#8 ダンジョン産の食材を試食しよう
さてと、侵入者は片づけたしファームするぞ。
ダンジョンコアの前で意気込む俺。
タマ曰く、ダンジョンコアで農作物や家畜の成長を促進させることが出来るらしい。
俺はダンジョンコアを操作してフロアリフォームをタップした。
リフォーム対象は農場にしてある地下1階の第1フロアを選択してと。
各種項目が表示され、背景に現在の地下1階全体が映し出される。
あれ、DPが増えてるな。
─────────────
~地下1階第1フロア~
地形【農場】
オブジェクト1【からし菜】
オブジェクト2【きゅうり】
オブジェクト3【小麦】
オブジェクト4【米】
オブジェクト5【玉ねぎ】
オブジェクト6【トマト】
オブジェクト7【レタス】
オブジェクト8【ニンニク】
オブジェクト9【倉庫】
《模様替え》
《変形》
《ファーム》
: DP 735.054,300 :
================
《ホーム》《戻る》
─────────────
さっきS級冒険者倒したからかな。
「S級冒険者は美味しいな」
「あの強大なS級冒険者に旨味を感じていらっしゃるとは流石ハルト様ですっ」
お、どうやらようやくタマが俺の事を理解し始めたらしいな。
俺1人でS級冒険者を退治したことが効いたみたいだ。
心配しなくて良いんだぞタマよ。
「さっきの侵入者ってこの世界でどれくらい強いのか分かる?」
タマに聞きつつダンジョンコアに表示されたファームをタップする。
なるほど、農作物の成長は面積単位でDP清算されるのか。
「はいっ、S級冒険者は冒険者の中で最高ランクです、Sランク以上のダンジョンを攻略した者しかS級冒険者にはなれないので人間の個体としては最高峰だと言えます」
じゃあさっきの奴らの消息を追って人間が来たとしても暫くは俺1人で大丈夫そうだな。
ダンジョンコアを見ると、農作物の成長段階が3つ示されていた。
作り過ぎて腐らせる事を考慮してるのだろうか。
まあ今は何も考えることなく3段階目の収穫まで成長させよう。
「人間の個体としてじゃなくてこの世界全体で言うと?」
「先程の侵入者2人がダンジョンで死亡したことで5万以上のDPが入りました、S級冒険者の平均DPが1万であることを考えますと侵入者がS級冒険者の中でも上位の実力者だとわかります、さらに1人あたり2万DP超過の数値はSSランクモンスターや神に選ばれし勇者に匹敵しますので世界で見ても最高峰の力を持っていたと言えます」
ふぅん、勇者と匹敵ね、この世界にも勇者居るんだな。
勇者とは絶対出会いたくないけどね。
どうせ勇者本人か取り巻きの誰かが滅茶苦茶強い美少女なんだろうし。
「それならダンジョンの警備用にモンスターを生み出す必要は無いだろ?」
ダンジョンコアには農場全体に成長完了の文字が表示されている。
早いな、もう成長できたのか。
よし、一度出来具合を見に行ってみますか。
「はいっ、タマはハルト様の事を見誤っておりました、先ほどの戦いを見てダンジョンを守るモンスターが不要な程にいと高きお力をお持ちであると完全に理解し、そして同時に確信致しました」
タマのやつやけに真剣な顔だな。
地下1階に向けて歩き出しながらタマを気にする俺。
「なにが?」
あ、今タマの眼がキラリと光った様な気がする。
「ハルト様は古代の伝承に噂される伝説の魔王に違いありませんっ!!」
で、でたー、そういうの要らないってば。
前世と前々世で使命だの運命だの言われて大変な人生になったんだから。
俺はもう自分のやりたい事をやるって決めてる。
伝説の魔王なんざ知らんがな。
「それはタマの勘違いだろう、俺はハンバーガーのモンスターを生み出そうとしているだけの魔王だぞ」
とは言ってみたが、タマの顔がまるで天啓が降りてきた修道士みたいになっちゃってるんだよね。
「いえ間違いございませんっ!!ハルト様のお力があれば全ての魔王達を攻略して伝説の魔王になることが出来ると確信しておりますっ!!」
やばいやばい、タマの顔がイッちゃってるよ。
ハムスターにあるまじき顔だ。
このまま長い説明をするつもりだろうが阻止させてもらおう。
「タマよ、その答えは全てハンバーガーにあるのだ」
「ほぇ?あの、えーっと、ハルト様それはどういう事なのでしょうか」
あれ、タマなら今のではぐらかすことが出来ると思ったんだがな。
まあ、タマのイッちゃってた顔が戻ったし話を逸らせたから良いか。
「うむ、ハンバーガーのジューシーな旨味とガツンと来るカロリー無くしてこの世界の明日はやって来ないということだ、え~っと、つまりはピクルスが肉厚のパテとフカフカなバンズに挟まれることによって高次元のフードエナジーが発生するわけだから俺達は今こうして意識を保って居られるということなんだよ、賢いタマはもう全部分かったね?」
これでどうだタマ。
「分かりません」
即答だな。
ならば…。
「もう一度説明しようか?」
「…いえ、結構デス…」
ふふふ、勝ったな。
そうらタマよ、お前はもう攻略したも同然だぞ。
また伝説の魔王がどうのこうの言い出したらハンバーガーの話を被せるからな。
そうこうしているうちに、俺達は地下1階の第1フロアに辿り着いた。
「おお~、ちゃんと育ってるじゃないか」
フロアの畑全体に収穫頃まで成長した農作物がズラリと並ぶ。
各種30個程植えてあるからな。
「ハルト様は随分沢山の種類を植えられたのですねぇ」
俺は近くに実っていたトマトを1つ捥ぎ取った。
ちと味見をしてみよう。
「全部ハンバーガーの材料だよモグモグッ…美味っ!モグモグッ、ダンジョンのトマトが美味ぇ!」
ダンジョン産なのにみずみずしく程よい酸味で美味しい。
「ジーッ…」
う、うわー…タマが欲望丸出しの顔で食べかけのトマトをガン見してるよ。
そんなに欲しいのかよ。
「ほら、タマも食べてみ」
近くのトマトを1つ捥いでタマにあげる。
「ハルト様ありがとうございまハムッモグッ…モッモッモッモッモッモッモッ、ゴクンッ、ぷはぁーっ!美味しいですぅ!」
タマよ、もっと味わって食べような。
口の周りにトマトの赤い汁がついてるじゃないか。
「誰も取らないから早食いしなくて良いんだぞ?」
「はっ、美味しくてつい…、申し訳ございませんハルト様…」
反省っぽいことを言いつつ、タマは畑に実った農作物を横目でチラチラ見てる。
こいつ食いしん坊か?
まあ、俺も一応育てた農作物の全種類は味見しようと思ってたからいいけどさ。
「他の作物も食べてみるか?」
「はいっ!!」
口の周りにトマト汁をベッタリ付けたタマが満面の笑みで頷く。
こうして俺とタマは8種類全ての作物を一つ一つ味見していったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます