えた。

 それを羽織り、長い白髪を後ろえりから出す。それを髪留めでまとめてひとつに結びあげた。時々めんどくさくてやらない時もあったけど、今日は別だ。

 手に耐薬性保護クリームを塗る。目を保護するゴーグルとキャニスター付きのガスマスクを装着した。すべてとはいわないが、揮発性の高い毒薬や劇薬を扱うなら必要不可欠だ。

「……よし」と一言呟く。


「あ、アリーが大変身した! え、まって、アリーがかっこよくなった! ねぇねぇ別人みたいにかっこよくなったよ! ふたりともそう思わない!?」

「うん。そう思う」

「当然だろう! なぜなら錬金術師はクールでホットなプロフェッショナルクラフツマンだからだ! それに惚れて真似をする素人がいてもなんらおかしくはない。無論、この天才もその魅力に踊らされた一人だ!」

「へっ? え、ええと、え……?」


 ランネの思わぬ反応に戸惑った。そんなにかっこいいものじゃないんだけど、そういってくれると、ちょっとがんばれそうかも。

 反射条件的に会釈したぼくは恥ずかしくなって背を向けて視界に入らないようにし、さっそく物質鑑定アナリシスの準備に移った。


「……」

 今回は出発原料も採取環境もわからないから、錬成物か採集物かも明らかでない。履歴すらも不明なら、物質作成者の手がけている錬金術の範囲や専門、組織先の担当テーマや主力製品を知れば推測はできるけど、それも不明。

 仮の話、"国際錬金術応用連合IUAA"のデータに登録されていない新規かつ未知物質ならば標準となる標本物質リファレンスとの比較は難しいだろう。夾雑物きょうざつぶつも多そうだ。

 精製の操作が必要か否かを決めることも含め、"ラーモア式共鳴分光法"や"モークシャ式カラムクロマトグラフィー"の測定ができれば手っ取り早いのだけど、そんな高価で大掛かりな装置、こんな辺鄙へんぴな村にあるはずがないだろうし。


 つまり、本当に何のヒントもなく未知試料を、精度の高い最新機材を使わずに解明する必要がある。"質料ほんしつ"の解明には"形相"の読解――いわば、実践的な腕と知識、精神性、そして思考力が求められる。


「……弱気になっちゃだめ」

 息を大きく吸う。右拳を左手で包み、ぎゅっと胸の前で握りしめた。

 大丈夫だアルメルト。もう怒られることも、幻滅されることも、優しく気を遣われることもない。怯える必要はないんだ。ヒントは必ずどこかにある。地道に潰していこう。


「よし」と息を吐き、前を向いた。

 薬さじで塊を削り、粉末をすくっては薬包紙を敷いた直示天秤で量る。かさ比重の測定を除く定性・定量評価をするなら100ミリグラムもあれば十分だ。薬包紙を折り、ロットとして小瓶バイアルに移す。


 調べるべきは3つ。試料サンプルの形態・表面状態の観察、粒子骨格構造の同定、そして元素の種類と量の分析だ。ただ全くの未知となるとその前にするべきことがある。仮説を立てるための情報が要る。


「――その情報を得るために今世の錬金術師はどうするのか。そこを知りたいのだよ」

「うえぇ、それ私にしたらお手上げものだよぉ。やっぱりしらみつぶしにあれこれ試すの?」

「結果的にそうなることもあるが」

「ポーション比色法で大まかに分けられる」

「まぁモノン君の案もひとつだ。おや、彼女なにか取り出したね。嗅いだことない臭いだ」

「え、ダイマン先生鼻良すぎない? ヘンテコマスク着けてるくせに」

「ヘンテコとは、フフッ、ランネ君も世辞が上手くなったものだ」

「いや褒めてないから」


 そんな声を耳にするが、気にせず次の操作へ移った。

 ロットから数ミリグラム、試験管に入れる。そこに持参の万能指示薬を数滴滴下する。加熱により万溶性を有する貴重な"エイテール"を有した自作の指示薬だ。アルコールランプの火でそれをあぶりながら溶解させた後、水冷し各種"ダイムス試験紙"に溶液を吸ったキャピラリーを当ててそれぞれの試験紙の色の変化を見る。定性的だが、大まかな性質は推定できる。


 pHは約8.0前後、塩性ハロゲンはなし、金属性はありだが磁性は不明、撥水はっすい性はなし、ORP値は低め、陰性魔力はあり、それも濃度が高い、湿・冷の色相より属性は水、青に近似した黒色より気質は水と木の中間、粘性は15℃の水より高め、極性は微妙に高め。

 親水性ではあるようだ。だとすれば無機塩を含有している可能性はある。錬成樹脂の可能性は考えにくい。水属性の材料なら魔法学的に急速な反応はしにくいから、加熱しても爆発の可能性は低い。物質の気質も五行的に水だったから間違いはないはず。滴定法は必要に応じてだけど、今のところしなくてもよさそう。


