#4 7億DPの魔王

「それでは台座のダンジョンコアをご覧ください」


名前が気に入らなかったのか、少し落ち込んだタマがハムスターの小さい手をダンジョンコアに向ける。


ダンジョンコアの光は弱まりパソコンのモニター程度になっている。


近づいてみると丁度サッカーボール位の大きさをしたダンジョンコアにはこの石壁に囲まれた部屋が映し出されていた。


さらに石壁の部屋を背景にして幾つかの項目がダンジョンコアに浮かび上がっている。


─────────────


《魔王》

  ̄ ̄

《ダンジョン》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《アイテム》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《召喚》

  ̄ ̄

《ダンジョンモンスター》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《練成》

  ̄ ̄

《報酬》

  ̄ ̄

《メッセージ》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《カメラ》

  ̄ ̄ ̄


: DP 735.000,000  :


─────────────


ほう、なんだかガチャゲーのゲーム画面みたいだな。


「ダンジョンコアで出来ることは全てタッチ操作で実行可能です、初回のみダンジョンコアに触れたタイミングで魔王のパワーを参照してDPの初期値が…え゛っ!!?」


説明の途中でダンジョンコアを覗いたタマが目を丸くし一瞬ハムスターにあるまじき巨眼になる。


「ちょ、ちょっと待って下さいハルト様っ!!」


タマがダンジョンコアを指差し興奮してる。


一体どうしたのさ。


「何が?」


「なっ、7億DPもあるじゃないですかっ!!!」


ビシッビシッとダンジョンコアに表示されたDPをつつくタマ。


俺に言われてもな。


平均的な数値が分からん。


「凄いのか?」


「凄いなんてもんじゃ無いですよっ!!いいですかっ、一般的な魔王のDP初期値は千DP前後なのですっ!現役の古参魔王ですら100万DPも持ってませんっ!ハルト様の7億DPなんてもう滅茶苦茶ですよっ!!」


唾を飛ばしながら凄い目力で叫ぶタマ。


怖いって。


「わかったから落ち着いて」


「これが落ち着いてられますかっ!!初期値で7億DPなんて前代未聞ですよっ!!本来魔王のパワーは低く皆ほぼ同じで従える配下のモンスターによって差がつくものなのですっ!」


タマの熱が下がらんな。


俺は早くダンジョンコアの守りをなんとかしたいんだが。


「偶然、偶然」


恐らく俺が前世の能力を引き継げているからだろうが説明するのがめんどくさい。


偶然という事で納得してくれ。


「偶然なわけが…はっ!そういえばっ」


タマの視線が俺によって破壊された石壁に移る。


やべ、バレた。


「ハルト様…ダンジョンはダンジョンコアの能力でリフォームすることでしか破壊不可能なのですよ?」


これは話がややこしくなりそうだな。


「へぇ、それは良かった、じゃあ早速モンスターを召喚しよっか」


話を逸らすべ。


「まだ話は終わってませんっ!」


ダメでした。


う~ん、もうタマの説明抜きで勝手にダンジョンコアを操作して召喚しちゃおうかな。


DP沢山あるみたいだから失敗しても勿体無いとは思わないだろうしさ。


「あの時ハルト様は片手で、それも一撃でダンジョンを破壊されましたっ、あ、あのっ、ハルト様は一体何者なのでしょうかっ?」


えーっと、まずはメニューから召喚を選択してっと。


ダンジョンコアの項目をタップする俺。


「ハルト様ぁー!無視するなんて酷いですぅーっ!!」


タマがハムスターの小さい手で俺の足をポカポカ叩いて来る。


当然だが全然痛くない、むしろマッサージに近い。


さてさて、どの召喚にしますかな。


ダンジョンコアの召喚をタップしたら背景に映し出されていたこの部屋の映像が消え、3つの選択肢が出て来た。


───────────────────


《合成召喚》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《DP召喚》※期間限定高ランク排出率UP!

  ̄ ̄ ̄

《召喚チケット》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

: DP 735.000,000  :

========================

《ホーム》

───────────────────


ふむ、タマが言ってた3つの召喚方法だな。


取り合えずDPが大量にあるみたいだし、なんかサービス期間っぽいから先にDP召喚をやろう。


DP召喚をタップする俺。


「あれっ、まだハルト様には他の召喚方法をご説明してないですがよろしいのでしょうかっ」


心配するなタマよ、ゲームはやりながら覚えるのが普通だぞ。


「大丈夫、大丈夫」


ダンジョンコアにDP召喚が表示され、背景には紫色の煙を吸い込み続ける黒い穴が映し出されていた。


─────────────────────────

※期間限定高ランク排出率UP!


