第171話 星飾りの加護
「またまた素直じゃないね、あんたは」
「ケビンさん」
「よう、久し振りだなソール。こいつ、さっきまでお前の事心配ばかりしてたんだぜ。泣きべそ掻きながら心配してたってのにこいつときたら」
「おい待て。誰が泣いたって?オレが泣いたなんて事実など何処にも無いだろう」
「ほう、心配してたってのは否定しないのな」
「……チッ」
ニヤニヤするケビンに対し、ヴァーノは苛立ちを見せた。
「そう言えば、ルナの方は大丈夫なのか?」
ケビンが顎をくいっと動かす。
「あぁ、どうやら寝てるだけみたいです」
「そうかい、そりゃあ良かった」
(……そう言えばさっき)
そこまで話をして、少年にある疑問が浮かぶ。少年は寝ている少女を見ながら、顎に手を当てて考える。
(カールの魔導がルナにぶつかろうとしていたその時。ルナを包み込むようにして生まれたあの光。カールの『裁きの光』とは違うものみたいだった。あれは一体……?)
と、考えた時だった。彼の脚の上に頭を乗せ眠っていた少女が寝返りを打った。すると、カラン、と何かが少女の首から垂れたのだった。それは、星の形をした木製の首飾りだった。
「……ん、それは」
反応したのはウォルだった。
「ソール、それは?」
「あぁ、これは星飾りですね。ジーフの星祭りで時々売られている、お守りみたいなものです」
少年は説明じみた口調で言った。
「いや、これは……」
そう呟いたのはヴァーノだった。彼は目を細めながら、星飾りをじっと見つめる。
「これは……、間違いない。『星のルーン』だ」
「星の、ルーン?」
「あぁ」
聞き慣れない単語に疑問を発した少年に対し、ヴァーノは煙草を口から離しながら答える。
「『星のルーン』は、その紋様を描く事であらゆる物に星の加護を付するルーンだ。その性質から、古くから魔除けの
「それは……。あの日、ヴァーノさん達と出会ったその日に、星祭りの屋台で買ったんです」
そこで、グランがはっとした。
「そうか。先程のカールの一撃を防いだあの光。あれは、このルーンのものだったんだな」
それを聞いたヴァーノは、フッと口元を綻ばせた。
「それなら、オマエがコイツを守ったということなのだろうな」
「僕が、ルナを……?」
その言葉に、少年の心はどれだけ救われたのだろうか。しかし、確かに少年はその時口元を緩めながら静かに少女の頭をそっと撫でていたのであった。すると、
「ん……」
と、吐息混じりの声を漏らしながら、少女はゆっくりとその眼を開けた。
「あれ、私……?」
「良かった、気が付いたみたい」
コハルが嬉しそうな声を上げる。
「良かった……」
ソールも安堵したのか、その目に涙を湛えながら呟いた。
「ソール……?」
それに気付いたのか、ルナはソールの方へ首を向けた。
「……っ、ソール!」
寝起きでぼやけていた意識がはっきりし、少女は少年の姿を認識するや否や、少年に抱き着いた。
「良かった無事で。本当に良かった」
掠れるような声で言った少女ははっとした。そして、少年の身体を見回す。
「やっぱり傷だらけじゃない。こんなに無茶をして……」
「それはごめん。でも、そう言うルナだって無茶だったよ、あれは。ルナの方こそ大丈夫?」
「私?私は何とも。というか、何かあったの?」
ルナはそう言いながら、きょとんとした表情を見せた。
「覚えてないの?」
「あんまり」
「そっか……」
(本当に咄嗟に、僕を守ろうとしてくれたんだ)
ソールは一拍置くと、
「本当にありがとう、ルナ」
その瞳に涙を再び湛えながら、そう言ったのだった。
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