 持参の記録書ノートに現象を細かく記入する。そこから導けるベターな測定法とそこから求められるであろう性質に基づく構造と予測数値範囲を仮定づけて書きなぐるが、手を止めた。まだわからないことが多い。


「私にはどうみても黒い土にしかみえないけど。そのあたりで掘ってきたもの?」

「失敬だな! だが正直な意見は気に入った!」


 ちらりと聞こえた会話。あの言いぶりならちゃんとした錬成物を作ったのだろう。純度はわからないけど。

 小さな容器の縁すれすれまで黒い試料を入れ、トントンとタッピングしては追加。すれ切りまで入れたら天秤へ。目盛の数値を記録書に記入し、今度は同じ容器で水を入れ、天秤へ。

 それぞれの重さから計算すると、かさ比重は1.5と水より大きい数値となった。しかし金属含有の無機材料にしては低い。厳密ではない手法だから誤差はあるんだろうけど、ちょっと気になる。

 トランクから小さな箱を取り出し、中のパーツを取り出しては組み立てる。レンズの装着は慎重に。接続されている温度計は割れていない。水熱粉をケースに充填して、滴下口に水滴を入れる。


「ふむ、融点観測型の複式顕微鏡か。あんなものを持っているとは」

「ねぇダイマン先生、ああいう道具や服を一式持ってる時点で十分に錬金術師じゃない?」

「道具の所持だけなら盗賊でも可能だ。この天才が見たいのは彼女自身の知識と実力だよ。モノン君は勉強としてしかと見るがよい」

「わかった」


 そんなに注目されるとやりづらくなっちゃうな。いや、集中集中。そうすれば何も気にしなくなるから。

 これで簡易的な複式顕微鏡は完成。数粒をプレパラートに置き、倍率やコントラストを変えながら観察する。分解能は研究所のそれよりかは劣るが、細胞や菌、結晶状態を観るなら十分だ。


 意外と精製された材料かもしれない。そこに微小生物の存在はなく、どれも均一の角粒にみえる。複屈折はみられない。しかし表面がわずかに鱗状だ。層状の無機物――もしかしたら正電荷層状粘土LDHの一種かもしれない。自然物もあるし、錬成も比較的容易だし。けど、それにしては筋っぽいものもちらほら見える。繊維質も含有しているのだとすれば、高分子量体の存在も否定できない。しかしそれが何なのかはさっぱりだ。かさ比重が比較的低めというのも引っかかる。

 ステージの熱も温度計上では150℃を越えたが、融解する様子は当然見られない。ただわずかなたわみと収縮。繊維質が転移点に達したのだろう。


「まさかだと思うけど、あれ爆発しないよね」

「フハハハッ、神に賽を、悪魔に羅針盤を。されど隷はかいを漕ぎ、民は舵を切り、王は天をる也。うら若き少女をわざわざ危ない目に合わせるほど、この天才は人を辞めていないさ」

「安全だって」

「翻訳ありがと」


 十数ミリグラムを精密に測り直し、分析用の燃焼炉に入れる。棚から必要な薬品瓶を取り出しては、組み立てた各吸着管にそれぞれ充填する。それらの重量も測った。ガス生成タンクも問題なく稼働。一方通行になるようひとつのラインにつなげたら、発火石をオイル瓶から取り出し、燃焼炉の加熱部に入れる。


 こういった古典的かつ定量的な元素分析法は大体の錬金工房にあるけど、研究所は発達した熱電機関によるレーザー光で分析するから、この操作をするのは久しぶりだ。覚えていてよかった。


「珍しいね、ランネ君が真面目な顔をしているなんて」

「なっ、別に普段ふざけてばっかりじゃないですー!」

「それは君の生活を広義的に見た上での主観的な意見だろう。あくまでこの工房内という狭義的かつ客観的な観測および比較をしたうえでの――」

「あーもーわかったから! 別にそんなんじゃなくて、アリーってやっぱり錬金術師なんだなって」

「どういうことだい」

「……アリーって自分の容姿や性格に悩まされていてね。特に錬金術に対して自信がないって聞いてたの。でも、私にしたら今のアリーはすっごくかっこよく見えてるというか、動きに迷いがないというか、雰囲気もいつもと違うというか……だけど、そんなアリーをあそこまで追い詰めるくらい、錬金術師の世界って――」


 残酷なところなのかな。そう声が耳に届く。

 わからない。でも、余裕はなかった。

 純粋に学問を楽しめる気持ちがなかったくらい、何かに追われ続けていた。必死に追いかけていたつもりが、いつのまにか追われる立場になっていて。議論も学術的な批評でなく、経済的かつ成果的な否定ばかりで、どんどん空っぽになっていて。ぼくにとっての研究ってなんだっけって頭の中ぐるぐるになって。