各ランク排出率【G=76%、F=20%、E=3%、D=1%】


《1体DP召喚》100DP

  ̄ ̄ ̄ ̄

《10体DP召喚》1,000DP

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

: DP 735.000,000  :

===============================

《ホーム》《戻る》《召喚リスト》

─────────────────────────


なるほど、こりゃガチャゲーだな。


「ランクって?」


まあ、どうせゲームと同じで強さに比例するような意味合いだろうけど念の為に聞いておかないとな。


「ランクとはモンスターのグレードを指します、ランクはGからSSまであり一番高いランクがSSになります、基本的には高ランクである程強く入手難易度も高いです」


DP召喚で入手できるモンスターの最高ランクはD、ということはDP召喚はあまり重要じゃ無さそうだな。


「DP召喚って需要あるの?」


「大いにあります、高ランクを入手可能な合成召喚でモンスターを合成枠に使用するのですが、モンスターは1回しか合成出来ないので基本はDP召喚モンスターを使用するのです」


おいおい。


DP召喚で高ランクを出す運と合成召喚で高ランクを出す運が必要ってことだよな。


普通は初期DP千ぐらいって言ってなかったっけ、他の魔王は高ランクの強いモンスターを召喚する為に随分時間が掛かりそうだな。


「召喚チケットってのもあるんじゃ?」


「召喚チケットは報酬でのみ入手可能で滅多に入手できるものではございません、ですが、魔王誕生記念に1つだけ召喚チケットが配られているはずです」


ダンジョンコアを操作してDP召喚画面から戻り、召喚メニューから召喚チケットを選択する。


───────────────────

~入手チケットリスト~


《Eランク確定チケット》 ×1 100DP

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

: DP 735.000,000  :

========================

《ホーム》《戻る》《召喚リスト》

───────────────────


う~ん、Eランクかぁ。


でも確定で排出されるのはありがたいな。


まだ合成召喚の詳細が不明だが、ひとまずここまでの情報だけで新人魔王がやるべきモンスター召喚が大体分かった。


最初はDP召喚と1つだけある召喚チケットを使用するんだろう。


次に合成召喚って流れになるだろうし。


だが、俺はその前にどうしても確認しておかなくてはならない事がある。


俺は召喚リストをタップした。


───────────────────


~モンスター種類リスト~


《ビースト》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《アンデッド》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《デーモン》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《リザード》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《インセクト》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《ゴースト》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《オーガ》

  ̄ ̄ ̄

《ジャイアント》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《ゴーレム》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《エレメント》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《オーシャンズ》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《スピリット》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《トレント》

  ̄ ̄ ̄ ̄

《エイリアン》

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《ヘル》

  ̄ ̄


========================

《ホーム》《戻る》

───────────────────


種類だけでこんなにあるのか。


だが結果は予想がつくな。


俺は1つずつ種類項目をタップし、各種類に分類された無数の種族を暫く黙々と閲覧する。


「ふぅ…」


…よし、全部確認した。


確かに居なかった。


俺の推しがリストにない。


何故なんだ。


どうせなら好きなモンスターを召喚したいじゃないか。


何で無いんだよ。


前世と前々世の異世界でもそうだった、俺の推しがモンスターとして登場したことは一度も無かった。


こんなの間違ってる。


俺の中にフラストレーションが溜まるのを感じる。


「お疲れ様ですハルト様」


閲覧が終わるまでずっと黙って見守ってくれたタマ。


中々に偉いぞ。


「決めたよタマ」


「?」


タマはキョトンとした顔を俺に向ける。


まあ、タマには何のことか分からないだろう。


「俺は俺の推ししか召喚しない」


「??」


タマがもっと困った顔をする。


最初は安心してここを放置出来たら良いだけと思ってたが、モンスターリストを見て考えが変わった。


この世界に来て、初めての目標が出来た。


「俺はハンバーガーを生み出すことにした」


衝撃だったのか、タマは俺のドヤ顔をしっかりと二度見したのだった。


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