第153話 これからの行動
「それで、これからどうするつもりだ?」
ヴァーノが尋ねた。
「……取り敢えず、あのカール大司教をなんとかしたいです。一応、こっちの手には魔時計がある。それがどのくらい僕らに有利に働くかは分からないけれど……。」
「それはさっき聞いた。オレが訊きたいのは、『どうやってカールを止めるか』ということだ」
「どうやって……?」
そんな問いを投げかけられ、ソールは答えに悩んでしまった。
「まさか、具体的な策も何もなく動こうとしたんじゃあないだろうな?……感情的になるのは分かるが、気を付けるんだな。戦いに出る時には、飽くまでも心は熱く、それでいて思考は冷静に、だ」
「……はい」
ソールは、ヴァーノの言葉を飲み込んだ。
「それに、もしあの人と戦おうと考えているのなら、一人で戦おうだなんて考えない事だ。何せ、あの人の魔導は厄介だからな。……まぁいい」
ヴァーノは一拍おくと、
「さて、本題は、これからどうするか、だが……」
煙草に火を付け、口に咥えた。
「カールを止める……そうするには、奴の身柄を騎士団に渡すのが手っ取り早い」
「騎士団に……?どうして?」
ルナが質問する。
「騎士団は魔導士の拘束を生業としていると聞いているからだ。尤も、魔導士と言っても道を踏み外したごろつきのような連中が多いらしいがな。そんな奴らを騎士団が拘束し、カシオズ直轄の裁判所で審判を下す……。そうすることで、他の魔導士の悪行を牽制するという仕組みな訳だ」
「なるほど……つまり、その審判で悪者を裁いてるって訳ね」
「そう言う事だ。ただ、問題は……」
ヴァーノは煙草の煙を吐き出す。
「問題は、今この街に王国騎士団の団長をはじめとする騎士の大半が居ないという事だ」
「……それって、グランさん達が」
ソールが口を挟む。
「あぁ、彼らはまだ、この街に帰還していない。魔導士達の情報によると、消息不明のようだな」
「それってつまり、あのギルって魔導士との闘いで何かがあった、という事ですか?」
ソールが真剣な眼差しで尋ねる。
「恐らくな」
ヴァーノは再び、煙草の煙を吐き出した。
「心配か?」
その問い掛けにソールは、
「……いえ。きっと大丈夫です。あの人達は、そう簡単にやられるような人達じゃない。そう、信じていますから」
「そうか」
するとヴァーノはウォルの方へと目線をやり、
「ともかく、現状騎士団の連中がこの街に居ない以上、奴の拘束はオレ達がやるしかないか。……行けるか、ウォル?」
「……大丈夫。私はいつでも、覚悟は出来てるから」
「フッ」
ウォルの答えに、ヴァーノは微笑んだ。
「どうしたの、ヴァーノ?」
「いや、何でもない」
(全く、コイツらと一緒になってから頼もしくなりやがって)
ヴァーノはウォルの変化に感心しながらも、
「これを見てくれ」
そう言いながら、ヴァーノは懐から1枚の大きな紙を取り出す。それは、カシオズの簡易的な地図だった。
「ここがオレ達の居る地点。そして、ここがカールが居ると思われる大聖堂だ。今日教会の魔導士に確認をしたところ、奴は特別な事情が無い限り、今夜はここにいるはずだ。奴を打倒するのなら、オレ達の目的地はここになる」
「なるほど……。結構離れていますね」
「街を挟んだ向かい側にあるからな。ここからだと、歩いて二、三十分と言ったところか」
ヴァーノは壁掛け時計を見て、時刻を確認する。
「時間が掛かれば掛かる程、オレ達が動きにくくなるだけだ。それなら、動くのは早い方が良い。とは言っても、今は人目が付きやすすぎる」
「動くのは今夜、それがベスト。そう言う事ね」
「あぁ」
ウォルとヴァーノの話に、ソールは拳を固く握り、決意を露にする。
「詳しい話はまた、出発する前に話すとしようか。……オマエ達も色々あって疲れているだろう。一旦休むといい」
そう言って、ヴァーノは外へと出て行った。
(疲れ、か。そう言えば、宿屋から出てから緊張しっぱなしだったっけ)
ヴァーノの言葉の意図を酌んだソールは、言われた通りに休むことにした。
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