 みんなが悪いわけじゃない。そこに染まれなかったぼくが悪いだけ。

 ここはどうだろう。ちゃんと、ぼくは染まれるだろうか。この白い髪も肌も目も、全部違う色に染められるなら、きっとぼくは幸せになれたのだろうか。

 わからない。今も余裕はないみたい。


「……大丈夫」

 何度もかけてもらった彼女の言葉を口にする。大丈夫。きっとできる。作業に戻ろう。

 とはいうものの、まだまだ分からないことが多い。属性が水というのも気になる。経験則では土属性か無属性に該当するかと踏んでいたけど、水属性なら生物に対しての親和性が少なからずあるということ。

 ただ魔力に対する反応性は高いので、"マナポーション試験"をすれば"魔素マナ"の種類と大きさがある程度わかりそうだ。展開溶媒調製の最適化やカラムの工程を省けるのは時間と溶媒のコスト的にも大きなメリットだ。


「ランネ君、評価には時間がかかるものもある。何だったら他の用事を済ませてきても構わないが」

「ううん、大丈夫。アリーが頑張っているんだもん、最後まで見届けたい」

「ふむ……なるほど。よき友を得たわけか」

「……?」

「いや何、こちらの話だよ」


 そうとわかれば二本目の試験管を用意し、数ミリグラムの黒粉末を入れる。持参の調合疎水性ポーションを数ミリリットル流し入れては振って攪拌かくはん、しかし溶けにくかったのでアルコールランプで加熱して溶解させる。それをキャピラリーで吸い取って、"粉末魔石"と多孔質アルミナが複合・塗布された薄層板にスポット。

 展開用ポーションの入ったガラス瓶に入れて適当なもので蓋すれば、化合物の魔法的単離と数、そして物質-魔法間の相互作用の強さを定性的にみることができる。この薄層板とポーションを使う方法はすぐだが、中途半端な時間が空く。


「……?」

 そのときふと気づく。ポーションに溶かした薄黒色溶液が藍色に変色している。振ってみると、流れない。つまり粘性が急上昇し、弾力あるものに変化している。まさかゲル化した? この短時間で?

 念のため、ただの水に試料を溶かし、同じ条件を実行。やはり同様の現象が起きる。溶液を加熱するほどゲル化――架橋反応が進んでいるということになる。確かにLDHはじめとする層状物質はある程度の水分で膨潤したり架橋することが知られているけど、ここまで極端だったっけ。


「……っと」

 危ない、薄層板を取り忘れるところだった。ピンセットで取り出し、振って乾かす。幸い、発光石の加工品であるUVI-450号があった。トンカチ型のそれをカンと叩いて、特定の波長の光を発させる。照らされた薄層板に浮き出てくるテーリングを読み取った。

 化合物の種類は主に4つ。内ひとつは濃く、残る3つは凝視しないと見えないくらい薄いので、ひとつの物質の魔力に誘引されているのだろう。

 目立った夾雑物はないから、蒸留法やトラップ法での精製装置を組み立てなくても問題なさそう。つまりこれは複合体コンポジット。ゲル化しスライム体になっていることを考慮すれば、確かに架橋剤リンカーとなる素材が入っててもおかしくはないかも。


「さっきから震えてるけど大丈夫?」

「師匠、語りたいだけ。でも我慢してる」

「あ、そういうことね」


 藍色のゲルを取り出し、2本のピンセットでゆっくり伸ばしてみる。ねばぁっと伸び、ちぎれる。抵抗はそこまでない。架橋にしては脆いな。今度はサッと引っ張ってみると強い抵抗。ちぎれることはなかった。

 これには驚いた、変色しゲルになるどころかシェアシックニング流体としての機能がある。すぐに思いつく利用用途は衝撃吸収材。でも結論付けるにはまだ早い。高分子量体マクロモレキュールであることが推定できるも、その分子量はじめ元素の種類や構造といった成分を特定できてないのだから。


 目の前の複雑な熱電機関の前に立つ。無数の歯車や燃料炉、自励式発電機に複数並ぶダイナモ缶、メーターの数々。金属の筒が何本も刺さったような装置は何本もの細いパイプに連結されている。

 型は古く精密とまではいかないが、材料と技術があれば作れる代物だと学んだ。レーザー光源と各"晄波長"をセンシングする信号変換器トランスデューサがあるなら、分光法は可能。光源で物質の情報を検出する技術は、多種多様の魔術が栄えた時代からあったものだ。


 そう、魔術が栄えれば錬金術や機械工学も栄える。それに、錬金術師は魔術師と肩を並べる役職。魔術も錬金術もそこに優劣はなく、独立しつつも相互する、等しき学問として扱われるべきだ。リーヴァン教授はそう仰っていたっけ。


