#10 ハンバーガーのモンスターは実現可能なのか
木製テーブルの上に食べカスだけになった皿が散乱している。
あまりにも自家製ハンバーガーが美味し過ぎて満腹中枢が馬鹿になった俺とタマは1人11個のハンバーガーを完食し、膨れた腹をさすりながら夢心地の気分になっていた。
「うひぃ~っ、美味かったぁ~」
「流石はハルト様が御作りになられた料理ですぅ、タマはハンバーガーが大好きになりましたぁ~」
当たり前だ。ハンバーガーがこの世で一番美味いからな。
爆食した反動で俺とタマは椅子から一歩も動けず1ターン休み状態だ。
いや~食後の余韻も凄まじいなこりゃあ。
「俺は元からハンバーガーが好きだったがここまで美味いハンバーガーは食べた事がなかった、最高の気分だ」
「美味しいハンバーガーを沢山食べられてタマは幸せですぅ…あっ!?」
腹を撫でていたタマが急に大きな声を出す。
「どした?」
「は、ハルト様大変ですっ!タマのお腹が大きくなってますっ!妊娠したかもしれませんっ!!」
小学生か。
「おめでとー、生まれてくる赤ちゃんはちゃんとトイレに流すんだぞー」
「ほぇっ?あっ、そ、そうでしたタマのお腹は食べ物で大きくなっただけなのでしたぁ…申し訳ございませんハルト様っ」
タマは恥ずかしそうに顔を赤らめて膨らんだ腹を両手でポンポコさせる。
ハンバーガーの快楽がタマをつまらない芸人みたいにさせた様だ。
この際いっそのことタマを芸人にさせてみようかな…。
いかんいかん、下らない冗談を考えている場合じゃ無かったな。
俺にはやるべきことがある。
どうやってハンバーガーのモンスターを生み出すのか考えなければ。
「タマはDPでモンスターが召喚される仕組みって知ってる?」
「えっと、ダンジョンコアの能力としか分かっておりませんが、召喚されたモンスターは呼び出されるのではなく生み出されているそうですよ」
まあそうだよな、流石にそこまで知ってるわけ無いか。
「召喚なのに生み出されている?」
「はい、何故かはわかりませんが召喚されたモンスターに召喚前の記憶は無いですし、モンスターリストからの抽選形式ですので同じモンスターが量産される可能性もありますから」
なるほど、俺は召喚と聞いてネット通販みたいなイメージを持って居た。
どこかの別空間にモンスター生産工場があって魔王がダンジョンコアの召喚ボタンをタップすると排出確率に従って選ばれたモンスターが工場から発送される、とかな。
俺はダンジョンコアの能力で手に入るアイテムもモンスターも同じ方法でこの世界に出現していると思ってたんだ。
でも考えてみればこの世界には複数の魔王が居るみたいだしダンジョンコアの能力が転送もしくは転移なのだとしたら必ず在庫切れが発生するはずだ。
だからタマの言う事は当たっていると思う。
モンスターはこの場で誕生していると考えて良いだろう。
そう仮定すると1つ疑問が残る。
なぜモンスターリストから抽選する形式なのだろうかと。
転送させずに生み出しているならわざわざリストに限定しなくても自由にクリエイトすれば良いはずだ。
なぜリストが必要なんだ。
…だめだ、もう少しヒントが必要だな。
「確か合成召喚ってあったろ、あれはどんな召喚なんだ?」
「合成召喚は所有しているアイテムとモンスターの中から3つずつ選んで合成枠にセットして新たなモンスターを召喚します、選んだ3つの合成素材は召喚後に消滅しますので注意が必要ですよ」
「合成召喚で召喚されるモンスターもモンスターリストの内容と全く同じなのか?」
「いえ、合成素材の組み合わせから最も適した種族がベースとなった個性あるモンスターが生まれます」
「ふんふん、なるほどな」
モンスターリストの種族からかけ離れたモンスターは召喚されないというわけだな。
アイテムかー。
情報を整理してみよう。
生み出すというのにモンスターリスト限定で、合成召喚でも結局ベースの種族はリスト内の何か、そして忘れてはならないのが召喚チケットとDP召喚で指定とランダム両方の方法で召喚が可能、更にはアイテムもモンスターと同じような原理で作られているはず…。
ということは無からモンスターが生み出されてる訳じゃなくて、モンスターリストに関係する何かを元にして生み出されているのかもしれないな。
…分かった気がする。
アイテムもモンスターもダンジョンコアから生み出された存在だ。
さてはツリー構造だろこれ。
きっとアイテムもモンスターも元は同じなんだよ。
転生した俺はダンジョンコアに組み込まれたんだろよ。
だからモンスターリストというのは決まった派生先を表示しているというわけだ。
ならば俺の場合はダンジョンコアのツリー情報に自家製ハンバーガーを上手く繋げれば良いんじゃないのか?
後はダンジョンコアの能力が具体的にどういう力で発動しているのか調べれば…いけるぞっ!
「先程から難しい顔をされてましたがどうかされましたかハルト様?」
タマが不思議そうな顔をしてこちらを伺う。
俺はニッと口角を上げる。
「いやなに、ハンバーガーのモンスターを生み出す方法を考えていたところだ」
タマがやれやれとでも言いたそうな顔する。
あ、無理だと思ってるなこのハムスター。
「が、頑張って下さいね~、タマはハンバーガーを頂きながら応援してま…って駄目ですよハルト様っ!!」
なになに、また何か思い出したのかな。
「何?」
「新人魔王の誕生から数えて1か月後に
折角ハンバーガーのモンスターを生み出す手掛かりを掴んだというのに、邪魔するなよな。
「何が大変なの?」
「ハルト様が他の新人魔王から馬鹿にされてしまいますよっ!」
なんだ、それだけか。
「なら行かなくて良くないか?」
「それが強制招集なのですっ」
不可避とは困ったな。
「確か3か月後にも何かあるって言ってなかったっけ」
「3か月後は1年に1回開催される定例の魔王招集ですね、新人を含めた全魔王が集まります、こちらも強制ですよ」
毎年とか勘弁してほしい。
学校とか会社じゃないんだからさ。
「その集会に行ってる間はダンジョンが無防備なんじゃないのか?」
俺が出払ったらダンジョンだれが守るんだよ。
「ご安心ください、開催地はこの世界とは別の世界ですので時間の経過はございませんよ」
それは好都合だ。
「じゃあ俺1人でもなんとかなるだろうし、1か月でハンバーガーのモンスターを生み出せるかもしれないから大丈夫だ」
「さ、流石ハルト様、凄い自信ですねぇ、タマはハルト様の心が傷ついた姿を見たくないですが、またお一人でなんとかされそうとも思えてきました」
タマが尊敬の眼差しを俺に向ける。
タマのやつ物分かりが良くなって来てるな。
俺にクリクリした眼を向けつつ、タマは口の周りに付いたハンバーガーのケチャップを手探りで
俺とタマは別々の意味でニコッと笑ったのだった。
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