第181話 それぞれのこれから

 『教会』との因縁の戦いを終え、少年のそもそもの旅の目的だった『時計の真実』に辿り着いた彼らは、ジーフの街に帰ることにした。


「ソール、帰りは俺達カシオズ王国騎士団が護衛しよう」


「え、でも、良いんですか?」


 ソールの疑問に、騎士団長グランは口元を緩めながら、


「良いんだ。既に王の許可は取ってある。それに今回の騒動を解決に導いた君には、その権利がある」


 と答えた。


「ありがとうございます。……ところで、ヴァーノさんとウォルさんは?」


「……私達は、行かない」


「えっ、どうしてよ!?」


 ウォルの返答に、ルナは思わず疑問を口にした。


「元々、ジーフに向かった理由である時計の件は解決したしな。それに、『教会』の大司教があんな事をしでかしたんだ。『教会』内部はまだ混乱してる。となれば、体制を立て直す必要があるだろう」


 ヴァーノは若干言い訳じみた言い方で説明をする。


「それが、あんた達の役目って事?」


「……ま、そういう事だ。だからオレ達は同行しない。良かったじゃないか、厄介者がいなくて」


「……付いてこないのね」


 ヴァーノの憎まれ口が聞こえていないのか、ルナはしゅんと下を向いた。


「お、おい何だ、急にしおらしくなって。オマエらしくも無い」


「……」


 返す言葉も見つからないのか、ルナは沈黙してしまった。


(きっと、ルナの中ではもうヴァーノさんもウォルさんも、大切な存在なんだ。だから……)


 と、ソールはそんなルナを横目で見ながら思った。


「……まぁ、なんだ。オマエ達が持つ時計や『星のルーン』は、まだまだ強大な力を秘めている代物だ。だから、暫くは観察対象になる。つまり、だな……」


「これからまた、時々会いに行くって事」


 言葉を詰まらせるヴァーノの代わりに、ウォルが結論を出した。彼女には珍しく、その顔に微笑を浮かべながら。


「……!」


 その言葉に、ルナは一瞬喜びのあまり飛び跳ねそうになった。しかし、すぐに思い出したかのように、


「そう、それなら会ってあげても良いけど」


 と、強気な態度を示した。その様子に、


(まったく、本当に素直じゃないよな、ルナは)


 ソールや周りにいた者達はやれやれと思いながらも微笑んだ。


「そう言えば、コハルちゃんはどうなるの?」


 ルナはふと思い出した事を口にする。


「確か、その子はキォーツから連れてきたんだったな。それなら道中だし、一緒に連れて行くか」


「嫌」


 と、コハルはグランの提案を一蹴した。


「あの町に帰っても、私の居場所は無いの。それなら私は、あそこには戻らないわ。ソールと、ルナと、一緒にジーフの街に行ってみたい!」


「しかしだな、君」


 少女の言葉に、グランは頭を抱えた。


「私からもお願い、グランさん」


「僕からもお願いします。コハルちゃんを連れて行かせてください」


「……」


 頭を下げて頼み込むルナとソールの熱意に、グランは再び悩んだ。しかし、


「……分かった。オレから話を通しておこう」


 最終的に、コハルをジーフまで送る事を承諾した。


「ありがとうございます!」


「ありがとう、グランさん」


 少年少女は再び頭を下げて、礼を述べた。

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