――君なら立派な錬金術師になれる。みんなを幸せにするために、サフランさんは生まれてきたんだよ。


 あんなに優しかった恩師がどうして星になってしまったのか。どうしてぼくにとって大切な人は次々と遠くへ行っちゃうのか。今度はランネがいなくなったら、ぼくはどうすれば。

 幸せにしたいのに、幸せになりたいのに、どうしてなにもかもを不幸にする呪いをもってしまったんだろう。


「……」

 そんな思いに暮れている場合じゃない。

 数ミリグラムずつ小分けし、一つは溶媒に溶解させてULVI分光照射槽へ、一つは窪んだプレートにスリ切れで入れ、WCR分光用照射筒の中へ。


 手元に置いてあるマニュアルを見ながら操作を確認する。ペダルを踏んでからレバーを引くとごたごたの機械から駆動音と排気音がうなった。測定条件を目盛で調節。スイッチをパチパチとONへと変え、丸いボタンを押して分析を開始させる。


「すごいな……ほんとうにアリーじゃないみたい」

「基本的な錬金術の評価方法は心得ているか。それも、質の高い情報の取得を短い時間で済まそうとしている。とてもじゃないが、ここを初めて使うとは思い難い。……だが勝負はここからだ。果たして彼女の口からどういう答えが出てくるか」

「師匠、声に出てる」


 設置されたインク入りの針が交差して動く。吸収波長が変換された信号強度をペンレコーダーが記録する装置だ。幸い、時間領域の検出データを周波数領域へ変換するアルゴリズムを装置に組まれているようだ。

 取り出した紙に描かれたスペクトル図へ目を落とす。

 これらがあれば全部わかる、わけではない。でも、精度の高い鑑定はできる。


 あとは……ちょうど燃焼炉に入れた試料も空になったようだ。吸着管を取り出し、重量を計ることで吸着した生成ガスや魔力修飾された金属の重さがわかる。そこから計算すれば、元素の種類と質量が明らかになる。記録書に書き込み、徐々に粒子骨格構造のイメージングが定まっていく。


 馴染みの深いスペクトルの図をみて、頭の中で解析する。

 得られた部位的構造や元素の情報はカギだ。そのカギに当てはまる膨大なパターンが脳内の小宇宙いっぱいに広がっていく。それを選別し、粒子論や電磁論、構造論などに従って可能性の高いものを引っ張り出して、矛盾のないように整合性を高め、再構築していく。ぼくの頭じゃ学術機関アカデミックには敵わないけど、できるすべてを以て、導いてみせる。


 書く手を止める。目を閉じ。息を吸う。吐いて……目を開ける。

「これって……」

 すごい。

 もしここの工房でこれを作ったならば、あの人は確かに天才だ。

 でも、意見を述べることを許されるなら、彼の思う完成の域には程遠いだろう。欠点を述べるのみなら容易だ。彼はその欠点の打開策を求めている。


「アリー……?」

「どうやら、決着はついたみたいだね。さぁ、君の"答え"を聞こうか」


 ぼくはゴーグルとマスクを外し、皆に向けて口を開いた。



―――――――――――――

【補足】

・(作者の)混乱を防ぐために、メートルやグラム単位等規格はあえて異世界仕様にせず、そのまま使わせていただいています。また日本独自の言い回しや英語表記もあり違和感があるかと思いますが、こちらの世界に合わせて翻訳していると思っていただければ幸いです。

以上、お手数おかけしますがご協力のほど、よろしくお願いいたします。


【用語】※読み飛ばしても本編を読むにあたり問題ありません。

・昔の錬成物の成分評価:オープンカラムクロマトグラフィー(吸着塔)や指示薬、ポーションによる魔力的単離がメインであり、現在においても尚、用いられている。現在では非推奨だが、生成物を舐めることもかつては主流であった。

・質料:ヒュレーとも。本作では物質の事実的本質を指す。しかしこれには粒子論と気質論に対立しており、前者は魔法含む万物は粒子性をもたらすとされ、その粒子の集合体・組織化され目に見える物体や何かしらの性質をもたらしている存在を形相とした。後者は万物に魂という波動性を有する形而上学的かつ不可視の存在が根源にあるとされ、粒子はその魂という質料によって構築された形相だとされた。

・形相:エイドスとも。本作では物質の本質的形態を指す。上記の通り、二つの論によって曖昧とされる言葉だが、錬金術では重要な立ち位置にある。近年は物質に起きる魔法的事象を第三の形相とし、それを読み取ることで物質の粒子論的本質を観測するという考えのもと、物質の錬成や分析が行われている。尚、歴史上での質料形相論は現在と異なり、物を物として特徴づけることを形相と称していた。

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