間章2 追い詰められた狩人
その頃、エレクは椅子にもたれ掛かり、二度の失態に頭を抱えていた。
また彼は、恐らく掛かってくるであろう通話に対し、色々と言い訳を考えていた。
しかし、待てども通話は掛かって来ない。その事を不安に思い、彼はこちらから連絡を入れる事にした。
すると即座に通話は繋がった。そして案の定、通話相手からは厳しい言葉を投げかけられる。
「謝罪や弁明は聞きたくはないぞ。それ相応の処分は覚悟しておけ」
「お待ちください。仰りたい事はわかります。目標の確保に、またもや失敗致したのも事実です。しかし、障害となっていたジーク・サタンを消し去る事は出来た筈。あと少し、お時間を頂ければ、目標の確保も可能な所まできております」
エレクはそう釈明を入れたが、そこで相手からは
「死体を確認したのか?」と問いかけられる。
「いえ……。それは、まだです」
「話にならんな。奴は切り刻まれても、砲撃を一身に受けても死なない男だ。死体を確認していない以上、その判断は早計である」
通話相手はどこかジーク・サタンの事をよく知っている様な口ぶりであった。エレクはそれに少し引っかりを覚える。しかし、彼はそれを聞くどころか、その見解に反論する事もできなかった。
すると、相手はさらに厳しい言葉を投げかけてくる。
「それと、お前は私に一度ならず、二度もの失態を許せと言っているのか?」
そこで、エレクは苦しさ混じりの弁明をしてしまう。
「いえ、そう言うわけでは……。ただ、これはまだ作戦の途上でして……。他に策はございます」
「はぁ……。言い訳や弁明など聞きたくないとも、伝えてあったよな?」
相手はため息混じりに、問い詰めてきた。
それに対し、エレクは返す言葉もない。
「ッゥ……」と声にならない声を漏らすのみで。
そして、しばらくの沈黙が続いてしまう。
しかし、その沈黙を撃ち破る様に、相手は急に優し気な口調で語り掛けてきた。
「まぁよい。これがお前との最期の会話になるのだからな。最期くらい好きに語るがいい」
それは、エレクに辞世の句でも読めと告げている様な物である。そこで、彼が取り得た事は必死に食い下がる事しかなかった。
「お、お待ちください! 最期に……最期にどうかチャンスを頂きたい! 今日中には、目標を確保して見せます。それまで、待ってはいただけませんか? 後生だと思って、どうかお願い致します」
このまま何もしなければ、彼は始末される事だろう。みじめでも、何でも足掻くしかなかったのだ。
すると、相手は深いため息を漏らし、その申し出に耳を貸してくれた。
「……はぁ、わかったよ。出来れば、私もお前の処分を請け負いたくはないからな。今日中、それがお前の猶予だという事をゆめ忘れるな」
そこで、エレクは電話越しにも関わらず、深く頭を下げて
「はい……。寛大なご処置感謝いたします」と答えていた。
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